サイレント・ナイト

サイレント・ナイト

テレビもラジオも点けず

僕は僕だけを見つめる


サイレント・ナイト

西伊豆の海に行ったね

僕の中に君が戻って


サイレント・ナイト

君は長い髪を少し揃え

あの海で過ごした


サイレント・ナイト

君はあんなにも笑顔で

そして、裏表などきっと


サイレント・ナイト

泳ぐのあまり得意じゃないね

2人の時間、たった2人だけの


サイレント・ナイト

シャワーの後の髪の香り

淡くて甘い香り


サマー・ビーチ・ナイト

君は負けず嫌いで


サマー・ビーチ・ナイト

僕は元卓球部で負けないのに

でも2人とも大人気無く


サマー・ビーチ・ナイト

そんな君が無邪気で新鮮

ちょっとズルいサーブ打ったり


サマー・ビーチ・ナイト

そんな君が心地良くて

ずっとずっと喋ったね


きっと

波が合ったんだ君と僕の

会話、呼吸、鼓動、吐息



サイレント・ナイト

君は帰国子女で

英語が堪能で



サイレント・ナイト

日本語のリズムは丁寧で

西洋哲学が好きだと言ってた

フリードリヒ・ニーチェがお気に入りで

僕はついてゆけなかった


『空を飛ぶ為にはまず…歩き、登り、…

その過程をとばすことは出来ないのだ』


それでもリズムは合ったんだ

言葉を発するリズム、

呼吸を続けるリズム、

会話が心地良かった

呼吸が心地良かった



抱き合った時の強さ

絶妙にピッタリで

いや、若干、僕の方が

強かったけど多分



都会(マチ)へ帰った君は

卸したてのジーンズで

いつも通りの僕に言った



『わたし、パリに行く』


『一度、全部リセットして』



それは、、別れの…


僕の何故には応えなかった君



君にとっての僕は

君が空を飛ぶ為の過程のひとつ…だった…



ずっと、ずっと

2人で過ごしたかった

ニーチェなんてどうでも良い

一緒に空を飛びたかった



きっと、きっと、

君の止まらない好奇心にとって

僕は、何かが物足りなかった



僕にだって好奇心はあるんだ

もっと君の事、知りたいんだ…

という、心の声は

君の、眼の力に制されて

言えずじまい…

だったこと、今でも後悔してる

きっと、言ったところで

君は、この国に収まりきらなかった…



サイレント・ナイト

笑顔、話し声、

少し気色ばんだ顔…

僕の頭の、

僕の心の中で走馬灯


君の呼吸が…愛おしかった



サイレント・ナイト

盛夏の終演を待たず

蟋蟀が鳴いている


サイレント・ナイト

君からの卒業…

は未だ…

サイレント・ナイト
サイレント・ナイト
サイレント・ナイト…

一緒にパリへは行けなかった

サイレント・ナイト
サイレント・ナイト
サイレント・ナイト

右頬を伝う雫

拭う事…出来ずに…



          【サイレント・ナイト】

 

サイレント・ナイト

サイレント・ナイト

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-09-27

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