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坂道を上った先に牡丹が落ちていた
拾い上げると花弁を誰かに踏まれたようで黒く滲んでる
恋人が愛するものを愛撫するように
私の指と牡丹は体温を共有した

苦痛と愛を抱き合わせ
一刻ごとに滅ぶ身体へ憐憫の接吻を
誰にも聞こえない言葉で語らう

北風は絶えず我々の熱を奪った
すれ違う人びともまた蜜を凍結させる

牡丹を川へ浮かべた
流れていく様はまるで親に売られた生娘
波に体を犯される椿に背を向けて自宅へ帰る

その日の晩、私は妻を抱いた

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  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-12-09

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