*星空文庫

絵画、謎の空中渦巻き

ドライアドの本棚 作

今日は太陽がまぶしいのでくだらない文章をメモしていく。

人にはそれぞれ、美学をもってる、センスともいう
センスは、勘からきていて、そのセンスは筋がいいと、
この人の前後に何があったか、
と他人の心を引き付けたりする。

人それぞれセンス。
自分にできる事、やりたい事
をセンスにしようとする。
趣味だかなんだかでも、仕事でも
でも形にしようとして、努力の方向を間違えた時は恐ろしい。
自分も最近体感したこの失敗を、
今、この仕事机にあるもので表現してみよう。

例えばダジャレだ、みぎわきにおいてある、ペンを使おう。
例えば学生が、
ペン回しをしようとして、自分の試した事のない上級の回し方をためして、
少しもできずに、友人に
からかわれる事を想像すればいい。

それから、ダジャレだ。
あまりにもつまらなく、典型的なダジャレをいったらその場が静まるな。

それから、あまりに自虐的な事をいって、周囲の人間に理解されなかったり、笑われる事もないとき。
恐ろしい空気がながれ、
気まずさのせいで自分を庇う人間すらいない、
自虐的な冗談は、ときにその場の全員を傷つける事さえある。

だけど、才能があったりうまくやるやつっていうのは、
ぎりぎりのバランスを知っている
それが、自分にもほしいんだけど、はっきりいって、ない。

情けがない。
今日の自分は、窓の柵によくとまりにくる小鳥に挨拶をしただけだ。
まだ10時半だ。

今までの自分の生き方は
ほとんど、こういうセンスでしか物事を見てこなかった。

 そのくせ、最近の事だが極度にその美的感覚や、自分のセンスを
疑ってしまった。
そのとき、自分仕事上のスランプに陥ったのは、皆が皆知っている事なのだ、
だから、偶然に抜け出してしまった理由を、あえて文字にした。
それで、かつての自分を反省する。

そうすれば<あいつ>もまた白い歯をだしてわらうんだろう、
間違いない。

俺はやつを、珈琲の中につきおとしてみたいんだ、
さっきだって、おれのひざをつついて笑わせてきた。
絵を読んでいる最中に、だ、
俺は、秋空の、雲って薄暗い空の天気にきがついて
灯りをつけた、
灯りをつけたら、やつはスーッっとどこかえへいってしまった。


はっきりと話そう、あいつにあったのは、ほんの、2、3週間前さ。

そのとき、自分はほとんど、散歩しかしていなかった
新しい作品のアイデアは浮いてこない、かつて、大いに評価された自分の作品ですら
遠い過去の、むしろ、だれか他人のした事ではないかというような、疑心暗鬼の気持ちすら湧いてきていた。
だって、今はその時の金もほとんどのこっちゃいないからな。

そんなとき、頭上にただ流れている雲を眺めていると、自分と空の間よりも、もう少しだけ近くに
何か、空を見る自分を邪魔しているものがある事に気付いた、
流れる雲を見ていただけだが、その間に変なものがある、
ピンとはしばらくあわなかったが
竜巻上の渦が、空中に浮かんでいるのを見たんだ。

だけど竜巻ではなかった、ただ、渦をまいている
空気のような何かで、
それは黒かった、

そのときはぶらぶらしているだけだったから、
別にそれでもきにならなかった
ああ、いよいよ自分の精神が悪くなってきんだ、
別に稼ぐ手段でもかんがえなければな、
そんな心境。

だがそいつはしつこかったさ。
次の日から。

そいつは、次は図書館のトイレに現れるようになった

次はカフェ、

次はレストラン

次は寝室で、耳打ちをしてきた、
自分の絵の悪口をいっている、聴いた悪口を報告してくつ
眠りを邪魔している、明日は早く起きろと指図をする

こいつは、雲とは全く別のものだ、竜巻でもなかった。
なぜなら人型の何かが、たまにそいつの中からこちらを覗いている。

そいつが現れ始めたと同時に、自分の中にあった、とても大切なものが
侵されている事を感じ始めていた、
他人の視線よりも自分に近く、自分の視線より他人に近い視線を
奴がもっている。
もしかして、
自分は人の言葉を、真剣に受け入れすぎたのではないか
自分は、自分の事を、真剣に考えすぎたのではないか、

