十月の供犠

 金木犀は黄色い血を地に散り流し
 銀杏は黄色い肉を刻ませて絶え間なく舞い降り
 
果てに鏡の向こうの激しい十月の魔にまみえる
澄んだ仮面は空近くで波立ち頂上の初雪を映して稜線で笑う湖面
水面の暴君の白い羽根
金色の嘴の攻撃、腕のような頸は振り下ろされ
追われぬめる苔と沈む枯葉の沼で溺れかける
水上はこんな騒ぎ

 水鏡の下のもう一つの十月

水中の無音の繁栄
十月の終わりとともに滅亡しあとかたもなくなる都
おとなえる者は居ない

賑やかだった魔の羽根はもがれ頸は折れ嘴は割れて化石と埋まり

 供犠のすべては終わる

十月の供犠

十月の供犠

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-01-01

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