*星空文庫

12の年~灰色の朝

nanamame 作

12の年~灰色の朝

Monsta Xのミニョク、キヒョン、ヒョンウォンのお話。「The CLAN」シリーズのMVのプロローグ的なイメージです。

モンエクさんたちがめちゃくちゃかっこよくカムバックしてくれて、「The CLAN」シリーズは過去のものになってしまいましたが、UPしないまま、しかもプロローグ状態のまま放ってあったものがまだありました。諦めてこれでUPするしかないな、という感じです。個人的には気に入っているプロローグなので、本編も書いてみたかったですが、めっちゃ長くなりそうで終りが見えず、書き始めることもできなかった感じです。「The CLAN」難しすぎて…(言い訳)。
というわけで、これの続きは公式MVということで←
お話はちょっと暗いですが。12歳の小さい幼馴染3人を想像して萌えてください。

***

終わりに向かって歩むしかない僕たちが、その終わりを少しでも美しく、楽なものにしたいと願うのは、それほど悪いことだろうか。

廃墟の街で、腐った人の狭間で、僕らはそれでも生きていた。
初めから何も持っていないのに、時に奪われて、苦しめられて、地面を這いずることしか許されない。

何が出来るのだろう。何が出来たのだろう。

僕たちはその時、まだ幼すぎたのだ。


 ***


青い花の咲く花園。
12歳になったヒョンウォンは、初めて父親に連れられて、その場所に入ることができた。

母が少しだけ心配そうな顔で、ちらりとこちらを見て、だが何もなく再び仕事にかかる。

父は手入れの方法を丁寧に教えてくれた。見よう見まねでやってみて、少しでも失敗すれば手をばしっと叩かれる。
万一にも、花や蕾が傷ついてはならない。厳しい教えの元、ヒョンウォンは半日ほどの仕事でくたくたになった。



疲れた細い身体で、灰色の空を見上げる。灰を吸って病気になるのも恐れることはない。

生まれた時から、この街には灰が降っている。灰を吸い続ければ病にかかる。治す方法はない。引き裂かれるような痛みに苛まれた果てに、待つのは死だけ。そうしてこの街の人間は徐々に死に絶え、人は少なくなる一方だ。
青い花は痛みを和らげることはできるが、治すことはできない。食べるものよりも切実に花を受け取って、祈りながら食べても、効くのは一時。
育てて配るのは、支配者一族つまりはヒョンウォンの一族の特権。
いつからどうして、僕たちにそれが与えられたのか、ヒョンウォンは知らない。育てるようになっても、それは教えられていない。

犯罪と、暴力と、退廃と、快楽と、その上にのしかかる死。

そんな街での暮らしが楽しいはずもないが、この街の外をヒョンウォンは知らない。きっと、街の人間の誰も知らない。



夕飯前、部屋で休んでいると、父がやってきた。手に、花を一輪持っている。

疲れただろう。お前は覚えが良い。

厳しく暴力も厭わない普段の父と違って、花を持ってくる時の父は、ひどく気味が悪いと感じる。媚びるような、欺くような笑顔が、父とは思えない。

後頭部に父の大きな手が添えられて、少し上を向く。することは分かっている。物心ついた頃から、2、3日ごとにずっと食べてきた青い花。
ゆっくりと口を開ける。雄しべも雌しべも花びらも、丸ごと食べる。
青い花は味がない。少し甘い蜜の後味がするだけ。
飲み込むと、父が笑う。父の笑顔を見るのは、いつもこの瞬間しかない。

蒲団に横になる。夕飯まで、もう少し寝ていなさい。その言葉を聞いて、ヒョンウォンは目を閉じた。


 ***


母の声はもう掠れてしまった。子守唄を歌ってくれたきれいな声は、もう聞くことができない。
苦痛に呻く声だけ、痛い、死にたい、という言葉だけしか、キヒョンの耳には聞こえない。そのことが、自分自身も死にたいほどに悔しくてたまらない。だけど、12歳の少年にできることは、何もない。何の慰めにもならない粥を作ってあげるしかできない。

青い花の配給は、どうして急に止められてしまったのか。先月、配給を受けにいったキヒョンは、突然告げられた「これで最後だ」という通告を、未だ母に言えずにいた。

どんどんと玄関の方から音がする。零れていた涙をぐいっと拭いて、扉を開ける。
そこには、幼馴染のミニョクとヒョンウォンが立っていた。そのこと自体は珍しくはないが、ヒョンウォンの顔が赤く腫れていた。どれほど殴られたのか、ミニョクに支えられて、ようやく立っているようだった。

