したり

したり。
これは運がいい。寝ぼけて起きたのが昼をゆうに過ぎて日暮れだから、売れ残りになろうが、それは余り物には福があると言えよう。なんにせよ、こうして目当ての物は手に入った。なんだかいい気分にもなる。たまたま売れなかっただけだろうが、いや予約済みの物を取りに行くよりも嬉しい。あるかないか、そんな所から賭けが始まり終いはこれこの通り、ありに賭けた私に賞品が渡った。ともかくこれで、安心して寝すごせるとゆうわけだ。



これはしたり。常連のお客さんを相手に話に花が咲いたらあっという間に日が暮れた。なにまだ日が昇って半刻と余裕を持ったが運の尽き。しかもお相手さんときたら、これから呑みに行く。ときた。
やあ、ままならぬ、これも日頃の悪態が成した単発だろう。そんなら今宵はこれにて終いと店を閉じ、月がまだデコを照らす頃には眠ってやろう。
酒屋と飲み屋は月が登れば登らせるほどに酒盛りの声が大きく、また繁盛の掛け声が響くもの。それでもこればっかりは仕方がない。たまには店に連なる飲兵衛達の体を労わってやるのも酒屋の仕事さ。
さあ、帰った帰った!ほら見な!お前達が余りに飲むもんだから、仕入れた酒も底をついちまったんだよ!そら、たまには手土産の一つでも買ってかみさんのご機嫌でもとりな!



向かいの酒屋の話なんだがな。なんでも仕入先がやけに変わったとこらしくて、いや、なにも妖が出るなんてわけじゃあない。なんてことねぇ小さな酒蔵の持ち主のとこさ。あ?なんだってそんなとこから買い取るのか?それよ。いやなに、これがなんとも奇縁なもんで、そん店にゃあ毎日同じ酒が12種類、それぞれ一升ずつ並ぶ。そんで9番の酒、なんてったか、たしか飲注って名だ。ああ。そいつはなんでもとんでもねぇ代物でな、向かいの店じゃ名物酒よ、一杯で両手いっぱいの金子が飛ぶ。そりゃそうさ、そんなもん毎日は飲めねぇ。だから月一の楽しみなわけだ。んで、その酒は別にその店だけってわけじゃなくってな、小売もしてんだ。そう!その通り!お前のゆうとおり、その通な奴がたまにだがな、買って行きやがる。そうすると向かいの店主は名物もなく手ぶらで帰り、俺たちゃ大さわぎってわけだ。その通が誰かも知らねぇし、酒蔵がどこかもわかりゃしないってな話よ。なんだってそんな話をするのかだって?ははは!こいつが落ちどころでな、今日がその「たまに」の日で、向かいの店にゃ飲注は無ぇときた!だから俺たちゃこんな所で安酒あおってごちってるわけよ!これはしたり!

したり

ずいぶんべらんめぇな口調が多くなりました。
したりは真逆な意味が二つある言葉だそうで、
やったぜ!のしたり!とやられた!のしたり。
最近だとヤバイがそれにあたるんですかね
酒の名前って刀と同じでセンス問われますよね
あれ飲み注ぐって呼んでたんですけど読めないかも?そんなわけで、お好きにお読みください。

したり

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-01-08

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