ひょうたんと悪魔

昔々、街より村のほうが多かったころの西ノ国で、
正確がバサバサした青色の服を着た悪魔がいました。
悪魔は、世界中を旅しましたが、やはりもどってきて、西の国周辺に住み着いていました。
墓場とつながる十字路に住み着いては、
人のことをおどかしてばかりいました。

しかし、悪さばかりする一方で
そのあくまの心はいつも飢えていました。
悪魔は、寂しさを埋める方法を知りません
彼はたったひとりで、人間は大勢だからです。

悪魔は、人と自分がまったく違う事をしっています。
人のようには笑えず、人のようには怒れない。
その嫉妬や、あこがれのようなものが彼をさらに貶めました。

何度か愉快な人が十字路を通って、彼を励ましましたりばかにしたりしましたが、
それよりは、彼はその十字路で人を脅かして、逃げていく様をみる事ができるのが愉快でした。

西ノ国へもどってから
何十年も何百年もたつと、
彼は人を思えば思うほど余計に醜くなる自分を知りました。
それからまた、よけいに心は飢えていきました。

だから、ある山里の十字路におりたって、そのあとずっと、何百年もそこから動かない事に決めました。
だから、人が生まれてから老いていく様子をまじまじと見る事ができます。

『ああ、なんてはかない生き物だろう、私は、憧れているはずなどない。』

101年がすぎたとき、風が強い秋ごろの事でした。
枯れ葉をまきあげてゴーゴーと風がふいています。

そこへある詐欺師が通りかかります、
詐欺師は
悪魔のおどかしや、取引に一切耳をかさず、
自分と取引をしてほしいといいます。

悪魔は、おや?と思いましたが、
面白そうだし、
ひょっとするとこいつが面白い友達になるかもしれないと思い、
その話を聞く事にしました。

その十字路の、もともとをたどると、村と街と墓とお寺に分かれています。

その看板を作りたいのだと、詐欺師はいいました。

彼は、悪魔と話したいらしく、十字路にテントをはりました。
1週間も取引を要求します、
『ここに看板をたてさせてくれ』

詐欺師は義賊気取りです、
実は詐欺で得たお金を、他の所、人が注目しない、大切な何かを作るために使う事にしていたのです。
『大切な何かとは?』
悪魔が尋ねます、
『僕がそのとき、大切だと思う事が、大切な事だ』
悪魔の服は臭くて汚く汚れていましたが、
詐欺師が、川にでて、かれの衣服さえ掃除してやるので、段々綺麗な身なりになりました
101年の汚れが、ほとんど目立ちません。

ある日、悪魔は質問や、交渉の話ばかりされるので嫌になってきました。
彼は十字路の主が悪魔だと信じ切っているのです。
たしかに、それは正しいことです、
世界中の十字路に悪魔はいたのです
ですが悪魔は陰謀論が嫌いです、
自分の姿を見る物が嫌いだという事と
証拠がないことを口にする人間が嫌いなのです。

詐欺師も、悪魔よりは辛抱強かったし
一日中監視されるのがいやだったので、
悪魔は、ある植物の種を持っている事を思い出しました。
悪魔の術で、それを異次元の空間から引き出します。

掌にさしだしていいます。

『ヒョウタンの種をもっているんだが、
このひょうたんが出来るときには、
お前を悪魔にしてやろう。
その代わり、俺と入れ替わってくれ
そういうのはどうだ?』

悪魔は、詐欺師があまりにしつこく、
そして自分もその気に入った十字路から動くのも
面倒だったので、
詐欺師に思い切ってその話を持ち掛けしました。

悪魔は、自分の役目に疲れ果てていました
今その事に、そのとき、彼と始めて真面目に向き合い話したときに気が付いたのです。

詐欺師は得意気に答えました。
『なら、お前が俺の体が気に入らなければ俺は悪魔にならなくてもいいかい?そしてお前は、そのヒョウタンになるといい』

しかし、悪魔の気持ちは変わりません。

ですが、詐欺師は、それからヒョウタンができるまで
ずっと自分の悲しい過去を話し続けました。
小さいころ施設を転々としていこと
いじめ、虐待、
その話をすると人が悲しむ事。

詐欺をやる悪党の反面
人の目を付けないようないい事をしている事、
それが狂っている事を自覚している事。
悪魔がこんな人間に変わってくれるのなら
魂をうってやろうと言い続けました。

毎日毎日、悪魔と
にやにやにやにや
そのほほえみは、悪魔より悪意にあふれていました。

悪魔は、ただでさえ疲れ果てているのに
詐欺師のその話で心がさらにからになってしまったのです。

結局悪魔は、詐欺師にみるみるだまされ
結局詐欺師はその場所に看板を立てて、
悪魔は、ひょうたんとして
なくなく詐欺師と旅をする事になりました。

悪魔は、何百年とある知識で、その詐欺師がなくなるまで助け続けました。
意外にもその二人の組み合わせはよかったようで、2年も一緒に暮らすと、
色々な場所へ人間のように、案内してくれる
悪魔でも天使でもない詐欺師を気に入ってしまいました。
意外にも彼が墓場に入るまで、彼との約束をまもり、
ヒョウタンの中で、それなりに楽しく暮らしたという事です。

ひょうたんと悪魔

ひょうたんと悪魔

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-10-07

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