*星空文庫

高校カメラマン

ドライアドの本棚 作


 〇県の某西高校には流行がない
校舎はおもちゃのお城みたいな最低なデザインで、
ださいコスプレ的セーラー服。
かた苦しい校風の教師も死んだ魚のような目をしていて、生気がない、さえてない高校だ。

皆ほとんどしゃべらないし、しゃべったとしてもつまらなくてすぐに会話がおわる
生産性が少しもない。

女子生徒のエリーはそんな世界に知られずに娯楽を付け加える努力そうする。
退屈なとき、インスタントカメラで何気ない風景を切り取る。

もうひとつのの呼び方がすきで、
ポラロイドカメラと呼びたいが、回りと共有するのも気が引けて、
アンドロイドに響きが似ているから、彼女はポラロイドカメラ君と呼んでいる。
これは誕生日に祖父にもらった二号機だ。

『おはようポラロイドカメラ君』

今日はくもり、通学の最中で、
校門のすぐ前の坂道をのぼるとき、
スクールバッグからそのカメラを覗き見て。
毎朝通学中に挨拶をする、
人にみられたら恐ろしいが
あいにく見られたことなど一度もなかったから、
その奇妙な習慣は彼女の日常に定着してしまった。

どんなつまらない世界にも、フィルター、その情報をかみくだき、分析して、メモして、もう一度く見直す力さえあれば、
刺激的な世界に早変わりだ、変わりものなのに単純だ。

途中で合流した、
幼馴染のタクをとった。
寝癖がひどかった、
隣にいても何の文句もいわない、
一度くらい、ポラロイド君だなんて、バックの中に話しかける女子を変だと思えばいいのに、
寝癖の方も、もともと天然パーマだからよりひどかった。
頭をかいていて、なぜだか平和で腹が立った。

『タクッ!!』

意味もなく左肩をたたく。

エリーには自慢はないが、自信のあるものがひとつだけ、それがこのカメラだという事は
、こいついがいには秘密。
撮る、それだけでそれなりに心地いい。

天気は、今にも雨がぱらつきそうで、あやしく日が陰り、冴えないテンパー男と校門でわかれ、教室へむかった。

『バイバイ』

『いたかったから何かこんどおごってくれよ』

(女子にいうセリフか)

急いで、写真部の部室へむかい、先生に挨拶して、資料を用意して、取りたいものを取りに行く
比較的自由な部活だ。
本日のターゲットは演劇部の須藤ちゃんだ。

須藤ちゃんの書く本はすごい、
だがその本は、エリーにしか魅せてくれない。
彼女は、昨日スドーちゃんのお願いを聴くかわりに、
本を書いている時の横顔を写真に撮る事を了承してくれた。

『スドーちゃん、お願いって何?』

『気になる人がいて』

(…………)

これには困った、こういう話がまるで共感できなくて困るのだ。
ある後輩を幼馴染のタクとくっつけた事から、
まるで愛のキューピットかのように
扱いをその他の生徒から生徒から受けている。

とくに、女子生徒にはそういう話が広がるのは早い。

とにかく、夕方までにそうしなくてはいけない、
頼まれたのは、彼女が、彼と映った写真。
学校行事の遠足のイベントである。

あのとき、思いっきり勇気を振り絞って話かけたら、肩を組んで笑ってくれた
その真意が聞きたいという、
しかし、相手はお調子ものだ。

『サイトーのやつ』

(お調子者で人気者、といえば、大勢いれば少しはいるだろう
しかしやつは女たらしだ、
まあそれはいいとしても
あいつの事がすきな女子の一人に、あのスドーちゃんが。
まあそれもいいとして、
なんで、今彼女がいるのに、私にこの依頼をしてきたのか、
まあそれもいい

なぜならこれは取引なのだから。)

よくわからない回想を、昼までに何度もして、昼休み、
昼食をはさむ、
結局いい案がおもいうかばず。

手紙で呼び出す事にした、中身は適当だ、
問題は、あのバカ男にすこしドキッとさせるような封筒の方だ、
そして丁寧な字、
字はならっていたので自信はある、ポピュラーな書体だったけど。
スドーと名前をかいてげた箱に
そして放課後をまった、
野球部の部室に行く前に気付くだろう。

『……なんでお前がここにいるの?』

ガラガラと扉が開き、演劇部の部室に入って来たスドー。
部室のカーテンはしめられている。
ちいさな壇上に、どっしり構えていたのは、須藤ではなくエリー
がらがらと扉を開けてはいってきたのは
まんまとひっかかったサイトー
それなりにイイオトコだ。

そして、いまになって彼女、エリーは自分の才能のなさにやっと気づいた。

(何も考えていなかった!!)

