眠る五分前

人が毎日死んでいる。ニュースでも新聞でも目を凝らすまでもなく、当たり前のように死亡記事が掲載される毎日、身近な人間の死以外にはひどく無関心な私に警告を発しているのか、はたまた世間への関心意欲の低さを自覚させたいのか。
部屋の明かりを消して布団に潜り込む時が毎日の中で一番幸せな時かもしれない。外は暗く、音も静かに眠りを誘う、日付変更五分前。
安らかに眠りにつきたい私に、昼間の死亡事故が催促してきた「また日々を無為に過ごしたのか」
余計なお節介だ。無為になんかしていないし、死ぬかどうかなんて毎日考えてたらきりがなくてモヤモヤする。円周率を数え出すのと同じぐらい途方も無い事なのに、ひどく頭の中で繰り返される。
「死んだら終わりだ」「自分が生きた証を残せていない」「まだなにも成し遂げていない」
ぐるぐるぐるぐる。目を閉じてもぐちぐちぐちぐちきりがない。携帯にイヤホンを付けて、静かな音楽を聴いた。どんなに小さな音量でもうるさく聞こえるのはこの際我慢した。
2番のサビはメロディが好き。音符の種類だとかはまったくわからないけど、気に入ってる。
曲が終わって、ちょっとだけ目が覚めてしまった。
もう日付は変わってしまった。早く寝よう。
改めて布団の中に潜り込む。暖かい布団が心地よくて、お菓子につられる子供みたいに、抵抗しようもなく、私は眠りに落ちた。

眠る五分前

寝ようとすると急に哲学的なこと考えたりし始めて眠れなくなるのです。別に悩みがあるわけでもないんですけどね。脳がまだ子供だから起きていたいんですかね。でも僕は寝たいのです。死活問題なのです。

眠る五分前

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-11-02

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