*星空文庫

雨とパン屋と珈琲と。

木犀スイ 作

雨が降っていた。ポツリポツリと雨粒が傘に落ち、雫となって地面に吸い込まれていく。

「最悪」

今日の天気予報は晴のち曇だった。
急な天気の変化に対応する身にもなって欲しい。
たまたま折りたたみ傘が鞄の中に入っていたから良いもののそうでなければ今頃濡れていただろう。
準備の良い自分を褒めてやりたいくらいだ。
徐々に雨足が強くなってきた気がする。
これは折りたたみ傘では凌げないなという直感に従い素直に雨宿りが出来る場所を探した。
確か近くにパン屋があったはずだ。
そこで雨宿りさせてもらおう。
パタパタと小走りで目的の場所へと向かう。

「セーフ…」

本降りになる前に目的のパン屋へと辿り着けた。
焼きたてのパンの良い香りが漂ってくる。
店を覗くと昼時だからかお客さんが沢山いてトレーいっぱいにパンを乗せていた。
そんなに美味しいのなら一度くらい食べてみようかなとも考えたが既に昼食は済ませてしまった。
ごくり。
良い香りに釣られて喉が鳴る。
これは買わなければ損なのでは…?

「今食べなくたっておやつにしたらいいんだよな」

我慢出来ず、ドアを開く。
カランカラン。
来客を知らせる鐘が鳴る。

「いらっしゃいませー。本日のオススメはメロンパンとなっておりまーす」

温かく迎えてくれる店員さん。それとパン。
さて何から買うべきか。
オススメされたメロンパンにしてみようか。
それともお惣菜系のパンにしようか。
ここにいるだけでお腹が空きそうな程、美味しそうな匂いに包まれる。
焼きたてのパンに、珈琲の香りに、店員さんの元気な声と笑顔。
最高の組み合わせだった。

「メロンパンと、カレーパンに、焼きそばパンも外せないよな…塩クロワッサン何てのもあるのか…食べてみようかな…」

ブツブツ小声で一人言を呟きながら一つ一つ吟味していく。
焼き立てが売りのようでどれを選んでも温かいパンが食べられそうだ。
これだけ種類が豊富だと目移りししてしまってなかなか決断が出来なかった。

「塩クロワッサン美味しいですよ、オススメです」
「そうなんですか、買ってみようかな」

うろうろしていた自分に声をかけてくれた店員さん。
勧められるまま塩クロワッサンをトレーへとひとつ置く。
美味しかったらまた此処へ来て買えばいいのだ。
欲張る必要は無い。
とりあえず今日はこんなところだろうとレジへと向かい会計を済ませた。
雨はすっかり上がっていて晴れやかな空が広がっている。
濡れた地面に太陽の光が反射してキラリと光る。

「折角だし外で食べるか」

確か近くの公園には東屋があったはず。
これは尻を濡らさずに食べることが出来そうだ。
無事公園に東屋へと移動しパンを広げる。
さて、どれから食べたものかな。
ベンチに座ってじっくり悩んだ結果オススメされたメロンパンと塩クロワッサンを食べる事にした。
残りは誰かにあげてもいいし、明日の朝ごはんにしてもいい。
会計の時に頼んだ温かな珈琲に舌鼓を打ちながらメロンパンを頬張る。
口いっぱいに広がる甘味とさくっふわっというアクセントのある食感がこれまたいい。
甘さも控えめでこれなら甘いものが苦手な人でも美味しく食べられそうだ。
メロンパンを頬張りつつ珈琲をこくりと飲んで喉を潤す。
珈琲の苦味がパンの甘味によって引き出され、それが旨みとなって口に広がる。
幸せの味だ。
次は塩クロワッサンか…どんな味なんだろうか。

「うわ、美味い」

恐る恐るひとくち食べてみると、つい口に出してしまうほど美味しかった。
サクサクとした生地とほんのりとした甘味。
それを引き締めるように塩の程よい塩加減。
これは人気にもなるしリピーターも多いだろう。
それ程までに美味しかった。
これは焼きたてを食べるべきだ。
次に行く機会があればもう一度食べようと誓った。
珈琲を飲み終わるまではここでゆっくりしていこうと決めたので、のんびり寛ぎ景色を楽しむことにした。
葉に雫が垂れてキラキラと綺麗に輝く。
濃い緑がより一層濃く感じられる景色だった。
休憩時間もそろそろ終わるだろうという頃には珈琲を飲み終わって片付けをしていた。
ここからなら遠くもないし会社までは間に合うだろう。
少しだけ公園を散歩してから戻るのも悪くない。
ゴミ箱にゴミを捨てゆったりとした足取りで進む。
仕事を忘れ、ひとりのんびり珈琲を啜って美味いパンを食べる。
そんな贅沢な日があってもいい。
特別でもなんでもない日。
失敗して落ち込んだ日。
良いことがあった日。
また雨が降った時でも良いかもしれない。
また此処へ来てまたパンを食べよう。
足取り軽く会社への道を進むのだった。

『雨とパン屋と珈琲と。』

寝起きですぐ書いた作品。
どうしても雨とパン屋を絡ませた作品になってしまうのでお腹が空いてるんだと思う。
この主人公は男性をイメージして書いたけれど、女性としても問題なく読めるように意識して書いたつもりです。

雨宿り→店に入る→(何かに)出会う

この流れが好きです。
どうしてもこうなってしまう。
たまには晴れてる話も書きたいな。
書けるようになりたい。
もう少し描写に厚みが欲しいかな、というところかな、反省点は。
何はともあれ今の自分のセンスではこれがいっぱいいっぱいでした。
大して食事の描写は入ってないけれど、想像してお腹空かせてもらえたらなあと。
楽しみながら読んでくださると嬉しいです。

『雨とパン屋と珈琲と。』 木犀スイ 作

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-10-03
Copyrighted

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