悲しみの青い花6

屋上は寒かった。それも当然かもしれない。もう十二月だと言うのに・・・・クリスマスももう近い。でも僕は・・・これからを期待した。彼女がなんと言うか、そればかりが気になった。
やがて彼女は来た。
「話って何?えっと名前は・・・」
「岩崎陽二だ。話って言っても別に特別なことじゃない。僕はちょっと君と話がしたかっただけだよ。何、人の行動にいちいち理由などないさ。ただ君と話したい。それだけだ、あと、君の夢のことも」
「夢?」
「うん。僕の夢に君に似た人が出てくるんだ。その人は青い花を僕の夢の草原に植えていた。君じゃないの?」
そう言うと彼女は寂しげに笑った。とても儚げに・・・
「うん。夢は見るの。でも青い花は知らないなあ」
「そうか。君はこの二年近く、ずっと僕の同じクラスだよね?」
「うん」
「でも話をしたことは無い」
「うん」
「よかったら・・・・僕の話し相手になってくれない?ずっと・・・・君のことが気になっていたから」
「別にいいよ」
「そうか。嬉しいよ、じゃあここは寒いから教室に戻らない」
「自分から屋上に誘ったのに、寒かったの?」
「うん、すごく・・・ごめんね」
そうして僕らは同時に笑った。その日は、その後も僕は彼女と教室で話をした。それは小さな始まりだった。やっと踏み出した最初の一歩だった。僕は幸福な気持ちで彼女と話をした。

悲しみの青い花6

悲しみの青い花6

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-09-16

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