*星空文庫

世田谷線

もも 作

世田谷線はいいなと思う。
下高井戸から三茶まで20分。ゆったりしている。
電車に執着がないと思ってたけど小さな頃から乗ってるので無くなって欲しくない電車です。
夕方の世田谷線は気持ちいいけど、お年寄りに席を譲ろうとしたら離れた所に行ってしまって譲れなかったので、残念で、あまりいい気分ではなかった。
もう一列の線路の上で、小鳥の群れが空中に舞っているのを速度の遅い電車が横切る瞬間、日差しの中小鳥が宙に浮いたまま静止しているように見える。
携帯ですぐ撮れる撮り方を覚えたのに撮れなくて残念だった。
結局、電車は混み合って私とお年寄りの距離は離れたものとなってしまい、私は駅の出口の前を歩く彼女の後ろ姿を見ながらとぼとぼと歩いた。

この文章を書いてからしばらく経つ。今日、夫と待ち合わせする為に世田谷線に乗った。
下高井戸駅を降りると世田谷線の小さな踏切がある。
「カン・カン・カン・カン…」
踏切の信号の音が鳴り響き多くの人が踏切が開くのを待っている。
となりのおばさんが「猫よ、猫、猫だわ」と言う。おじさんも
「猫じゃないか、猫だ、猫」
と言う。
猫が線路を横切ったのか近くを歩いたのかと思ったらそうではなくて、電車自体が「招き猫」の電車だった。
白い車体に猫の顔が幾つもある。乗ったらつり革も招き猫の白い手だった。
この招き猫の電車はネコバス感は全くない。でも乗ると少し癒し感があって時々遭遇したいなと思わせる小さな世田谷線なのだった。

『世田谷線』

『世田谷線』 もも 作

好きな世田谷線を書きました。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-11-13
Copyrighted

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