恋は、薬だ。
しかも即効性のあるやつ、イヴでいうイヴクイックデラックス。

1時間前に、会社を死んだ顔ででた。会社辞めたいです、はやく辞めたいですを上司に何度言おうとしたかわからないくらい、胃の中に硬いものをしまい込んでいた。結局言えず、得意先からの電話にメンタルをへし折られ、上司の嫌味を聞き流し、掻きむしった髪の毛はまるでヤマンバのように、とめどない溜息はデスクの上で滞留して、終わってない仕事をそのままにして解き放った「お先に失礼します」。

さっきまでわたしは死んでた。
即死ではない。少しずついじめられていじめられて力尽きたみたいに。

死んでた。

死んでたはずで、帰りのカフェで会社を辞める理由をノートに書き出しては会社を辞める決心をするはずだったのになあ。

なぜかあなたに会った瞬間、
今日の痛みも傷もため息も胃の中の塊も、綺麗に消えて、綺麗に消えて、消えて、なくなっている

明日のことなんかどうでもいいように、ふわふわ、浮いている。

しあわせ、しあわせ。しあわせ。


しあわせ、しあわ、しあ・・・
薬がきれたときにくる、さらなる苦痛


ノートに書き出すはずだった言葉がでてこない。
あなたが知っているわたしは、いまのわたし?
この痛みを捨てたら、わたしじゃなくなるような気がしてあなたが遠ざかる気がして、
さっきの痛みさえ、あなたに映るわたしなら
あなたが好きなわたしの一部なら
捨てたくないと思ってしまう。

わたしの悩みは、いったいどこへ
薬が効いて、痛みが消えたと思ったら、
今度は薬の副作用。
痛みがなくなったらあなたに会えないって。
そんな馬鹿げたこと。
こじらせたわたしの痛み。

誰かわかってくれるかな
こじらせたわたしの痛み

いまのわたしを魅力的だと言ってくれる、わたしの好きな人。わたし、いまの嫌なこと全部捨てたら、わたしじゃなくなっちゃう気がして、怖い

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-12-05

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