「ヒョンウォン、どうしたんだ? その顔、なんで…」

「入れてくれ、キヒョン。早く」

焦ったようなミニョクの声に、キヒョンも慌てて従う。

家の中で、座り込んでしまったヒョンウォンに、キヒョンは問う。

「誰にやられたんだ? どうして?」

痛みで答えられないのかと思って、ミニョクの方を見ても、2人は何も言わない。ミニョクはヒョンウォンが何か言うのを待っているようだ。
だから、キヒョンも、少し俯いたヒョンウォンの顔を覗き込む。小さな顔のあちこちに赤い痣ができている。左目はすでに腫れていて、ちゃんと開いていない。
ひどい、ひどい。まだ子供なのに、誰がこんなに殴ることができるのだ。

「キヒョン…お母さんに、これ…」

「え?」

ヒョンウォンの小さな声。これ、と言って、彼は痛みに顔を顰めながら、ズボンのポケットに手を入れて、何かを取り出した。

それは、青い花だった。ひしゃげて、つぶれてしまっている。だけど、紛れもない、青い花。

「花…、花だ。…お母さんのために?」

ヒョンウォンはこくんと頷いた。
彼は今年から、青い花の世話を仕事ですることになったと聞いていた。花を育てている花園は、一族の人間にしか許されない。だから、一族の御曹司の彼がそれを任されるのは当然のことだ。だけど、配給を止められた人に、配給ではなく、個人的に持ってきてくれるなんて。それはもしかしたら…。

「もしかして、盗んできたのか? そうなのか?」

少し間を開けて、彼はもう一度、こくんと頷いた。キヒョンは驚きで眼を見開く。なんて無謀で、危険なことをしたのだ。殴ったのは、そうしたら、ヒョンウォンの家族なのかもしれない。そう思って、身体が震える。自分の子供を、花1つ盗んだことで、こんなにも殴るなんて。そうしてまで、守るほどのものなのだろうか。この、青い花というのは。

手の中の、ひしゃげた小さな青い花。
それと引き換えに、痛めつけられた友達。

ヒョンウォンの眼から、ぽたぽた涙が落ちる。

「だって、おかしいもん。唯一の薬なのに、苦しんでいる人にあげない、なんて…。たくさん、育てているのに…」

泣いているヒョンウォンの背中を、ミニョクが優しくさする。

「キヒョン、早く、お母さんに食べさせてあげて」

「うん。うん! ありがとう」

キヒョンは隣の部屋まで走っていった。苦痛の声をあげる母に、キヒョンは明るい声をかけた。

「お母さん、花だよ。花をもらえたよ! 食べて、さあ」

母は一時、顔をほころばせた。久しぶりに見る、明るい顔だった。痛みに震えながら、それでもしっかりと噛んで、花を食べた。ほうっと息をついて、ベッドにまた横になる。食べた瞬間に効くわけではないが、もうしばらくすれば効いてきて、呼吸も楽になるはずだ。これで痛みが和らぐ、そう思うだけで、母の呻きは止まっていた。

背後に2人が立っていた。
ヒョンウォンの傷を見て、キヒョンも泣いた。

「ありがと…。ごめん…」

「いいんだ。大丈夫」


 ***


ヒョンウォンは家で母たちによって手当をしてもらったが、翌日は、熱が出て、一日中寝込んでいた。
次の日は目覚めたが、まだ熱があり、動くことはできない。
お腹が空いたな、と思うが、起き上がり誰かを呼ぶほどの気力はない。

こんこんと外から音がする。
風通しのために少しだけ開いた窓の隙間から、ひょっこりとミニョクが見える。彼の笑顔を見て、ヒョンウォンもにっこりと笑い、痛みで顰め面になった。

