その箱庭は青い

行ったわけでもない海岸で
矢鱈と遠くへ歩きたがるあなたを思い浮かべる

幼い子どものように目を光らせ
琴線に引っかかったものを指差しては
歯を見せて笑い出すのだ

水面に乱反射してぶちまけられた

淡い光には春の匂いが混じる

足元に流れ来る波は透き通っているのに

どうして向こうでは青いのだろうね
などと、他愛もない話をしながら
何の色味もなかった
何のメッセージも意味も持たなかった表層の世界が
あなたに引き寄せられて輝き始める

途端に顔を向け始める

幕が上がる

うつくしい青に呑まれそうな中で

ぽつんとあなたが手を振る

目を細めながら確かに

いとおしいと思った

(2017/02/16)

その箱庭は青い

その箱庭は青い

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-12-15

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