*星空文庫

偽の果実と死神

星空トクマ 作

——この地球、裏側の世界。
表向きの世界とはべつに、
朝によるがきて、夜にあさがくる世界が重なって存在している。

死神はそこで、人になさけをかけている。

「これをおたべなさい、毒リンゴではないよ。」
死神は、少年にそれを差し出した。
それは、真っ青なリンゴのようだった。

少年はそれをおいしそうに食べた。

「僕は、死神になんてなりたくなかった。」

いまさらになって、過去を後悔する想い。
罪悪感が宿る。

——表の世界に朝がきた、裏の世界は夜になった。

「僕は、いつまでこんなことを続ければいいんだろう。」

死神になった少年はなげく。

「君の願いをかなえるために、僕は、君を仲間にしたんだぜ、あれは毒リンゴじゃない、死神になるためのリンゴさ。」

「そうだ、——君は普通の場合、人がしんだときはあちらの世界に飛ばされるといった、けれど大抵、悪魔か天使が迎えに来るのに
 僕の体験は、ただ君と同じ用な服を、きせられただけだ。」

「そうだよ、君は僕の友達。君の願いは探偵になること、僕はそれに手をかしている、
あのとき僕と君は入れ替わったはずだ。」

——リンゴは半分かけている、少年の家の玄関に飾られたままだ、母親はそれを見る事ができない。
 それが少年が、死神になった証明、そして、死神は、少年の変わりに、少年の体を使って、実態を得る事になった、
 少年は、死神に操られる事に同意して、自らが死神となり、死神に指図する。——

「犯人は、アイツだ、俺は見てきた。」

証拠なんていうものは、確信があれば整うもの、しかし、確信がないから、
だいたいの犯罪捜査はとまどってしまうのだろう、
けれど少年には確信がある。

少年には、死神の体がある。

死神はにんまりとする、死神は実態をえた。
死神は少年との取引のまえ、こう言って見せた。
あれは——駅前の公園、いつも少年が使う、学校への通学路——その途中にある。
そこで、万有引力にさからって、リンゴがひとつ、もちあげられた、死神は、木にさかさにぶら下がっていた。

「——裏世界知ってる?——」

死神は、からだをさかさまにしたまま、口角をあげてにんまりと笑う。

「君の絶望を半分にしよう、僕は、地獄にも天国にも行けない人間なんだ。」

けれど少年は分かっている。
——あのリンゴは、お互いを半分ずつ、混ぜ合わせてしまった、意識は半分半分になった。
 だからどっちか、わからないんだ。——

死神は、自殺した、成績優秀の兄だった。
少年は、もともとあまり頭のよくない人間だった。
だけど少年は、全てを知って、
彼とある意味、融合していまったのだ。

少年の悩みとは、そんな事ではない。
最近よく、夜中に勝手に自分の力をつかって、
深夜徘徊をする、兄の事なのだ。

「生きていたとき、こんな風にしてた気がするんだ、名前も思い出せそうだよ。」

名前を忘れた死神は、兄の顔で、そう笑う。
二人は、双子だった。

『偽の果実と死神』

『偽の果実と死神』 星空トクマ 作

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-11-14
Copyrighted

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