PLAYERS HI

世界はAIに支配され破滅していた。
人類が唯一、生き残る方法はバトルフィールドで報酬をもらうこと。
しかし、それは人間同士の殺し合いでもある。

闘いの先にある未来は!?

バトル漬けの日々をあなたに

プロローグ


剥き出しの神経が痛みを伝う。
地面にポタポタと溜まる赤色。
そこに落ちている自の左手が不快にも現実との境界を実感させていた。

「なぁアリス。君が痛みを感じないって言ってたこの世界‥‥。何もかもがリアルすぎるんだよ」

夕暮れ時の廃墟都市。
アキラは一人生きながらえていた。
黒髪の隙間から見える瞳がギュイン。と音を鳴らすと黒眼に沿いながら白い光が発光し始める。

目の前に映し出された文字。
ミカ死。
タクヤ死。
ヒロ死。
GPSが辺りに転がる骸を位置づけていく。
すでに50人以上が息を途絶えている。

バトルフィールドが死を引き寄せあっている。無秩序に生まれた憎しみがこんなにも心地が良いのかと思うほどに。全ての人類が終焉に向かっている。

高層ビル群に近づいた。
その上空には千余の無人機(ドローン)がチカチカとライトを点滅させ、厳戒態勢に入っているのが分かる。
その中心には、鉄の羽根を持つ女の子。
アリスが浮遊している。

「αモード」
アキラの瞳が声に反応して赤く光る。銀色のソードを手のひらに出現させると。
眼光するどく剣先をアリスに突きつけた。

「アリス。だから。今すぐ君を殺させてくれ」



『PLAYERS HI』

アキラ対人間


人類がAIシステムに支配され100年。都市は城壁で隔離され。食料、資源の供給は『異空間バトルフィールド』での報酬のみとされていた。
太陽を失った地球は凍りつき、人は機械の塔『ウィラ』に集約される。その数わずか5千人。この地で生存するために若者は『キャスパー』に乗り、バトルフィールドで戦うことが使命だった。

✳︎✳︎✳︎

仮想空間バトルフィールド。
DEAD LINE。

パチ
パチ
パチ

夜。至る所で炎が空を揺かしている。
大気に浮かぶ灯火は現れては消え、まるで現実と思わせる廃墟都市を形作っている。
空間には死臭、熱風、痛みが人の五感を削ぎ、殺らなければ殺られるという記憶を脳に強く埋めつけていく。

「うぇぇぇ。これがバトル酔いなのか‥‥」
黒髪にするどい目つき。168センチほどの身長に黒色の襟詰めの制服を着ているアキラは
弱々しく。視界が回り頭痛が止まらない。つまり生命異常状態にあった。
「はぁ。はぁ。あと一時間。時間がない‥‥」

最悪な16歳の誕生日だった。
夢にまで見たバトルフィールド生活は予想以上に困難で、もっとバキッ!とかキィーン!とか格好良くできると思っていたのに、
実際の戦場では剣は重く。轟音が耳を痛める。すくんだ自分は敵に狙われ、仲間が身代わりとなり死んでしまった。
それを見て逃げることしか出来なかったのだ。思い出すと情けなくて涙が溢れてくる。
「何やってんだろ俺は。こんなんじゃダメだ。絶対に現世に帰ってやる!」
その声が夜の大気に残響していった。

「アキラ危ない!」
聞き慣れた声がしてくる。
振り向くと、青髪をなびかせ必至の形相で走ってくるトモがいた。
「トモ。良かった‥‥」
「いいから!上だ!」
アキラは見上げると、思わずゾッとした。
「嘘でしょ!?」
眼光を見開きゴクリと喉を鳴らす。
その上空には圧倒的なまでの数の矢が放たれているのだ。

「走れ!」
トモはアキラの腕を引っ張り上げる。
ギリギリのタイミングで二人の背中をかすめる30本の矢。それ見て、さらに強引に両足の回転を上げる。

「危なかった!うそだろぉぉ!!!」
「次も来てるぞ!」
顔を左右に振りながら嘆くアキラ。
休む間も無く続く攻撃。
「水の紋章のやつらだ!おい!あそこだ!」
トモが目の前にある地下鉄の入り口を指差した。
わかった!アキラは走りながら頷く。

「届け!」
突然、トモの声が風を切って聞こえてきた。
それと同時に視界がフワリと、天と地を回る。
0.5秒後、ドンッと背中に激痛が走った。
「いってえ!どうなってんだよ!」
見渡すと地下鉄の入り口で一人、倒れこんでいることにアキラは気がついた。
どうして俺だけここに居る‥‥まさかトモが投げ飛ばし‥‥!?

「あの馬鹿!」その叫び声が出ず。わけの分からない悲鳴だけが迸る。
「うぅぅぁぁあ!」
立ち上がろうとした足がもつれ、顔面から地面に落ちる。それでも頬を擦り付けながら無理やり外に出る。

「トモ!」
10メートル先の路上。
そこでは親友が空に向かって剣を薙ぎ払っている。次々と矢を打ち落とす姿に思わず見惚れてしまう。
何て早い剣さばきなんだ。

しかし。動いていたトモの手がゆっくりと、止まってしまう。よく見ると息は切れ、唇からは血が滲んでいる。
すでに満身創痍なのか!?
「ちっ。はぁ。はぁ。はぁ。‥‥まだ無数にありやがる‥‥くそ、潮時だな」
それを聞いて、アキラはしかめ面になった。瞼があつくなり唇が震える。
「だから子供って言われんだよ」
と。息を吐いたトモが剣を肩にひっさげ笑ってう。爽やかな。スッキリとした顔つき。

「アキラ!生きろ!」

そう叫んだ瞬間。
ドシュ!と。
人肉に突き刺さる矢先の音がする。

「トモーーーー!!!!!」
「ぐっ!ア、アキラ‥‥」
背中に刺さった矢。
トモは血を吐きながら地面に膝を落としていく。
さらに紫色のスカーフを巻いた人間がナイフを取り出し近づいてきている。片目にはスコープがつけられ、スナイパーだと一目で分かる。アキラは知っている。こいつらは仲間を殺した水の紋章部隊だ。

アキラは慌てて走った。

死なないでくれ。
まだ逝かないでくれ!

ピピピッ。
『alice‥‥log in 』
仲間がこの世界にログインしたアラート。

今は「そんなことどうでもいい」とにかく助けなきゃ!敵は今にもトモに向かってナイフを振り下ろそうとしている。

「やめろ!」
走るアキラ。

パチリ。
パチリ。

視界に、二つ。
灯火が通り過ぎていった。

トモの体と重なる火の粉は強く発光し、すぐに暗くなった。

光が消える。

同時にトモの体が地面に倒れていった。

PLAYERS HI

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バトル漬けの日々をあなたに。 まずは一読を!

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-12-14

Copyrighted
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Copyrighted
  1. バトル漬けの日々をあなたに
  2. アキラ対人間