夢の中の君を想ふ
夢の中の貴女を想ふ
誰にも信じてもらえないだろうが、こんな夢を見たことがある。
俺は夢で知らない同年代くらいの女に恋していた。
自分の居る場所も、何をしているかも知らない。ただ知っているのはその異性のことのみ。
見る者全てを惹き付ける鮮やかな紅色の長い髪と、それと同じ色合いの猫を思わせる少し釣り上がった瞳。
ふと目が合う度にはにかむ笑顔が忘れられない。
俺に何かを言おうと開き掛けた薄紅の唇から声が聞こえる前にその夢は終わってしまった。
俺はそれが夢だと気付くまでに少し時間を要した。
夢だと理解し難い程の幸福感に満たされ、夢という事実を受け入れることが難しくて。
夢だと分かってから、俺は夢の中にその愛しい紅を追った。
運良くもう1度会えればいいと思った。現実で会ったことも無いその女に会いたくて仕方が無かった。
けれど、夢の中にあの紅を見ることは叶わなかった。
それから数年が過ぎた。
春から入学した高校の部の扉を叩いた奴に目を奪われた。
鮮やかな紅色の長い髪。
間違いない、間違えようが無い。夢に見たあの紅だった。
──やっと会えた。俺が恋焦がれたお前に。
夢で知らない異性に恋すると、現実でその存在に巡り会う事があるらしい。
俺とあいつが付き合うのはまだもう少し先の話。
夢の中の貴方を想ふ
誰にも信じてもらえないだろうけど、こんな夢を見たことがある。
私は夢で知らない同年代くらいの男に恋してた。
自分の居る場所も、何をしてるのかも知らない。ただ知ってるのはその男のことだけ。
落ち着いた雰囲気の背の高い奴で、その雰囲気に合った黒髪と、息を呑むくらい綺麗な切れ長の瞳。
ふと目が合う度に黙って私を見つめ返す優しい視線がどうしても忘れられない。
私が何か言おうと発し掛けた言葉は彼に届かないまま、その夢は終わってしまった。
それが夢だと気付くまでに随分時間が掛かった。
夢だと思えないくらいの幸せな気持ちと、夢という事実を受け入れられなくて。
夢と分かってから、私は夢の中にその彼を追った。
もう1度会いたかった。現実で会ったことの無い彼にどうしても会いたかった。
けれど夢の中でもう彼に会うことは無く、私はその悲しさに1人静かに泣いた。
それから数年が過ぎた。
春から入学した高校の部に飛び込んだ先に私は自分の目を疑った。
息を呑むくらい綺麗な切れ長の目。
間違いない、間違えようが無い。夢に見たあの彼だった。
──やっと会えた。私が恋焦がれたアンタに。
夢で知らない異性に恋すると、現実でその存在に巡り会える事があるらしい。
私と彼奴が付き合うのはまだもう少し先のお話。
夢の中の君を想ふ