_無題

落書き程度

寒い日の話【黄水】


「お疲れ様でした~っ」
「お疲れーっす」

撮影を終えて、俺と光黄くんは楽屋を出た。
思えば、新体制になってから、後輩たちがみんな帰るのを見送ってから、一番最後に楽屋を出るのが当たり前になっとるなあ…

思えば、虎次くんと浦正くんも、俺らのこと必ず見送ってたなあ…こうやって、俺と光黄くんは、二人が卒業してからも、
いろんな優しさに触れて、あったかい気持ちになることがほんまに多い。

俺たちは、ちゃんとあの二人のように出来とるんかな?
カッコいい兄貴には程遠いけど、優しい兄貴でいたいって、ずっと思っとる。

光黄くんとなら、もっとあったかくて優しいグループにできるって、俺は思う。

「今日も寒いね~っ」
はあ、と白い息を吐き出して、光黄くんが身を震わせる。
「ほんま寒いなあ…今日は鍋でもしよか?」
「お鍋いいね~、何鍋?」
「家にあるもんだけで作るんなら水炊きやな~」
「最高!おなかすいた、早く帰りたい」

夕飯のメニューが決まると光黄くんは目じりを下げて、嬉しそうに俺を見た。
…なんや違和感あるなあとは思ったけど、

「光黄くん、マフラーは?!」

ほんまに寒がりな光黄くんは、マフラーを手放さない。
今日は、…マフラーしてへんのや…どうりでなんか寒そうやと思った…

「あ~、今日忘れてきちゃって…」
「そうなん?風邪引くで…」

いつもほんまに寒いけど、今日は特別寒い気がする。
ぶるぶると震える光黄くん。雪でも降り出しそうな天気。
家までは後1時間近くあるっちゅーのに…

「光黄くん、ほら」
「え、わ、」

光黄くんの華奢な肩を引き寄せて、ぼふ、と頭から俺の使っていたスヌードをかぶせる。
「え、なに、見えない…」
ぐりぐりと頭を押し込んで、光黄くんの顔が出る。
「…これ健ちゃんの」
「ん、俺は平気やから、光黄くん使って」

ぽん、と頭を撫でて、手を取って、歩き出す。

「…、」

ぼそ、と光黄くんが何か言う。

「なに?聞こえんかった」

立ち止まり、耳を澄ますと、

「いつも、手つないだり、キスするの、死ぬほど恥ずかしがってるのに、こういう事サラッと出来ちゃうの、ほんとずるい」

照れたようにスヌードに顔を埋めて、ぼそぼそと喋る光黄くん。
そんなん、

「光黄くんが寒がってんの、見てられんし。風に吹かれてひゅーっとどっか行ってしまいそうやからな!」

ケラケラと笑うと、光黄くんは、もー!と俺の肩を軽くたたく。
イテテテ、とふざけた声を出して、俺はまた歩き出す。

「ねえ健ちゃん」
「なにー?」


今度は止まらずに話を続ける。

「あのね、」

手を繋いで、ずっとずっと、二人で歩いて行きたいなあって、毎日思う。

「俺たちも、あの二人みたいになろうね」

「…当たり前や。それと、みたいに、やない、超えて行くんや。」

俺がちょっと気合を入れて言うと、光黄くんが後ろでふ、と笑って、

「うん」
と笑う。

心臓のとこがあったかくなって、じんわりする。
俺はこれからもずっと、ここで、この場所で、メンバーも、ファンの皆も、

光黄くんも

みんなまとめて幸せにするって、雪の降る空に誓った。



先輩たちの大きな背中も全部超えて、いつかきっと、今まで見てきたどの景色よりも素晴らしい景色を見せてくれるって思わせてくれる二人だなって思って、書き始めたら収集つかなかった…。

_無題

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-12-12

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