こいのうた

 ゆびを、なでられて、わたし、浮いていることに、気づきました。スープ皿のなかの、コーンポタージュの、コーンを、スプーンで、おどらせながら、七日間、おなじ夢をみていた、というきみのはなしを、きいていた。(ので、つまり、きいているようで、きいていなかった、ということ)
 体温計で、はかったら、三十七度三分で、わたしの平熱は、三十六度四分くらいで、これは、微熱?と思いながら、きみの、からだのなかのことを、考えて、それは、血の流れは、どうかとか、心臓のいきおいは、どうだとか、こころ、というものを具現化した場合に、きみの、こころは、どんな色で、どんな形をしているか、とかを想って、うっとりするのが、好きだ。「はやくしないと、しろくま野郎が迎えにくるわ」と言って、きみが、肩まである髪を、ブラッシングしているときの、鏡にうつる、きみの、まばたきの回数をかぞえると、なんともいえない気持ちになり、くちのなかが、砂糖をつめこんだみたいに、甘くなり、でも、舌の熱で、じわじわとけてゆくから、ますますなんともいえない気持ちに、なる。
「やだ、この靴、傷がついてる」
 わたしは、コーンポタージュの、コーンを、スプーンでおどらせるより、オニオングラタンスープの、チーズを、ふよふよさせたいと思い、きみは、代わりの靴を探し回るけど、実は、ぜんぶ、わたしが燃やしたの、と言ったら、発狂するかな。オニオングラタンスープのうたを、うたいながら、きみが、怒り、叫び、泣きわめく姿を、想像して、愛らしいな、と感じる。

こいのうた

こいのうた

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-11-30

CC BY-NC-ND
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