*星空文庫

星のように

白石 鈴蘭 作

星のように
  1. 再び
  2. 一緒

最後までぜひ読んでください!

再び

綾瀬との一件があり、俺らの距離は少しずつ離れて行ってしまった。いつもは茅野から交わしてくる挨拶も途絶えている。茅野は朝何か言いたげに口を開くが、やめてしまう。
俺のなかでそれが気に食わなかったので前までわざと時間を合わせていたがその時間もずらした。
それだけではない。
少し近くしていた理科の席を離し、放課後に終わらなかった美術の作業をしないようになるべく時間内に終らせるようにした。物を落とさないように注意を払いながら全ての作業をしている、などとあの一件だけが原因ではなく、俺も少し距離をおくようにしているのだ。
それでクラスの人達から一斉に睨まれるのことも無くなると思いきや...

黒板には大きな字でこう書いてあった。
「富永は馬鹿(爆笑)」
二年生の時にもこういうことが一度あったので傷つきはしないが、三年生になって一度もこういうイタズラはなかったので、一体何事か、と思った。
後ろでクスクスと笑う声が聞こえるが、そんなことは気にせず黒板消しで消した。
消しながらあることが頭をよぎった。
まさか綾瀬があの事をばらしたのではないか、と。
そうではないと願いたいところだが、そんな期待はすぐに裏切られる。

「綾瀬のLINE見た?」
綾瀬という言葉に反応しシャーペンを持った手を止めた。
「見た!」
「ヤバイよね」
「一緒に帰る約束した癖に付き合ってないとかイカれてるでしょ」
やはり綾瀬が流したらしい。人気者の癖によくあんなことやれるな、と少し見下しながら思った。人はどんなに人気者でも裏がある。なんでこんな生物なのだろう。人間は。少し神様を恨んだ。

少しだけ茅野の方を見た。
茅野も親友達に攻められているのを見て胸が痛んだ。
「あんたね!綾瀬が言ってたよ?富永と帰ってるって!」
茅野がえっ?という表情で親友を見上げた後、また机を見た。
「美月、なに?それ?意味わからないんだけど!なに考えてんの?馬鹿!」
結花、言い過ぎだよ!となだめる他の友達を無視して親友は続ける。
「最近、なんかおかしいって思ったのよ。一回だけだけどいつもは断らない美月が私と帰るの断ったでしょ?3日だっけ?私を捨てて富永選んだってこと?酷いよ!」
前聞いた似たような台詞を親友は吐いた。
すると...
バシッ
と大きな音がしたので振り向くと茅野が痛そうに肩を抱えた。
結花!やめて!と親友の手を友達たちが掴む。それを見ていた俺は、無意識のうちに立っていた。
「茅野を、茅野を叩くな!俺が悪いんだから!茅野を、責めるなよ。茅野は悪くないよ。」
そう叫ぶと一気に現実に戻った。
(何やってんだ。俺...)
クラスの視線が一気に茅野達から俺へと移る。
「茅野茅野うるさいわね!ケンカ売ってんの?私買うわよ?」
「ごめんね。色々隠してて。後、結花のこと、捨てたような素振り見せて。許して...だからもう...やめてよ、結花。彼はなにも、悪くないから。」
本当ならば素直に喜べる言葉も嘘のように感じてしまい、そんな自分に寒気がした。
「みんなもやめてよ。富永君の悪口言うの...私は本当に友達としか思ってないんだから。こんなことでクラスに嫌な雰囲気流れるの馬鹿馬鹿しいよ!」
と茅野が言うと「まぁ、そうだな」と呟き授業の準備をし始めた人が増え、さっきの険悪な雰囲気は無くなった。
親友と綾瀬は絶句してなにも言えずただただ茫然と立っている。

茅野の方を向くと茅野も俺の方を見ていた。少し目を逸らしたがまた向き直った。茅野がノートにこう書いていた。
「ごめんね。
本当は嘘じゃないよ。」
茅野にはなんでもお見通しだ。
俺は、ブンブン首を振った。
茅野は笑う。

やっぱり、俺は「ずっと」茅野と一緒に居たい。



まだ時間はあると俺らは思っていた。

一緒

距離がまた近くなった再び近くなったあの日から俺らが校舎裏で待ち合わせて帰ることはやめたが、二人で会うのはやめてなかった。

学校帰りに会わない代わりに休日に二人で出かけるようなことをし始めた。出かける、といっても隣の地域に行くだけだけれど。

そして今日も、午後に出かける約束をしていた。

「おっ待たせ~!ごめ~ん。遅れた?」
駅前の公園でスマホをいじりながら待っていると彼女がハイテンションでやって来た。
「んー?2分31秒遅れ。」
「そういう時はね。いい?待ってないよ。とか大丈夫だよ。って言うべきなの。せ・い・や君♡」
と言われ顔が熱くなった。
最近、イタズラで誠也くんと呼ばれることがたまにある。
今日も順調に行きそうだ。
やっぱり茅野といると1分1秒が楽しい。
何があってもやはり俺は茅野が大好きだ。

「今日はどこ行く?あ!私が決めてもいい?」
「そこまで遠くないところならどこでもいいよ。」
茅野とならどこに行っても楽しいはずだから。
「よっしゃ~!じゃあ決めた!」