そう考えると、あるひとつのストレスが思い当たった。

そのちょっと前の時期まで自分は、自分を追いつめる事に快楽を感じていた。

人に言われた事に注意して、
その通りに
無理をして、セスを頭に思い浮かべれば、
そうすれば
難なく、毎日の“何か”を達成できると思っていたんだ
だから、その分、疲れが自分を包んでしまっていた。

そもそも、この仕事を始めたのは、サラリーマン時代の自分からの、
現実逃避が原因でもあった、
ただ、最近、あの渦巻きのせいで、よくわからなくなってきた。
あの渦巻きは、善意をもとうが、悪意をもとうが、かならずそうやって
自分と空の間、自分の目線と雲の間に
ふらふらと浮遊している、

そして、人型が中からのぞいてる。

新聞を読もうがトイレにいこうが、友人に会いにいこうが、
新しいアイデアの邪魔をしている。
ただの渦だ、自己紹介もしやしない、
邪魔をするたびに
それを眺めていたら、すべてばからしくなってきた、
図書館の次は、公園に現れた、
作業着は、少しもよごれていないのに、物珍しそうに近づいてきた、
そのときは笑い声が聞こえてきた。

だからもう、逆に笑えてきてしまって、

自分は、自分の手でそんな、理解不能の美意識を
——絵にしなければならない——
そう考え始めてきさえした、
そうだ、
——自分は、美意識を、人のせいにしても、自分のせいにしてもいけない——

あの渦巻きは、自分の心の不安や、不満、恐怖とも違う、
あいつに会う前は、人の気持ちも、自分の気持ちも、そういうものもごちゃまぜになって、
悪いものもすべて受け入れて、
自分の心の中に捕えておいて、ダーツの矢のようなもので
ストックしておいた、

自分の心の中のバーで、ダーツの標的はいつも自分だった。
前にも後ろにも進めないとき、自分はそれを、ストレスとして、自分自身になげつけていて……
自分を追い込んできた。

悪口も、エネルギーにできると思っていた、

尻に火がつき、焦りがうまれて、
何らかの仕事をするだろう。
つまりマゾだ。

そうすれば、自分で追い込んだ自分が何かをしてくれそうだったのに。
最近現れたのは、理想と違って、現れたのはこんな間抜けな奴だった。

あいつには名前があるのか、
きっと名前なんてない。
俺が何もできないとき、
泣いたり笑ったりする。


あいつは文字にすると逃げていく。
だからもう、金輪際文字にはしない、
奇妙な疑いを持たれても困るから
これは比喩の話だから、と付け加えておこう。
冗談はこれで終わりだ。

ここからは、おちゃめな渦巻きの観察日記だ。

やつは、カフェで俺の飲みかけのカフェオレも飲んだし、

それから、俺の菓子も勝手に開けて食べてしまったし、

自宅での客人をもてなす最中に
俺の変わりに横からちゃちゃいれたり、ペットの脛を蹴っておどかしたり、
自分自身でしゃべったりもした、

やつは、俺の、小さいころの姿なのかもしれない
世話がやけるだけで邪魔でしかないが
俺に甘える術を知っている。

いや、
俺の小さいころよりひどかった、
——やっぱり奴は形容できない、名前もないし、悪魔かもしれない——

ある日、ひさしぶりに絵の仕事をひとつしあげたら、
ビールを飲もうかやめようか迷っていたら。

気付いたら、やつは渦巻きの中から飛び出して
その悪魔的姿をこっちに見せて、
フォーク型の槍と、キラキラの白い歯を見せびらかしていったよ。

『俺は虫歯だよ、虫歯の精霊だよ』

確かに虫歯はみつかったさ。
だけど、その後も姿を魅せたから、きっと違う、

形のないものであって、ふれる事のできないものであって、俺が触れようとすると逃げる。
それは、俺だけのものでもない、誰のものでもない、
もっとひろく深く、ただそこにあって、そこにある事に気付くと、こちらに力を貸してくれるものだ。

全部嘘、次の作品のアイデアだよ

次の展示会にきてくれ

『絵画、謎の空中渦巻き』

『絵画、謎の空中渦巻き』 ドライアドの本棚 作

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-10-13
Copyrighted

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