カオス35

ステラウィクは僕を直視していた
僕は溜息をつき立ち上がると
ガラス戸から下界を見下ろした

右半分の顔面が崩れ落ちた
赤いハイヒールを履いた少女
百足が穴を自由に這い回る猫
シーツにくるまり鉄パイプで
叩かれることを甘受する聖職者
雪豹がたった今インド象に飛びかかり
腹を裂き臓腑が音を立てて落ちている
その前で首の曲がった痩せた女が
白いピアノで スケルツォを奏でる
メリーゴウラウンドは
黄色い照明を放ち
誰も乗せずに回り続け
鉄柱には助けを求める人民が
我先にと詰め寄っている
その誤風景を映し出す
300インチスクリーンは
僕に確認せよと言わんばかりに
直角に貼られていた

この混沌はもう35時間も続いている
そもそもステラウィクの誤操作によって
引き起こされたものだが
肝心の薬ががない限り
収まることはない
止まることのない饗宴
コンクリートのサークルで
繰り広げられるこのイベントは
コンクリートの中で始まり
コンクリートの中で完結する

僕はアルミニウムの椅子に座ると
目を閉じその時を待つことにした

カオス35

カオス35

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-09-18

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