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耳障りの方が癇に障るという状態よりも精神への負担は重い。

微分積分が苦手な彼女は、微分積分の授業中に軽い目眩をおこし、それを必死でこらえながらふと耳障りと癇に障るという日本語が脳裏に浮かび、そのイメージを文章として丁寧にノートに書き写した。

耳障りの方が癇に障るという状態よりも精神への負担は重い。

黒板に書かれた数字という概念を超越した微分積分の得体に比べ、鉛筆で書いた文章は率直に美しい、と彼女は思った。

いつの間にか目眩は消えていた。左に顔を向けると、大きな窓の外に9月の夏空が広がっていた。その年老いた夏空が運ぶ風が彼女の頬を厭らしく撫でたとき、彼女の脳裏に新たなイメージが浮かび、それをまたノートに文章として書き写した。

人間の死亡率は100%。

その文章がやけに軽い印象を与えたからか、それとも生を感じたいと本能的に思ったからか、彼女は授業が終わったらソフトクリームを食べに行こうと決意し、ノートを静かに閉じた。

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-11-13

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