たがう火先

冬遠 ノバ 作

わたしは燃えずに残る


わたしの視線で あなたを焼き尽くす

わたしを見下ろす透き通った青い目も
あなたの大事な人の涙を拭った長く繊細な指先も
わたしとあなたの大事な人を呼ぶ低い声も

あなたのありとあらゆるすべてを焼き尽くして 灰にしたい

心臓から燃えあがった真っ赤な火が あなたの全てを包んでいく
頭からつま先に至るまで 髪の毛一筋残すつもりはない

あなたはなんでもないように笑っている 革張りのソファに座りながら
あなたの大事な人に向けて笑っている 青い目が愛を灯している

わたしの視線に宿る 邪悪な熱とは似ても似つかない
抱擁をするときのような熱が あなたの目を燃やし あなたの大事な人を包み込んでいる

あなたの大事な人は あなたの炎に大切に包まれて 当たり前のように笑っている

燃えてしまえ
あなたの炎に包まれた人すべて わたしの目の前から
燃えてしまえ

いくら視線で焼き尽くそうとしても あなたの大事な人を炎に包みこむことは出来ない

あなたの炎があるから
あなたの炎は わたしのものよりも ずっと強い熱をもっている

燃えてしまえ
わたしの熱に気が付かないあなたも わたしの目の前で
燃えてしまえ

ソファにはあなたの形をした焦げ跡 あなたの大事な人は 平気そうに笑っている

あなたの炎がなくても 凍えることなどないという顔で

灰となったあなたを 大事にすくう
高温の灰はわたしの手を焦がす 皮膚は醜く焼け爛れていく

あなたの大事な人はソファから立ちあがる あなたの灰を持ったわたしの手をとる 
あなたと違う色の目がわたしを見る わたしの足元から火があがる

あなたのために整えた 服に 髪に 肌に 真っ赤な炎が広がっていく

わたしを焼き尽くさんとばかりに
灰になってしまえとばかりに

炎はあたたかった 全てを抱きしめてあたためようとするような 優しい熱だった 

わたしは あなたが大事にしていた人の炎に包まれる

抱擁をするときのような熱をもった炎 あなたがあなたの大事な人を包んでいた炎
あなたが望む炎が わたしを焼き尽くそうとしていた

手の中の灰の熱が わたしの骨まで届く

邪悪な熱でぼろぼろになった体に 容赦なく燃え広がる

白い骨が端から黒く焦げる
わたしを燃やそうとあなたの熱は 骨を焼き心臓を焼こうともだえる

燃えてしまえと 目の前から燃えてしまえと

わたしは燃えずに残る

あなたに見下ろされた目も
あなたの大事な人が包みこんだ指先も
あなたとあなたの大事な人を呼ぶ声も

わたしを包む炎が あなたの炎をさまたげているから

あなたに焼き尽くされてしまいたいのに

あなたの熱が あなたの大事な人に向けるものと同じならばよかったのに

骨まで届いて思い知る 
あなたがわたしに向ける熱は わたしと同じものだった

たがう火先

たがう火先

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-12-10

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