*星空文庫

ある魔術師と少女の変身

星空トクマ 作

昨晩の事、
ルラは、好きな男子の気を引こうと魔術を使った。
鶏の血をぬき、こうもりの死骸を使い、とかげのしっぽを鍋にいれて、
レシピ通りの惚れ薬をつかった。
——好きな男子にそれを飲ませた——
給食のとき、自分の水筒のお茶をのませてやった。
しかし、その日少なくともその日は、効き目がなかった、

彼女は、家に帰る、宿題を終わらす、何も変わらない日常。
「ああ、退屈だな、やっぱりだめだった、そもそも、今日のうちに尋ねてくるわけはないわよね。」
似合わないひとりごと、
ルラはショートカットの美少女で、それなりに人気があるのに内気な少女。
カーテンをしめて、シャワーをあび、はをみがいて、寝室のベットへ

「スヤスヤ」

だが残念、その日のうちに魔術師が、それも悪い魔術師が、ルラの寝込みのところを訪ねてきて、攻め立てた。
「明日はなにか変化があるかな」

深夜
ドンドンドン!!自室の窓をたたくおと、
カーテンをあける、二階なのに、宙にういたようなポーズで、だれかが叫んでいる。
「きゃっ!!」
超音波のようなかなきり声、しかし両親にはとどかなかったらしい。

——おい、人間風情が魔術をつかったろう!!代償をよこせ!!——

確かに魔術はつかった、けど、本当に魔女か魔術師か、そういう人が訪ねてくるとは、
ほんの出来心だったのに。

「魔術を使った人間の魂は“変身の術”によって、魔術師の魂の複製を埋め込まれる事になっている。
 それに君は、代償を払っていない、魔術に代償はつきものだ、人を呪わば穴二つともいう。」

魔術には代償がつきもの、ルラは、レシピから代償の分を完全に無視して材料にくわえなかった。
それは、20cmほどの髪のたば、
ルラは、そんなにざっくり髪をきるのは嫌だった。
得意気に、悪い魔術師はルラに語る。



「そんなの、魔導書にはかかれていなかったわ!!」
魔導書は、この家の蔵にしまってあったもの、偶然友達と遊んでいるときに発見して、惚れ薬をためしてみた。
だからといって、こんな、本当に魔術が効果を発揮したり、本当に魔術師を出会う事などかんがえていなかった。
彼女にとっては、うさんくさい雑誌の占いコーナーを利用したようなもの、
ものはためし、くらいの考えからだった。

相手は大人だ、小学生のルラとの体格差もある、美少女ルラは、ひるんだ、
その瞬間、相手は魔術をつかったらしかった。

「いいから、私の言う事をきけ!!」
ルラの袖をつかむ、ルラはこばんで、力をいれた、しかしーー振り払えない

「いや!!!」

「———!!!!!」
聞きなれない言葉の羅列、
その瞬間、自分の身長が一気に縮むような錯覚を覚えた、
そして、自分の体は、自分の実感からはなれて、まるで、見下ろすように、自分の“意識”だけがすぼんでいった。

彼女の魂は、採取され、フラスコの中に閉じ込められた。
魔術師界において、人間の魔術の使用は禁じられている、
だからお前がこの仕打ちをうけるのは当然の事だ。
魔術という禁忌を人間が犯したら、
その代償は、魂の形を書き換えられ、魔術師の性格、記憶などとすり替えられ、
元の魂は、魔術師の奴隷——草木や動植物のような、たとえばカエルとか——そういうものになる。
延々と、本当か嘘かわからない話を聞かされて、
彼女の住処へと連れられて行く。

ついたぞ、それは西の村らしかった、看板に見覚えがある、
ライト町、たしかに自宅からは遠く離れている、
風を切る音がした、きっと魔女はそらをとんだのだ。

肉体はどうなるのか?ルラは思った、
応えるように魔女はいった。
「肉体は、私の複製をいれて、元気に過ごすのさ。」
キイィィ。
フラスコの中の魂は、ルラの自宅の、キッチンのそばに放置された、
ルラはそのままどこかへでかけていった。
見渡すと怪しい実験道具や、何か薬につけこまれている、得たいのしれない動物の一部などが
ガラス製の容器のなかで生きているみたいに踊っている。

いくつも、いくつも、


複製された魂。
はルラだったものの肉体の中へ、
その日から男勝りの
「だぜ」
口調とか、食べ物、衣服の好みがかわった、
衣服はボーイッシュなものが好きになり、食べ物はとにかくなんでも固いものを好んだ、
喧嘩っ早くなり、女版番長のようになった。

しかし数か月後、

ルラの魂を奪った魔術師は——マリ——
そう名乗ったが、
次の“人間の魔術使い”をもとめて旅立った。
「長い旅になる」
そういって、まだルラを動植物の体にうつすことはしなかった。
ルラはこの数か月の間マリと話しをして、なぜだか気があい、したしくなった。
それが理由なのかもしれない

しかしカーテンのとじられた森の奥の魔女の部屋は、一人でいるには孤独で心ぼそい
ましてや自由の聞くからだもなく、
まだ、少女の彼女には、学校や友達の事、家族の事が気がかりだった。

マリの研究室——ルナのものだった、ルラの記憶と性格、好き嫌いを記憶した魂が試験管の中に入っている。——
その他に、会話ができるものはいない、たまに訪ねてくる、
オオカミの体をもつ、人間のような動作をする家来のようなものをのぞいては。

しかし、ある日、魔術師教会を名乗るものがやってきて、
この話
——人間の魂を刈り取る——ことは、魔術師会では容認されている事ではないらしい。
そういう事がわかった。

彼等は白いスーツ姿で、マリのいないマリの家にやってきて、
詳しく話をきかせてくれ、
そして口々にいった。

「マリは、心に闇をかかえている、しかし、どんな形であれ人間に危害をくわえたら、ただでは済まないだろう……。」

(そこから出してやる変わりに、君のすきな男子の記憶を、君の魂から消す事にする。)
教会の使者たちはそうもちかけた、
ルラは答えた。
——仕方ありません、了承します——
ルラは、孤独に耐えかねていた。

マリは、たまにいまでも手紙をくれる。
どうやら、社会奉仕活動だけで許されるらしい、
人間側の配慮があってのことだという、マリの精神状態は、長すぎる寿命で荒れていたらしい、
いまでは色々な人間と仲良くなっているという事だ。、
ルラは思い出す、——孤独な森の生活——
あそこにいれば、人間でもきっとおかしくなる。

ルラの家は赤い家、中学校には近い、ローラースケートで通い、今日も皆に挨拶をする
教師、掃除のおじさん、生徒、
ルラは、また恋心を持った。
——それはあの男子に——
あのときとは別の理由で恋心を覚えた。

かつては、助けられたから恋心をおぼえた、
体育の授業で転んだ時てをさしのべられた、
休み時間のこと、その時はもう、何とも思っていなかったあの男子——リル——
を廊下でみかけた、彼は、はしって、ころんで擦りむいた瞬間だった。
今度は逆にたすけた、擦りむいたひざを洗い、ばんそうこうをはってやった。
しかし、それは、彼女、彼らにとっては
丁度いいバランスだったかもしれない。
実は相思相愛で、どちらかが過剰な愛情を持っていた。

まさしくそれは、ルラのほうだった。

『ある魔術師と少女の変身』

『ある魔術師と少女の変身』 星空トクマ 作

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-12-07
Copyrighted

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