やるぞー!☆星へ飛びー! 32

ひとかけらの幸 32

やるぞー!☆星へ飛びー! 32
電報配達員としての辞令であった。
やってやるぞ!
うれしかった。二度三度と飛び跳ねた。期待に応えてやるぞとの気概が飛び跳ねさせた。

家族皆の笑顔からなる見舞いが尚一層うれしかった。この家族のためにも「やるぞ!」の気概を一層燃えたぎらせた。
独りだけのためならここまでは燃えなかっただろう。愛する家族が居たからこそあの面接だって乗り越えられた。

いつか聞かされた言葉が、
自分一人で 石を持ち上げる気がなかったら 二人でも持ち上がらない。
この後に出てきたゲーテの言葉であったが・・・・・・・。

タン!タ!タ!ターン!っと大地を蹴り星に届けとばかりにジャンプする。
ジャンプだけではない落ち付き感も、この時、この夜、静寂の中に自然のささやきしか聞こえない満点の星降る夜ともなった。

星灯りのなか、笑顔がスポットライトを浴びてる。
夜は夜でこの地が気に入りだしていた。

アンディの家から新勤務地ピッツバーグ電報局まではさほど遠くは離れていなかった。この辺りの地は、自然豊かな環境が醸し出す景勝地に恵まれている一方、アメリカ北東部に位置し、しかも多様な地形をしてることから、一日の中でも天候は目まぐるしく変わり易い。
夏はかなり熱く、冬は平均気温マイナス7℃にまで下がる寒暖差の激しい、すなわち、二つ激に相反する気性環境にある地区となっている。冬季は北海道の寒度に似る。

アンディ一家の移住先は、それ以前はスコットランドでの貧窮した生活を脱するため借金をしてまでたどり着いたのが、この地、そこと良く似た地であった。
今としは、ただ、アンディ一家は目まぐるしく激変するこの地に妥協するしかなかったのである。馴染み、同化、していく方がより現実的な生き方と気付き始めていたからです。

一日中、バッグに入れた電報と共に跳ね回った。
走って走って、駆けずり回った。

笑顔で接してくれる電報配達先が多かったことから、その内の大半の人たちとの間で自然と話題は盛り上がり、気持ちに不自由することはなかった。
そのため、なかにはカフェやスイーツ付きサービスまでしてくれる配達先も少なくなったためか、疲れを感じることはなかった、結果、気持ちが報われる日々が次第と多くなっていった。

するといつの間にか、こちらから投げた会話がその配達先の人達からも反射し、転がした雪だるまのように膨らんで、愉快に更に大きくなって帰ってくるときも。
多くが好意を抱いていてくれていることに気付く。それが嬉してしょうがなかった。
自信は伝染する。そして自信の無さも相手に伝染する。
このフレーズ、かつて叔父から聞かされたものであったがこの主が誰だったかは忘れた・・・が、このフレーズがアンディの脳裏を今奔る。

配達先に、走った走った、!!連日。
これが仕事だったからだ。
雨の日も、靴に水が浸み込んでも、凍えそうな寒風が顔を突き刺すときも。
一刻も早く手渡すために、くじけなかった。
渡す先の喜ぶ顔を見たかった。

「ありがとぅ!」
「ごくろうさん」
「たいへんね、がんばってっ」
などと多く人の笑顔がアンディには強力なサプリメントとなる。

電報配達に行ったままドロップアウトを決め込んでしまう者さえいた。途中で油を売る者、無愛想に手渡す者、クロネコヤマトだって丁寧に手渡しているのに、配達物を手渡さずデスクに置いたままで済ませてしまう者、自分で配達せずに他のダチらに配達させたりする者、あげくは配達物を捨ててしまう者など、適当な属(やから)どもいた。当然、そいつらは早晩、首となっていった。

「ご苦労さん!アンディ!観て行けよ。お金要らないから」
配達先の劇場マネージャーの好意が飛ぶこともあった。
これは稀なことではなかった、行く先々で似たような好意が寄せられるようになった。

サンキュ~サァー♪じゃあ、仕事終わってからでもいいですか。

あー、いいとも。いつでも来たいときにおいで!タダで入れてあげるよー。

マネージャーはアンディの仕事に対する律義さを評価していた。明るい笑顔で電報を配る実直さとその誠実味あふれる仕事ぶりは、ここだけにとどまらず、徐々に広く周辺からも信頼を得るようになっていく。結果、多くの人達の好意を得るようになる。

このように広く多くの者からの評価は、チャンスへの確率性を高める、可能性を広げる。

この可能性はまさに確率的に現実味を帯びて来る、後々のビッグバーン的な成功、全米No.2の長者番付者、今のビルゲイツどころではない、へと繋がるキーストーンとなっていくのです。

ちなみに、経営手腕や出世テクだけでトップにまで登った財界人はいない。
どれだけ身近に優秀なブレイン*がいるか?いないか?です。要は、どれだけ本人にそれだけ引き付ける魅力があるかどうかです。
*明晰な頭脳、知力が有って知恵を絞れる人が指導者として自分以外に居てくれる状態。

松下幸之助、 “人はみな・・・親戚だ”、の名言がのこる、しかり本田宗一郎しかり徳川家康しかり、同じようなこと云う。
大隈重信いわく、一.怒るな、ニ.愚痴をこぼすな、三.過去を見るな、四.のぞみを将来に置け、五.自分じゃない人のために善をなせ、こう云わせしめた友が、ブレインが、身近にいたが故の出世だったに違いない。


ファンを失った織田信長しかり某天皇しかりナポレオンしかりローマ帝国しかり、らはどうなったか・・・死の・流刑の・牢獄の・崩壊の因果応報の憂目(うきめ=哀傷・悲歎)に遭ったことは衆知の事実。

何度も劇場に足を運ぶうち、芸術的価値の高い作品にも触れるようになった。そのうち、その中の一つにシェイクスピア劇がある、すっかり大ファンとなった。

ファンになったせいか、自分が劇的な活躍をするヒーローになったキブンがなることに味を占め、さらに読書に次から次へとのめり込んでいくようになる。
感動したストリーにすっかり英雄気分となりよく街を大股でよく闊歩したものです。

この界隈で毎週土曜の夜になると図書館をひらくジェームズ・アンダーソン大佐という人物が居た。彼は個人所有の400冊の蔵書を、当時働く少年が多かった彼らのためにと解放したのだった。

知識に飢えていた少年らの胸に、ロマンスを、未体験ゾーンを、旺盛な夢の数々を、アンディにも例外なく、与えていたにちがいない。
活字には、映画やテレビ等にはない、格別な効果がある。
推敲*するというメリットだ。
動画では推敲はできない、その場その場のシーンは相手のペースのまま行ってしまう。推敲は脳ミソ内のイメージが無限につづく。
*すいこう、何度も考えて作り直す。

電報配達に明け暮れていたアンディの誠実な仕事ぶりは、やがて周囲のアンディに対する評価という形で、次第に報われるようになる。
笑顔⇔報われる⇔ますますやる気アゲポヨになる、これは当然の理。
闊達・明朗・誠実・努力家という四大評価は、アンディを更なる大きな幸運へと導くこととなる。

やるぞー!☆星へ飛びー! 32

やるぞー!☆星へ飛びー! 32

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-12-25

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