くりかえす

 くじらは、うたい、くらげは、たゆたい、くるまは、いなくなり、クローンにんげんは、そこそこ増えて、くわがたむしに、言語能力が付随され、わたしは、さいきん、リリアンを編むようになり、ときどき、くわがたむしと、会話をし、ともだちが送ってくれる、海の写真を眺めながら、カフェオーレをのんで、夜はねむる。
 山の上にある遊園地は、閉鎖しました、お客さんが、来ないから。でも、夜になると、稀に、ライトアップされた観覧車が、うごいているというはなし、それから、ジェットコースターの、コースターが走っていないのに、レールが軋む音と、だれかの悲鳴が、きこえるというはなし、を、してくれたのは、今年の八月のおわりに、うちの網戸にとまった、こくわがた、で、こくわがたは、ともだちの、のこぎりくわがたに、きいたとか。そんな、こわいはなしより、きいてよ、わたしの、海の写真を送ってくれるともだち、ではなく、ねこが好きなあまり、ねことふれあえるカフェをつくったともだちに、赤ちゃんがうまれたのよ、と言ったら、こくわがたは、甲高い声で、「そりゃめでたい、そりゃめでたい」と網戸を揺らして、さわいだ。わたしの家から、山の上にある遊園地はみえないけれど、かすかに、ジェットコースターの、コースターが、ごおおおっと風を切る音が、きこえた気がした。
 それから、冬になり、くわがたむしは、すがたをみせなくなり、わたしは、わたしから、ぼく、になって、ぼくになると、リリアン編みは、まるでできなくなって、たいくつになったので、ぼくも、カメラに挑戦してみようと、初心者でもかんたんに、プロみたいな写真が撮れるカメラを、家電量販店で購入し、ためしに、例の、山の上にある遊園地を、撮ってみようと、足を運んでみると、鉄格子のような門で、遊園地の入口は閉ざされ、チケット販売所らしきところに、薄汚れたピンク色のうさぎの着ぐるみが、横たわっていて、こちらを見て、笑っているようだった。

くりかえす

くりかえす

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-11-29

CC BY-NC-ND
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