二人は見つめ合い。
そのまにたえかねて、スドーは首からぶら下げていた、ポラロイドカメラ君をとりだして
一枚パシャっとやった

『いやー、心霊写真でもとれないかなと思って』

『はあ?忙しいんだけど、いい加減にしろよ、大会近いんだよ、こっちは野球部だぞ』

『こっちだって、写真部よ』

『一番自由奔放なところじゃねえか、それに、君、なんで演劇部の部室に入れるの;?』

(うっ……)
『体験入部』

あまりの不可解な様子に耐えかねたのか、
サイトーは
完全に思考を停止したように目をまん丸くして、おさるさんのように猫背で手をだらんとさせ
こちらに目を向けた、
やつのくせに、
ウキーともいわずに教室から出ていこうとする。

実は、彼女のそば、壇上のすぐそこの机といすの下にスドーさんは隠れている。
何のプランもなかった彼女も、そのときばかりは、自分の努力が、あの交渉が、1か月に及ぶ彼女との距離を縮める作戦が、
水の泡、
そもそも、彼女の横顔をみたとき、女でありながら、ほれてしまった、
だから、その言葉が出た事は、弁明の必要もない。
その瞬間、彼女のなかの何かがはじけたのだから。

『き……気になっている、から』

ふりむいたサイトーは、サルの姿のまま、
扉を勢いよくしめて部室内のこの場所にもどってきた。

『はい?』

『私じゃなくて、好きな人を知っているけど、どうやってそれを伝えればいいかわからないからよ。』

『何いってんすか?エリーさん』

そばに潜んでいた
須藤は顔を赤らめた、
それよりはるかにエリーのほほは赤くなった。
今、切り取るだけの、ただの点でしかなかった傍観者のエリーが
カメラで撮られる側にかわっている。

その瞬間、部室の前のほうの扉がひらいて、一人の女子がとびだしてくる。
『全部きいたわよ!!』
恋人のナンシーが、壇上にあがって、エリーにの襟首をつかんで叫んだ。
そして、全身から空気をとりこんだような、大声で叫んだ。

『彼は私のものだからああ!!』

気迫にやられたエリーは、後ろに隠れているスドーに助けを求めた。

スドーは、くすっとわらって、
預かっていたカメラで、その瞬間をとっていた、

その様子をぽかーんとみていたお猿さんは、スドーのその笑顔を見ていたと思う、
エリーもその様子をみて、とてもきれいだと思った。

エリーにはわからなかったが、その時、スドーは心から笑っていたとおもう。

(こんなでたらめでいいのか、内心おもったが、あとで交渉しよう、
それにしてもスドーさんにインスタントカメラをひとつ渡しておいてよかった、
例えふられても、なんとでも言い訳できるわ、)

下校の音楽。

『ごめんね、へたなことして、状況を悪くしちゃって』
二人きりの帰り道、冴えない女子二人は互いに落ち込んでいた。

『全然いい、とはいえないけど、ほら、これ』
すぐに現像された写真には、まぬけ面で顔面蒼白、舞台上でシャッターを下ろされたエリーの姿が写っていた。

『やっぱり、演劇部きてよ、私、ヒロインやってほしい。』

(……)

はずかしさを隠すために、お互いのバッグについたストラップの話を交わした。

やっぱり二人はどこか似ているな、とエリーは思った。
だからスドーは心をひらいてくれたのだと思う
明日、ちゃんと写真を撮らせてくれると約束してくれた、
お互いを気に入り始めていた、
収穫は十分だ、

そんな帰り道の途中、不機嫌だった空はやっぱり少しくもっていた。

『高校カメラマン』

『高校カメラマン』 ドライアドの本棚 作

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-09-13
Copyrighted

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