Crazy ラヴ☆ 36

ひとかけらの幸 36

アンディに賭けましょう!
私たち自身にも賭けましょう!自分達を信じて!今までやって来れたんですもの!

今の生活だって、貧乏を抜け出したくて遠く故郷を後にしてまで!ここへ来てみんな心一つにして乗り切って来たじゃありませんか。一人ひとりが助け合ってきたからよ!あなたもアンディも!
あの子も幼い体にむちうって愚痴ひとつも云わないで、どれだけ働いて来たか、どれだけ大変だったか、このアンディのおかげもあっての今の生活なのよ、仮に転んでまた貧乏になったとしても、私たちが居るわぁ。ねえ!この家を抵当に入れておカネを借りましょう・・・・・。
いつもにない毅然とした空気感がこの場に留まる。

う・・・そうだな、最大の資本は、資金じゃなく、人だ!人あっての資本!おれたちは生きてさえいれば何とでもなる。
これで何度目のツバとなっただろう。

借金だけは止めてえ!!
誰もがそう願うはず。
この空間感は重かった。

借りないとなると・・・・ん・・・・・・ここを売るってことか!? 儲ければまた家つくれるし!失敗したとしてもおれとおまえとアンディとでまた稼ぎまくればいいしね!

ちょっと思ったんだけど・・・もしスコットさんの提案を断ればアンディの立場にも悪影響が出るのでは?

そうだ、今のポジションを失うかもしれん?

さっそく幾つかの不動産屋さんに相談してみるわ。あなた、これでい??覚悟してる?

脅すなよ。じゃなくても緊張緊張なんだからさ。

パパ!ママ!ありがと!! ゼッタイ損をさせない!オレ知恵を絞りまくるから!
調査って仕事、いろいろ裏事情があって、その気になれば法すれすれにだって儲けることが出来るんだ! それにスコットさんって今まで見たこともないくらいやり手実力者!その人に賭ける意味ありだと思うんだあ。

頭を深く下げたアンディ。座する一同の視線が一点に集中。
暗い室内でも見えるものがあった。

1週間後、査定700ドルとした家を抵当に500ドルを借りることが出来た。

当初、売るつもりで相談した不動産屋さんが、アンディ一家の事情を聴くにつれ同情心か義侠心かそれとも、そこの社長は、いったん売ってしまうともう二度と同じ家が戻ることは少ないことから自らの会社の運転資金の一部を貸し出すことによって最悪返済が滞ったとしても利子さえ貰ってもらえれば、彼らが払ってさえしてれば家を手放すことだけは避けられる、との思惑、アドバイスをしたからでした。

天も味方した!悠久の神々か!目に見えない何かが動いた。
そうも思えてならなかった。

株の配当は順調に進んだ。
株利益は、当目的以外には使うことを極力避け、仕舞っておいた。
いや、仕舞うのではなく、いったんその株をプールしておいてタイミングよく売り時を計らって即売り払った。
そしてまた、仕舞っておいた金を足しは前よりも多くのを元本として同一株を購入した。
こう繰り返すこと2年、元手500ドルの大金は2800ドル余を超えるビッグ財産へと大変貌を遂げた。
麻雀、ニコニコ完全安牌(安ぱい)*ですね。
*テンパイ、あと一つ必要な牌がくればあがることであるが、している他者に和了(ロン)されないことが確実な牌としているが。

この時この大儲けを成した1855年アンディは支社内で実力者へと登頂!と自他とも認める二十歳になる。
一方のボス、これから三年後の1858年スコットはついにピッツバーグ鉄道会社の最高責任者にも登り詰める。

まさにご両人!ウインウインの二人三脚であった!
金も味方した。
云うまでもなく抵当に入れたあった家は無事にアンディ一家に戻った。

その折、不動産屋さんに借入金・利子を含め気前よく合計100ドルをもおまけプラスして与えた。

相も変わらない日々は続いていった。
調査作業、本社へ出向でのミーティング、株価操作、売っては倍買い戻し、などに明け暮れる日々。
忙殺される日々ではあった、疲れを感じることはなかった、エキサイティングな日々だった。充実した生活との実感があった。この充実感となっている理由にはもう一つあった。
故郷スコットランドに居る恋人ソフィーであった。

大西洋を隔てて交わすふたりの愛に隔たりはなかった、隔たりはあった、心変わりはしないだろうか、どのくらい好きで居てくれるだろうか、本当に待っててくれるだろうか。
封を切る、なかのラブレターを読む、傍に居るような温もりで胸は熱く燃えたぎった。
癒された。

燃え萌えではあった。どこか心落ち着くひとときであった。
落ち付く、心伴う、な喜びほど、幸せを深く実感できるものはない。

ラブレターの都度愛は深まった。
愛が百年続けばい~!