手に靴を持ち、静かに窓枠を乗り越えて、ミニョクが部屋に侵入する。ミニョクにとっても、そしてヒョンウォンにとっても、窓は出入り口だった。

「少しは腫れが引いたみたいだね。でも、青痣が…痛そうだ…」

「僕は大丈夫だよ。来てくれて、ありがとう」

リスクは承知で犯した罪だった。いや、罪悪だなんて思っていない。正しいことなのかは分からないが、キヒョンの母親のためには、絶対に必要なことだったと思っている。

「キヒョンのところ、行った?」

「昨日、行ってきたよ。お母さん、いつも苦しそうな顔だったけどさ、昨日は優しい顔してた。一緒にご飯も食べたよ」

よかった、とほっと息をつく。

「怪我が治ったら、一緒に行こう」

「うん」


 ***


翌日、ヒョンウォンはまだ痛み傷をおして、窓から家の外に出た。外で待っていたミニョクと一緒に手を繋いで、キヒョンの家に向かう。

そこで、2人は信じたくないものを見る。

玄関に、白い布が垂れ下がっていた。それはその家で、死者が出たことを意味していた。

呆然と突っ立ったままの2人。どのくらいそうしていたのかは、分からない。

白い布が掛けられた玄関が開いて、この近所に住む大人たちがでてくる。その後ろから、白い喪服を来たキヒョンが出てきた。泣きはらしたのか、眼は赤いが、表情はない。同い年の2人に比べても小柄なキヒョンが着ている喪服は、借り物なのか、大きさが全然合っていない。大きな服の裾を織り上げて着ているキヒョンは、離れた場所で呆然としている2人に気付いて、顔を向けたが、すぐにそらした。

木の棺が男たちによって運び出される。これから、墓地まで練り歩く。焼かれて、灰になり、葬られる。灰に塗れた街で、最後は灰になる。それを皮肉と捉えて、火葬を嫌がる者もいるが、死んでしまえば文句も言えない。

花をあげてから2日。今日、様子を見て、また痛みがあるようならば、ヒョンウォンは再び花を盗むことも辞さない心づもりでいた。病気になってから長く、もうすでに末期であったとしても、最後に出会ってからたった2日で、死んでしまったことが、信じられず、信じたくなかった。

ゆっくりと進む葬列の後ろを、ミニョクとヒョンウォンもついていった。手を繋いでいた。そうしないと、ふらふらとして、真っ直ぐに歩けないと思った。本当は、キヒョンの手も繋いであげたかったけれど、彼は喪主も務めるから、今はまだできなかった。



燃え上がる炎と、その中で崩れていく棺。表情もなく、赤い炎に照らされたキヒョンの横顔。身の丈に合わない喪服と、小さな両手の中に抱えた骨壷。
人は死んだら、あんな小さな壺の中に入ってしまう程の存在になってしまうのだ。

どのくらい、その場でじっと突っ立っていただろう。自分の幼さと無力さに、打ちのめされていただろう。

先に動いたのはミニョクだった。キヒョンの方へ近付いて行く。手を繋いだままなので、ヒョンウォンも引っ張られる形で、ついていく。
ミニョクは打ちひしがれるキヒョンの肩に腕を回した。それを真似してヒョンウォンも、反対側の肩に腕を回す。
キヒョンは両側を幼馴染2人に囲まれて、少し驚いて、少し照れくさくて、そしてとても嬉しく思った。母は死んでしまったが、まだ側にいてくれる人がいる。自分のことを、我が事のように心配してくれる人がいる。そのことが、切ないほどに強く感じられた。

涙が流れる。我慢していた分、今度はとめどなく溢れてくる。

炎が消えて、熱が冷め、キヒョンは鉄の長い箸で、大人たちに教えられた通り、母の骨を拾って骨壷に入れていく。重要な骨と、壺に入れられるだけの残った骨を拾って、後は炭や灰と一緒にまとめて灰塚に捨てられる。



いつの間にか夜は明けようとしていた。星の見えない夜空から、薄灰色の空に変わっていく。

そんな中で、3人の少年たちは身を寄せ合っていた。キヒョンは母の残骸を抱いて。ミニョクは、大切な親友2人の手を握って。ヒョンウォンは、ミニョクの腿を枕に見を丸めて。

静かだった。とても静かで不思議と穏やかだった。3人の心の中以外は。

この、灰に塗れた荒廃した世界には、自分たちたった3人だけしかいないような、そんな朝だった。



End.

『12の年~灰色の朝』

今度はDRAMARAMAで萌えたいです。

『12の年~灰色の朝』 nanamame 作

Monsta Xのミニョク、キヒョン、ヒョンウォンのお話。FF、K-Pop、妄想小説。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-11-12
Copyrighted

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。