おかあさん。
どうしても触れていたいと思ったのです。
あれはあなたが捨てたもの。
かつての私だったもの。
どうしても抱き留めねばと思ったのです。
あれはあなたに愛されたかったもの。
かつての私だったもの。
なぜいきてるの。
なぜしんでくれないの。
汚泥に沈んだ花になど
誰が興味を持つでしょう。
翔ばなくなった蝶になど
誰が微笑みを見せるでしょう。
分かっています。
解っています。
それでもあなたは
あなただけは
私を愛してくれなくてはいけなかった。
あなたを愛する為に生まれてきた
この私を。
でもきっとそれも私の身勝手な欲望なのです。
わかっています。
わかっていますから。
幼子のままの私にあなた
どうか温かなスープをください。
からだが満たされ
こころも満たされ
きっと私はあなたを忘れていけるから。
温かなスープをください。
温かなスープをください。
愛などなくても、よかった。
棘の言の葉も拳も無視も
要らなかった。ただそれだけ。
温かなスープを私は今
あなたに頼らずに作って飲める。
それでも、私は。わたしは。
おかあさん。