アンディ!はやく会いたい!・・・

仕事がひと段落したら必ず行くから!必ずビッグになって迎えにいきま~す♪

これが、生きるための空気となっていた。
が、しかし、今ノリノリな仕事から一時たりとも離れることはできなかった。これが何年もつづくこととなった。

実はこの二人の間には別な会話のやりとりもあった。
ソフィー! こっちに来てー! 渡米するおカネも何もかもおれが出すから、心配しないで、スグ来て欲しい! で、ここで結婚式もしちゃおー!

嬉し過ぎいーっ♪ でも親が外国へ娘一人行って暮らすのはダメと云うからアンディがこっちへ来て親を説得するしかないの・・・。

便せんに挟んであった花が、しおれていた、
綺麗な彩りがうかがえた、
口をそっと近づける、
新鮮な、生な、ソフィーに触れた。
ソフィーの女香りが入っていた。

が、結局アンディのラヴ提案が実現することはなかった。

直接、息を感じ、表情を感じ、肌を感じ、がなくても愛は深まるものだと知るアンディ。

信じ切っているアンディの胸の内は火照る一方にあった。
このほとばしる想いをぶつけたラブレターここにあり。
喜びいつもその中に輝きあり。


全力で 想いとまらない 留まることを知らない この想い届け

魂燃やし 愛しい恋しい 胸に秘めたこの想い

遠距離恋愛のままじゃ もう未来に進めない

微笑み揺れた 涙で濡れた 書いたけど送って無いラブレター

今度こそ 飛ばしたいこの想いー きみはとわの灯―

Oh my ソフィー Oh my 愛しのソフィー

AH Best My Beloved!


ぼくはきみを さらってもいいかい 未来ごと抱きしめて

言葉じゃ言えない ふみでも云えない 胸に秘めたこの想い

伝えたい 百年ぎゅっと 万年ちゅっと してもいいかい

もっとビッグになって 迎えに行くよ それまで待っていてくれ

AH Best My Beloved!


なぁー、恋は、かくもcrazy(クレージー)なんだよー、go crazy 気が狂うじゃね!なぁー、crazy for you、好きってゆ意味になるんだよー。
狂うほどのラヴ、いいじゃんか、狂わなきゃ一途な恋なんてムリムリ、赤の他人にずっとズットなんてさ。
メールじゃなくて良かった、一変で引くわ。警察通報ってことだって、ストカー!と、今生きなら光源氏だって。
数日おきに届く、数週間おきに届く、手紙で良かった。


アンディとそのボスのスコットらのあの時のWin-Win*のサプライズ・果実*・調査・分析は、その後もつづいていた。
*ウィンウィン、双方が利益を得られるようになる共通関係。ちな、真逆は?loselose損損バイバイ!
**元となるものから生じる収益。

2年ほど経った今アンディは、ボスとのミーティングを終え、直ぐ返すように社用でオハイオへ向かう列車内、ガッタンゴットンゆらゆら。

人気ヒーローに似た、なりきった、車内に、少しうぬぼれていないと云ったら嘘になるアンディ以外にもう一人いた。
人気ヒローといやー、シャーロックホームズもその一人。
887年発刊されたばかりのシャーロックホームズ*好んで読書してるのか仕切りに目を通す者が。
*小説家アーサー・コナン・ドイルの作品。ちなみに、オリジナル作品とされているがよく読むと、それより前1841年のエド・ガー・アラン・ポーの作品を実に綿密に踏襲してる作品ではないか。
真似だ。とまで断言する者も。・・・・ストリー構成や伏線の置き方などがそっくりは万民の認めるところ。どうしてワイドショーで取り上げないのかフシギ、番組も他者を真似てるしね。
日本にも居ました、あの超人気作家山崎豊子作品が盗作?真偽の程は専門家に任せるとして。

エドさんの長所を吸収し自らの栄養として身に付けその力を示したという点ではやはりアーサーさんも秀人さん、としよ。
当初は長編であったため人気は出なかったが後に短編にしたことで大ブレイクするようになる。

が、その人物に白髪をやや混ぜ顎をやや狭くすれば似ている初老の男性が、斜め前の席に座っていました。

すぐにセールスマンでも普通のサラリーマンでもない風体と感じ取れる。
その姿は、あっちこっちに傷のある革製のケースを足元に置き、難しそうな本を数冊傍らに置き、一冊を左手に置き、右手を膝の上に置き、その手で時折何か空に書き込んでいる。指が、今様タブレットに打つ指さばきのよう。

Crazy ラヴ☆ 36

Crazy ラヴ☆ 36

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-12-27

Copyrighted
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