追い出し部屋解放戦線の攻防

追い出し部屋解放戦線の攻防

   


   


   



   


   


   

 三岸USJ連邦軍がブラック・ハタミ新自由同盟をオルグして掃討作戦を開始して以来、反「解雇特区」抵抗ゲリラの拠点包囲網は膠着状態に陥っている。


 汚い連中だ。奴らときたら、聖地ナマホの女子供がいる公営キャンプでさえ決して容赦なく、略奪し、焼き払っていく。


 追い出し部屋解放戦線でハローワーパルチザンの旗の下に戦う俺たちは、拳を上げて、歌い続けるのさ。


 Where there's a breath, there has got to be a job
 息のあるところに 職があるんだ

 Reap for tomorrow
 明日のために手に入れろ

 Don't let them eat you today
 奴らにお前の今日を喰われるな

 Let's work
 仕事するぜ



   



   
 このごろはやけにIPモルガン無人戦闘機によるフレックスタイム機銃掃射が多い。


 おとといの夜、この無政府無税株主地帯でもっとも反革命的な「解雇特区」ホールディングスの野郎どもが、おれたちにパワハラスター弾を投下しようと停職エリアを侵攻してきやがったので、労基署兵站ラインから撃退した。


 和平工作として、「解雇特区」強靭化党の「解雇特区」元総裁が訪れたが、くだらない茶飲み話の「自己責任」面接に終わった模様だ。


 デンツーユ監獄を陥落させ週80時間二等兵たちを解放した俺たちは、歓喜をこめて歌ったさ。


 Where there's a breath, there has got to be a job
 息のあるところに 職があるんだ

 Reap for tomorrow
 明日のために手に入れろ

 Don't let them eat you today
 奴らにお前の今日を喰われるな

 Let's work
 仕事するぜ



   



   

 昨日一日は各地で「解雇特区」による「勤労感謝の日」攻勢に襲われた。


 北半球が「解雇特区」だらけになったので、ゼネコン共栄圏からの貧困ビジネットF2Fの猛爆撃にさらされながら、あてどもなく脱出し、孤立した飯場トーチカは全滅に至る。


 「解雇特区」ワンコール日雇い戦で負傷した戦友を途中で放棄していかねばならない。撤退中に能力主義イデオロギーに洗脳されて、「解雇特区」季節傭兵として寝返ってしまうからだ。


 労災野戦病院で過労自決していく同志を見棄てていった俺たちは、涙ながらに歌ったんだ


 Where there's a breath, there has got to be a job
 息のあるところに 職があるんだ

 Reap for tomorrow
 明日のために手に入れろ

 Don't let them eat you today
 奴らにお前の今日を喰われるな

 Let's work
 仕事するぜ



   


 後方の味方は敵のリフレ装甲戦車に自爆ドカチン攻撃を繰り返し「解雇特区」リテイリング民兵に打撃を与えつつ、白色エグゼンプション・テロルによる苛烈な反攻を阻止し続けている。


 大手ユニオン連合臨時政府の裏切りに遭った第三十二ガテン師団非正規混成義勇軍は、いったい、いつまで持ちこたえられるだろう。


 「解雇特区」だらけの世界を、「解雇特区」をひたすら殺し続けながら、制住権を失ったわれわれは新たな解放職域を目指さし、ゼロゼロ物件方面戦線を転進せねばならなかった。


 完全包囲されたハローワー根拠地中枢で、同志たちが次々と倒れる哀しい求職戦況を眺める俺たち、命の限り歌うしかない。


 Where there's a breath, there has got to be a job
 息のあるところに 職があるんだ

 Reap for tomorrow
 明日のために手に入れろ

 Don't let them eat you today
 奴らにお前の今日を喰われるな

 Let's work
 仕事するぜ

   



   


 「解雇特区」のいない世界なんて、もはやどこにもなかった。


 塹壕デスクの下で、わが同志グラウチョ・マルクスによって著されたPHF文庫『ニートと革命』を大事に抱え、最期の祈りを済ませてから、俺はもう、永遠に眠れる時間を待つ。

 タイム機銃レコーダーの銃創に華々しく散りながら、死んでいった仲間のラインに横たえた俺は、微笑みながら歌うだろう


 Where there's a breath, there has got to be a job
 息のあるところに 職があるんだ・・・・・・

 Reap for tomorrow
 明日のために手に入れろ・・・・・・

 Don't let them eat you today
 奴らにお前の今日を喰われるな・・・・・・

 Let's work
 仕事するぜ・・・・・・   


   


   


   


   


   

追い出し部屋解放戦線の攻防

数年前に書いたものを書き直した。
The Pop Groupというバンドの"Where There's a Will"という曲からインスピレーションを得た。

著者が所属するアートユニット先端KANQ38の11月初ライブの告知ページが完成しました。
どうぞご覧ください。よかったら見に来てください。
http://slib.net/78716

作者ツイッター https://twitter.com/2_vich
先端KANQ38 ツイッター https://twitter.com/kanq3
先端KANQ38 公式サイト https://neuedada.wixsite.com/kanq38

追い出し部屋解放戦線の攻防

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-11-03

Copyrighted
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