「本当にこれで合ってるの?」

うーん…こっちかな?と呟きながら何回もホームに上がっては違う!と言っては下がってを繰り返していた茅野がやっと、多分これ!と言った山手線に乗りながら聞いた。
「んもー。多分合ってるって言ってるじゃん!」
「その多分が気になるんだよ!」
「信用ないんだからぁ~!間違ってたらGoogleマップに文句言ってよね!」
と怒られてしまったのでもう文句を言うのはやめた。

秋葉原~秋葉原~
と自動音声が流れる。
窓の外を見るとスクールアイドルのアニメの主人公の女の子がモチーフのユフォーキャッチャーで取ったと思われる大きい枕を持っている人がいた。
俺は思わず「秋葉原だ...」と呟いた。
座り直そうとすると茅野に俺の手を掴みながら、速く!と言われてホームに降りさせられた。
「なんで降りるの?」
「だって秋葉原だもん。行きたいところ。」

俺は驚きの余り叫びそうになってしまった。

「なんで秋葉原なんだよ!」
「だって富永君がどこでもいいって。」
「よく考えろよ!秋葉原は男子が来るような所じゃねぇんだよ!」
「へぇー...そぅ?」
茅野は全く聞いてない様子でまたGoogleマップをいじりながら「あー...遠い~」とか「おー!4.3だ!」などと言っている。この様子だと何を言っても無駄だと思ったので文句を言うのはやめにした。
それにしても秋葉原はここまで騒がしい街だとは思わなかった。
ゲームセンターの大型ビジョンには最近、大人気のAKB系のアイドルグループのMVが大きな音で流れている。バトル系マンガの主人公の女の子のコスプレや、どこかの国の昔の貴族っぽい服を着てお洒落な傘を持った人、みんなが知っているようなディズニープリンセスのコスプレをした人など様々な人がいて驚いた。
「富永君、一休みしない?」
「いいけど...どこで?」
「調べて、一番評価が高い所、見つけたからそこでいい?」
「あぁー。いいよ。いいよ。」
「テンション低っ!」

まさか、秋葉原といえばの...メイドカフェじゃないよな?

「この夜がずっと続いて欲しかった」

ヒューヒュー!パチパチパチ!
小さな舞台で歌い終えたメイドさんに店中の人達が拍手を送った。
その中でも一番楽しんでたのが茅野だった。ずっと楽しそうに歌っていたから、なんと、メイドさんが少しの間だけ茅野にマイクを渡したのだ。茅野はマイクを持った瞬間本気で歌い始め、店中が歓声に包まれた。茅野は今もその歌を口ずさんでいる。
ちなみに俺は先程来たアイス・オン・ココアを飲みながらメイドさんをずっと見ていた。いや、睨んでいたと言うのが適切だろう。
この、場所は窮屈だし、居心地が悪い。はやく帰りたい!

「またお越しくださいませ。ご主人様♡」

やっと出れたと思い、気を取り直して茅野と秋葉原を歩いた。
「あそこ行こ!」
指を指された先には大きく「プリクラ館」と書かれていた。
「?!一緒にプリクラ撮るの??」
「うん。」
「嫌だよ!そういうことは彼氏としろ!」
「居ないんだもん。良いじゃん~お願い!」
茅野にここまでせがまれたら仕方ない。
「しょうがない...」
「大丈夫!キスプリクラとかは撮らないから。」
「あ、当たり前だ!」

「二人、三人以上、カップル...カップルでいいいよね?」
「二人だよ!」
「押しちゃった。」
「茅野!!」
「背景は?」
「これ。お洒落」
「はぁ?やっぱりこれでしょ。ホント富永君センス無さすぎ。」
「もう押しちゃった。」
「富永君!」
などと一番最初の設定から争いが起きる。

「ハート作るんだって。ほら、やって!」
「はー?!付き合ってねぇのになんでやんなくちゃ行けないんだよ!」
本当は少し嬉しいが...でも付き合ってやった方が何千、いや、何億倍も嬉しいと思う。
「もー。ちゃんとやってよ。あと笑って!」
「わかった...」
パシャ!


「わー!初めて男子とプリクラ取った」
「面白かった...」
帰り道。俺たちは印刷されたプリクラを見て歓声を上げた。プリクラをデコしたりしながら、少し言い合いになったりもしたが、案外楽しかった。一番大きく印刷したのは茅野がデコしてくれたもので、「富永君」ではなく「誠也くん」と書いてくれた。茅野の素晴らしいセンスのおかげで世界にひとつしかない宝物ができた。
「ほらね?案外、秋葉原も楽しかったでしょ。」
「メイドカフェはちょっとあれだけど...」
「プリクラは?」
「素直に言うと楽しかった。」
「良かった~♪」

一瞬、沈黙が流れる。



「今日思ったんだけど...」

「うん。」

「富永君ってさ」

「なに?」

「かっこいい...」

「え?」

「私...好きかも...」

「ふざけてる...?」

「ううん...本気...」

「それって...」

「あ。着いたから。ごめんね。」

「あ...」

今のは、愛の告白か?


嬉しさと疑いの気持ちで胸がザワザワする。


こんな気持ち...初めて...

『星のように』

最後まで読んでくれてありがとうございました!
前回公開した作品のあとがきに書いた通り、ペンネームを変えました!
白石鈴蘭です!よろしくお願いします!

『星のように』 白石 鈴蘭 作

開いた距離が縮んだ。 しかもまさかの急接近?! 茅野美月と富永誠也の関係はどうなるのでしょうか? そして、もうすぐ来る、運命の時間… 中学三年生の一瞬の恋。

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-09-14
CC BY-NC-ND

CC BY-NC-ND
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