*星空文庫

だめね、でも、いいよ 29

YYU 作

ひとかけらの幸 29

この時、いくら若いといっても,未だ幼顔残る13歳。
普通このローティーンなら、ゲームだ、ダチだ、遊びだ、テスト勉だ、メシ四食だ、が相場だろ。
が、1日12時間労働の週6日勤務であったため、連日、手も足もボロボロになるまで働き通し、ヘトヘトのノックダウン寸前状態にあった13歳。

工場内いたるところに充満する機械油から飛散し、そこらじゅうに付着した汚れによって薄黒く変色した両手は、いくら石鹸を二度や三度付けて洗っても落ちるものではなかった。

一心不乱!いいじゃないか♪
激しく前進!前進!!えぇじゃんか♪
一心不乱、どこが悪い?どこも乱れてなんかないだろ!
あっそっ、なら、専心一意、と云い換えられるじゃないか!

そう思い、そうしたのはアンディだけではなかった、父も同じだった、それ以上であった。
Faith will move mountains!*
もし、日本人であったなら、一念天に通ず、無二無三、と云った、かどうか。
とばかり、父も一心不乱に働いた。
*一念天に通ず。

そう信じて自らを鼓舞するしかなかった・・・先がどうなるか自信があるわけではなかった、先行き不安に苛(さい)なまれ、お呪(まじな)い、自己催眠術であった・・・・・自らをそう鼓舞する頼れる言葉が欲しかったのだ。

家族のそれぞれが新天地ではこんなはずではなかったと思いつつも不安と不満を仕事にぶつけ、没頭することで忘れようとしていた。
特に父は家族三人に楽な生活をさせてあげたいという責任感を一身に負い、この一念に燃え働きまくった。

そのなか、或る日父はふと或ることに気付く。
織物を、一つ一つ人間の手で作るんじゃなく、機械が自動的に作ってる。
これじゃ、自分の技術を活かせない。勝てない!勝つ方法はないものか!?
父も綿織物工場で一生懸命に働いてはいたが煮切らないものを心隅に感じ始めていた。

これでは十分に家族は食べていけない、もっと収入を増やさなければならない、と悶々と煮え切れない日々が続いているなか。
そこへふっと気付かされることに突き当たる。

リンネル(亜麻の繊維を原料とした織物)を、機械では出せない手作り感を売りにとした商品、これなら自らが織る意味合いある織り方を発案するに至った。やがって、織っては、行商に・帰宅・行商、の繰り返しで直接販売という営業方針へとシフトしたのだ。

母も働き始めていた。靴の包装で家計を助けた。アンディと同様、両手は、その腕の上半分までも、真黒になるまで働き詰めた。家事が終わってからも、家で内職をこなすようになった。
これを、すごい精神力とアンディは思った。

アンディ自身は帰ればグチャンと潰れ、まるでカエルのように、床にベッドに身を干すよう。干物の魚ちゃんの気持ちがわかる。

スコットランドに居る彼女ソフィーを想う時だけがただひとつの救いとなっていた。
青空だ、癒しだ、太陽だ、燃えだ、愛わ!
と恋模様一色に染まるときが唯一の癒し時となっていたアンディ。

この救いが、心を癒しで包んでくれたからこそ。立てた!進めた!明日への一歩が!

だが、リアな生活に一旦目をやると、癒しどころではなかった。
他にもっといい仕事はないものか、と悶々(苦悶する)、粛々(厳か静かに)とする日々は続いていた。
チャンスは黙ってても来ない。こっちから行く!

アンディは仕事オフな日曜は終日、歩き回るようになった。
自分、家族、だけのためだけじゃなかった。
早く、ソフィーにも出世した自分の姿を見せたかった、呼び寄せたかったのだ。会いたくて会いたくて!たまらなかった。

職探しに精を出すようになっていた。見つけては働き、働いては辞め、またまたの職探し、を繰り返していったのだ。
週6日のノックダウンしてしまうほどの過酷な労働から逃れたい一心からでもあった。
アンディは次から次へと職を転々とする間、くじけるようなことは少しもなかった。その余裕が無かったと云う方が正しい。

悔しい気持ちに堕ち込むこともあった。
遊びたい年頃であったから、遊びたくてもほとんど遊べずにいたことだった。
楽しいひと時もあった。

故郷のソフィーからの手紙がフレッシュな空気を吹き込んでくれていた。
この癒しの空気の中、彼女への手紙を書く瞬間が楽しかった。
フラストレーションのガス抜きとなった。

13歳でしかも世間をいまだよくは知らない幼子少年が、だれの助けも借りずに、独り異郷の地で生きてゆくにはそれなりの辛酸をなめることがあるのは致し方ないことだった。
致し方ないからといって、これから逃げるようなお手軽な快楽にだけは奔りたくない、と自らに宣言文を突き付けた。
誓えたのは、目的意識が強固だったからです。
強固さ故は、愛。
愛する者たちがいたからこその強さ。

確固たる目的を持つ者は強い。動機付正しく生きる者にはギブアップという文字はない。
これを世間では、モチベーションというが、アンディは理屈ではなく直感的にこれを体感しえていた、地でいった。

やがて、このモチベーション抱くアンディにいずれ天も味方するようになる。

そりゃーぁ!味方したくなるよーぉ!
ザワッと現れ、スィーっと消えるアミノミナ美神さーん、、、、、。

ねー、どうしていつも現れるては消えのワンパターンなの?・・・・・・

あーね、年頃の女の子だからだよ。恥ずかしがり屋の年頃だからね。

詳しいね・・・・・、翔大、話したことあるの?

無い。けど、一度云われたことがあるんだ、訳あって・・・・。

え?どういうこと?

夢に出てきて。・・・・・・その後いくら思い出そうとしても・・・。

モチベーションは運を切り拓く。
動機付の対象が恋人であろうと出世欲であろうと真っ直ぐ正道であるかぎり幸運は自ずから訪れる。
邪道は崩れる、泥棒が強盗がヤクザが出世したなんて話は聞いたことがない。別荘送りどころか13階段が待ってることも・・・・・・。死んだらカツカレーもチーズケーキ食べられないぞー!

ただし、ただ待っているだけで幸運が訪れることはない。
たゆまず拓き創る努力さえしてれば幸運の方から、もういいよ、おいで!おいで!と云うに決まってる。そんなふうに自分に催眠術をかけるアンディ。

ちなみに、MOTIVATIONのMOTIVEは目的・動機の意である。
ACTIONは行動・活動の意である。
この二つを伴わないやつが軽々にモチベーションって言葉を使ってほしくない!使っていいよ。

『だめね、でも、いいよ 29』

『だめね、でも、いいよ 29』 YYU 作

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-12-24
Copyrighted

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。