*星空文庫

頭の中にもう一人

桜庭 千春 作

頭の中にいたもう一人のそれについて書きました。
共感してくれる人はいるだろうか。

さらっと見ていただければ幸いです。

それ

私の頭の中にはもう一人の私がいる。
それは、私と違ってものすごくお喋りで
私の考えを全否定してくる存在だった。
どちらかというと私は物静かな方で
できるなら他人と関わりたくないし
自分で決断することが苦手な性格だ。
だからそれにいつも付け込まれて追い込まれて
私は精神をすり減らしていく。
頭の中で声がするのは普通のことなのか
今となっては理解するのも疲れてしまった。

それがいつから私の頭の中に住み着いたのか
自分でも分からなかった。
思い出せる限りでも
高校生の頃付き合ってる彼氏に浮気をされてから
そいつは私を追い込むことばかり言ってきて「あんたがそんなんだから」とか
「どうせ本気じゃなかったんだから」とか
とにかくネガティブな考えをぶつけてきては私のことを鼻で笑っていた。
それに対して「うるさい、黙ってよ」と頭を叩き叫ぶこともあったが
そんなことをしていると本当に気が変になりそうだった。


そんなある日、私は人生に行き詰まり自殺未遂を犯した。
薬を大量に飲み、手首をカミソリで切った後
親に見つかり病院に搬送されたが残念ながら命に別状はなかった。
するとその日以来、頭の中で毎日のように喋っていたそれの声がピタリと止んだ。
頭の中は、住居人が出て行った空き部屋のように
殺風景が広がる砂漠のように何も聞こえなかった。
話しかけても返事はなかった。

結局それは何だったのか。
それは、私の単なる心の声だったのだろうか。
聞こえなくなってしまった今、私の心は死んでしまったのだろうか。
今となっては知るすべもない。

『頭の中にもう一人』

『頭の中にもう一人』 桜庭 千春 作

  • 自由詩
  • 掌編
  • ミステリー
  • 成人向け
  • 強い反社会的表現
更新日
登録日 2017-10-13
Copyrighted

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