缶コーヒー。

コーヒー。

コーヒー。

「コーヒー」
「もう、終点か。」いつのまにやら電車は終点についたらしい。冬の香り。マフラーに顔を埋めて、坂道の自販機の前に立つ。ココアを買おうとすると、何かの香り。まさかと思って後ろを見ても、あのころの景色は探してもどこにもない。「当たり前か・・」ちいさくつぶやきカツカツといつもの道をたどる。いつものコンビニにいき、いつものほろ酔いホワイトサワーとチーズ。これが夜ご飯。「ガチャ」鍵を差し込み古びたドアがそう鳴く。電気をつけて、風呂を入れる。その後は夜ご飯。モッツァレラチーズを少しフライパンで焼き、ほろ酔いを開ける。冷蔵庫を開くとそこには期限切れ間近の甘い赤ワインが一本。これもしっかり飲まないといけないことを理解し、コップとともに机に出した。パソコンを開いて仕事の表の最終確認をしながら夜ご飯。仕事のミス。そんなの結構ある。すべて確認したあと上司に連絡しようと思ったけど酔いが回って来たみたいで携帯の姿がない。それっぽいものをつかむと、本棚の本がどばあああああああというすさまじい音を立てて落ちてきた。その中には、中学時代のアルバムがあった。卒業記念に私が作ったものだ。開いてみた。すると、私のキライなコーヒーの香りがした。そのほろ苦い香り。また私の記憶にノックする。「言えばよかったかな・・」そんな言葉は、ワインとチーズで飲み込んだ。

出会ったのは確か。中学1年生。転校生の私は、不安と緊張で言葉がうまく紡げなかった。そんなときにたしかキミは「俺の名前、優っていうんだ。お前の名前は?」持ち前の笑顔で話しかけてくれた。「みみ・・。橘 みみです・・。」これがたしか最初の会話。たしかその後は、話しかけてくれたからいっぱい話すようになった。話してみると気があって、いつの間にか一緒に帰るのが日課になった。雨の日は二人で一つの傘で帰ったり。ちょっと恋人っぽいこともしてた。ずっと君の隣りにいたいけど、迷惑かけたくなくて、伝えたら距離ができちゃいそうだからずっと言えなかった。ある日のいつもの帰り道。部活帰りだから汗臭い私よりも背の低いサッカー部の君の背中を追いかけた。すると、キミはいきなり足を止めた。そしてこういった。「好きだ。」なんのムードもない、バカっぽい告白。でも、「私も。」私の口はそう答えていた。二人の物語が始まった。ずっと好きだったから嬉しかった。とけいが六時を過ぎたこところ。二人で笑いあって帰った青春の日。その後もずっと。ずっと中学の間は一緒に帰っていた。中3の冬。受験。キミは頭がいいから、高校が離れるのは確実だ。けど、ずっと続いている。続いていくそんな気がした。いつもの帰り道の自販機。キミはいきなりまた足を止めた。ああ、終わっちゃうのかな。そんなことを思った矢先。「なんか買っていくか。寒いし」キミはそういった。まばたきをして見上げたその背中は、私が知っている君の背中より大きく、あたたかそうになっていた。「うん。」きみは私のキライなコーヒーを。私はココアを買った。二人で飲んでいると、「一口頂戴」キミはそういった。私がココアを渡すとキミはコーヒーを私の手のひらの上においた。「交換こ。飲んでいいよ」そう言われた。ああ、やっぱ幸せだ。私のキライなコーヒーはその日は甘いけどしょっぱい味がした。3月。ついに卒業の日。これが最後に一緒にあるく坂道。背の高いキミに合わせいつもより大股で歩く帰り道。「あ、そうだこれ。」私はカバンの中からアルバムを取り出してキミに見せた。「これ、2つ作ったんだ!もしよかったら記念にもらって」そう言って渡した。「おう。」小さな返事。これだけで幸せだったのにもっと。望んでしまった。好きすぎて。苦しくなって。信じたいのに。疑って。「別れよう」って言ったのは。「わかれたくない」って言葉が聞きたかった。だけなのに。「今までありがとう。ほんとうに大好きだったよ」なんて、冗談言えるあなたじゃないの知っているから。なんで、そんなこと言っちゃたんだろ。どうして。引き止めてよ。

翌朝。アラームの音で私は目覚めた。アルバムを枕にして寝ていた私は仕事の支度をした仕事に行く途中に、あの時の自販機のコーヒーを買って飲んだ。
すると、あの時の味とは違い、すごく苦い味がした。
「あまくないな。」
一筋の涙のほうがおいしく感じた。君のぬくもりをほんの少しだけ思い出したくなった空の高い冬の日


引用文章
奥華子「シンデレラ」

缶コーヒー。

ここまで読んでくださったみなさんありがとうございました。この作品は私が小学4年生のときに書いた処女作です。前のサイトから移転しました。まえのファンの方は申し訳ございません。まあ、これからもどうぞ宜しくお願いします。

缶コーヒー。

失恋。駆け引き。

  • 小説
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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-09-30

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