ランチメイト

人の目をきにする、親にも気をつかう、恥ずかしいことは嫌だ。ひとりでいることはいけないことなのか?ひとりでいてはいけないのか?
思春期である小学生の気持ちを書きました。実際にこういう子が増えているのはなぜなのでしょうか。

ひとりはいけないことですか?

“ブー”

授業の終わりのブザーが鳴った。

さぁ、始まる。

塾に通う僕は、この時間が苦手だ。夕飯の時間。
ブザーと同時に次々に広げられる お弁当箱により、なんともいえない臭いが部屋中に充満する。



『気持ち悪い…。』


反射的なものだった。
お弁当の臭い=気持ち悪い、と感じてしまうのは いつからだろう。



この時間になると決まって僕はトイレに駆け込んだ。
そしてトイレの個室で食事を済ませる。

あっという間だ。
もちろんトイレに長居をしている方が気持ち悪くなりそうなのも分かっていた。
だから、僕はいつも お弁当箱の中身はほとんど噛まずに飲み込んでいた。



小学生は思春期でもあり、男女の目を気にし始める年頃でもある。
また、女子は女子で集まり、腕を組み、仲良しごっこが始まる。
男子は単純でもあったが、どこかやりにくいと感じているのは僕だけだったのだろうか。

友を、仲間を求めるのは男女共同じで、群れ意識というものが本当に面倒くさい。

お弁当を独りで食べていようものなら、早速ターゲットにされる。

色々な学校の子が集まっている塾だからなおさらだ。
その時だけの付き合いだから。
“あいつ、ひとりぼっちだ”
そう言われることは簡単だった。



あと少し、あと少しでこの胸が押しつぶされそうな時間が終わる。



授業が始まれば、また一人ひとりの時間に戻る。



この時間だけなんだ。
この、から揚げや、おにぎりの臭いがするこの時間さえ終われば…。

ひとりでいることが いけないことなのかと、大声で叫びたくなる。


僕は今、生きている。

この空間から逃げている、

でも 人生からは逃げていない。

一生懸命、立ち向かっているんだよ。僕なりに。

ランチメイト

“ランチメイト症候群”という言葉を聞いたことがありますか?
コミュニケーションの葛藤で、学校や職場で一緒に食事をする相手(ランチメイト)がいないことに一種の恐怖を覚えるというもの。
便所飯という言葉もニュースで取り上げられるほど。
しかし、私がおかしいと思うのは、この便所飯という実態そのものがメディア向けに作られた“嘘の現象”として思われていること。
そういう現象が起きているという事実がなぜ嘘と思われなければならないのでしょうか?
分かって欲しいのは、そういう風に葛藤をしている子供、大人は実際にいるということ。それを理解できない世の中がまたこうして個々の存在を無視してしまうのだと思います。
短いですが、この作品は小さな子供の心の叫びです。

ランチメイト

少年はまた思う。 “あぁ、またこの時間がやってきた…” それは塾でのお弁当の時間。 独りを感じるその時間が、とにかく嫌いだった。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-12-29

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