*星空文庫

遅刻の理由

野崎くるす 作

 授業開始を告げる鐘の音が響く。
 初老の教師が、生徒たちの顔を見回す。

「おや、Eくんがまだのようですね」

 教師の顔がくもる。
 教室の隅にある席だけが、ぽかっりとあいている。

「また遅刻でしょうか」

 その教師の声にかぶさるように、勢いよくドアが開く。

「すいません、遅れました!」

 そこには、寝癖をつけたEが立っていた。

「寝坊ですか?」
「いえ、電車がとまってしまって」

 Eは申し訳なさそうに頭をかく。
 教室内に、くすくすとした笑い声が広がってゆく。

「嘘はいけません。さあ、席につきましょう」

 教師にいわれ、Eはそそくさと席につく。

「今日の授業は……」

 こうして、授業が始まった。

     〇

 授業開始を告げる鐘の音が響く。
 初老の教師が、生徒たちの顔を見回す。

「おや、Eくんがまだのようですね」

 教師の顔がくもる。
 教室の隅にある席だけが、ぽかっりとあいている。

「また遅刻でしょうか」

 その教師の声にかぶさるように、勢いよくドアが開く。

「すいません、遅れました!」

 そこには、寝癖をつけたEが立っていた。

「寝坊ですか?」
「いえ、バスが渋滞に巻き込まれてしまって」

 Eは申し訳なさそうに頭をかく。
 教室内に、くすくすとした笑い声が広がってゆく。

「嘘はいけません。さあ、席につきましょう」

 教師にいわれ、Eはそそくさと席につく。

「今日の授業は……」

 こうして、授業が始まった。

     〇

 授業開始を告げる鐘の音が響く。
 初老の教師が、生徒たちの顔を見回す。

「おや、Eくんがまだのようですね」

 教師の顔がくもる。
 教室の隅にある席だけが、ぽかっりとあいている。

「また遅刻でしょうか」

 その教師の声にかぶさるように、勢いよくドアが開く。

「すいません、遅れました!」

 そこには、寝癖をつけたEが立っていた。

「寝坊ですか?」
「いえ、原動機付自転車のエンジンが壊れてしまって」

 Eは申し訳なさそうに頭をかく。
 教室内に、くすくすとした笑い声が広がってゆく。

「嘘はいけません。さあ、席につきましょう」

 教師にいわれ、Eはそそくさと席につく。

「今日の授業は……」

 こうして、授業が始まった。

     〇

「おや、Eくん。今日は遅刻しなかったみたいですね」

 教師は満足そうにEを見て、おや、と教室内にちらほらと見られる空席に首を傾げる。

「今日は遅刻が多そうですね」

 教師はぽりぽりと首筋を掻く。
 すると授業開始を告げる鐘の音が、学園内に響き渡る。

「すいません!」

 鐘の音が鳴り終わるか終わらぬうちに、ドアが勢いよく開かれた。
 そこには、荒い呼吸で立つ生徒の姿。

「おやおや、珍しい。どうしたんです?」
「すいません! (ほうき)が見つからなくて」
「そうですか。もうちょっと早く準備をして、余裕を持って家をでるように」

 教師の言葉に、生徒は「はい」と頷き、席へと向かう。

「さ、授業を……」

 するとドアが勢いよく開かれて、身体を上気させた生徒が一人。

「すいません、遅れました」
「これまた珍しい。いったいどうしたんですか?」
「あの、ドラゴンの調子が悪くて」
「それはいけない。大丈夫だったのですか?」
「はい。診てもらったら、ただの食あたりだろうと」
「それはよかった。ほらほら、席について」

 生徒は元気よく頷くと、席に向かう。

「さ、本当に授業を……」

 三度、ドアが勢いよく開かれる。
 そこには、気恥ずかしそうに頭を掻いた生徒が一人。

「いやはや、これじゃ授業になりませんね……」

 教師は笑いをこらえながら、「あなたは、どうしたんですか?」と尋ねる。

「はい……、電車に乗り遅れてしまいまして……」

 生徒は照れたように笑って、「すいません」と頭を下げる。

「それは実にファンタジーなお話ですね」
「ダメですか?」
「賢者の石を見つけるよりも、現実的ではないですね」

 教師は手を叩き、「ほら、早く席につきなさい。授業を始めますよ」という。
 生徒はホッと胸をなでおろし、席に向かう。

「今日の授業は、中世における……」

 こうしていつもより少し遅れて、魔法学校における魔法史の授業が始まった。

『遅刻の理由』

『遅刻の理由』 野崎くるす 作

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-11-02
Copyrighted

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