クリスマスのりんご

クリスマスのりんご

 その日はクリスマス。
 サンタクロースさんの おてつだいをする こびとのピックルは、まちの ひとたちに、プレゼントを くばっていました。ピックルは サンタクロースさんの ふくと おんなじ いろの、まっかなりんごを たくさん ふくろにいれて、ゆきのふる よるのまちを とびはねて まわりました。

 まどのところに すわって、おつきさまを みながら うたを うたっていた おねえさんは、しっている うたを ぜんぶ うたって しまったので、もう、うたう うたが ありません。つまんないわあと おもっていた おねえさんの めのまえに、ピックルが やってきました。かわいい おにんぎょうさんみたいな こびとをみて おねえさんは ねぼけているのかと おもって、めを ごしごし こすりました。
 おねえさんが もういちど、まどのそとを みると、もう こびとは いなくなっていて、かわりに まどのそとに ひとつ りんごが おいて ありました。おねえさんは まどをあけて まっかなりんごを てに もちました。おねえさんは おもしろい うたを おもいついて うれしく なりました。
   りんご、りんご、りんご、りんご、なんでそんなに まっかなの?
   りんご、りんご、りんご、りんご、なんでそんなに まあるいの?
   りんご、りんご、りんご、りんご、なんでそんなに おいしいの?
   りんご、りんご、りんご、りんご、こびとさんさん ありがとう。

 ピックルが とびはねて まちのなかを まわっていると、どこからか あかちゃんの なきごえが きこえてきました。ピックルは しんぱいになって、なきごえのする ほうに ちかよってみました。
 まどのそばの ベットで、ないている あかちゃんを だっこした おかあさんが、おとうさんと、おんなのこの あかちゃんの なまえを なにに しようか おはなしを していました。 かわいい なまえが いいわと おかあさんが いいます。おとうさんは そうだなあと かんがえます。なにか あかちゃんに にあう なまえは ないかなあ。ずっと ないている あかちゃんの あたまを、おとうさんは なでて いました。でも、あかちゃんは なきやみません。
 そのとき、へやの すみの えんとつから、いっこ、りんごが ころがって きました。あかちゃんは それをみて、なきやんで にこにこ わらいました。にこにこ わらった あかちゃんの ほっぺは まるくて あかくて りんごみたいです。おかあさんと おとうさんは いいました。そうだ、りんごちゃんが いいね。きまりです、あかちゃんの なまえは りんごちゃんに なりました。きっと りんごのきのように おおきく めぐみふかいひとに なるでしょう。

 ひとりの おばあちゃんが いすに すわって、まどから そとを ながめていました。おばあちゃんは むかし、こびとを みたことが あるのです。けれど、だれも おばあちゃんが こびとを みたのを しんじて くれません。おばあちゃんは かなしくて、もういちど こびとが みたいと おもって かみさまに おいのりを していました。
 まどのそとで おばあちゃんの おいのりの ことばを きいていた ピックルは、まどを コンコンと たたきました。おばあちゃんは おどろいて まどを あけました。ピックルは ごあいさつをして、おばあちゃんをさそって、だんろのまえで いっしょに ダンスを おどりました。
 クリスマスなのに ひとりぼっちだった おばあちゃんは、たのしい おもいでが できて、うれしくて なみだをながして ありがとね と言いました。
 ピックルは クリスマスツリーのかざりに、りんごをつけて いきました。

 ゆきの つもった よるの まちに、おいしそうな パンの においが ただよって いました。ピックルは はなを くんくんならして、においのする いえの だいどころの まどを のぞきました。
 エプロンをかけた おにいさんが なべのまえで、かんがえごとを していました。おにいさんの よこには、ジャムの はっいた びんが いくつも ならんで いました。 いちごのジャム。レモンのジャム。バナナのジャム。さくらんぼのジャム。
 おにいさんは いいました。「こんどは なにの ジャムを つくって たべようかな? おいしいジャムが いいなあ」おにいさんは、なやみます。
 ピックルは、まどのそとに かくれて、おにいさんに いいました。「りんごのジャムは おいしいよ」そうして りんごを、あけた まどから なげいれました。
 おっとっと。おにいさんは、りんごを うけとりました。
 ジャムは おなべの なかに ちいさく きった くだものと おさとうと おみずを いれて、くつくつ にこむと かんせいです。きっと おいしいジャムに なるでしょう。
 おにいさんは まどのそとに いいました。「だれか しらないけれど ありがとう。りんごジャムが できたら ごちそうするよ!」

 まちの すみっこ。おおきな おやしきの まどの あたたかい ひかりの そと、さむくて ぶるぶる ふるえている いぬが いました。そのいぬは なんにちも ごはんを たべていなくて、おなかが ペコペコぐーぐー なっていました。
 ピックルは かわいそうになって、いぬの はなを なでて あげました。そして、りんごを いぬの まえに おいて あげました。いぬは りんごの まわりを とびはねて、その あまいにおいを かぎました。ちょうど たべごろの りんごです。とっても とっても おいしそうです。いぬは ピックルの かおを ぺろぺろ なめると、りんごを くわえて、はしって いきました。そのいぬには おなかをすかしている ねこの ともだちが いるのです。おなかが すいているときは、たべものが おいしくなりますが、みんなで わけて たべると、もっともっともっと おいしく なるのです。そのいぬは あたまが よかったので、ちゃんとそれを しっていました。いぬは しっぽを ぱたぱたふって、ゆきの うえに いくつも あしあとを つくりながら、いそいで はしっていきました。

 ピックルは りんごを くばりおわって、いえに かえりました。
 すると ドアのまえに、おてつだいした ピックルのために サンタクロースさんからの りんごパイの プレゼントが とどいていました。
 りんごパイは ピックルの だいこうぶつです。
 ピックルは じぶんも プレゼントが もらえたので、りんごパイの まえで うれしくて ばんざいを しました。


 りんごは おひさまの こどもです。どんなに さむい よるでも、りんごの あまいかおりは、つめたくなったこころを ぽかぽかと あたためて くれるのです。

クリスマスのりんご

クリスマスのりんご

クリスマスの日、こびとのピックルは、サンタクロースさんのおてつだいをします。 ピックルは、まちの ひとたちに、プレゼントを くばっていました。 ピックルは サンタクロースさんの ふくと おんなじ いろの、まっかなりんごを たくさん ふくろにいれて、ゆきのふる よるのまちを とびはねて まわりました。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 幼児向け
更新日
登録日
2017-12-23

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