*星空文庫

生贄と奴隷のダンス

星空トクマ 作

魔法使いと科学者は頭を抱えていた。

きらびやかな、赤い屋根のお城の中、一室で
贅沢な食事を白の召使たちと囲みながら、
うーん、うーんと頭と顔をつかい悩んでいました。

昔はそんな風習はありませんでしたが。
今のその国には、3月になると、
眠り続ける姫のために踊り続けるお祭りが毎年行われるようになっています。
眠り続ける魔法にかかった姫の為に、
夜中踊り続けます。

国中の貧しい人や奴隷を寄せ集めて、
祭の前後の期間中、
無理やりにお城のそばのひとつの村にすまわせ、
完全な機械のように、躍らせる行事です。

もう2月のおわりかけ、
窓から見ると、今日は曇りです。

科学者は、あの日、魔法使いと交わした言葉を頭の中に思い浮かべます。
(姫を笑わせる事だけが、眠りから目を覚まさせる唯一の方法なのだ。)

祭の1週間前、つれてこられたある村の宗教の生贄が
ぽつりと言った事が、ほかの人間の耳に届きました。

『私は苦しい、私は求めている、私はあの人になりたい』

朝の朝礼で、生贄がいった事は。
同じく、これから祭の訓練をうける後ろの奴隷にも聞こえました。
奴隷は、生贄を憂い、同情したのです。
(嫌なのにここへ来るしかなかったのか)
といっても、奴隷やその仲間はは巨大な檻の中にいる。
そこで訓練をうけ、当日も、そこで踊る。
身分が違います。

『生贄さん、自分に相当自信がありませんね。』

心情をさっして、自分のほうがましだと思った奴隷が、生贄を慰める言葉をいくつか送ります。

『僕は奴隷ですが
心は生贄と同じです、
人に弄ばれる運命です。
あなたの心がわかります
あなたの苦しみの理由も……。
あなたは、姫がうらやましいといった。
眠り続ける姫が、
もしそんなに苦しいのなら、
だから私が生贄になりましょう。』


踊りは、一週間後に迫っていました。

お城の中では、王様が困ったな顔をしていました。
このお祭り騒ぎの原因。
王様は、首をかしげながら、そわそわと執務室をうろつきながら、何度も思い出します。
横目に、机のペン立てに丸めて差し込んである、長男の手紙の内容も思いだします。
遠くにいる王子は、
とても妹を心配しています。

丁度2年前の事
姫は、隣国との先の大戦の負の遺産。
毒リンゴの魔法トラップにかかってしまったのです。
王は、常日頃戦争を初めて後悔していたが、ときすでにおそし。
教訓として、いつも、知らないものにふれるなといってりましたが
城の中にはえていたリンゴの木を、興味本位でその実をもぎ取って、
そのとき姫は毒リンゴをかじってしまったのです。

そのごすぐに、のちの
科学者と魔法使いはその事をつきとめて、
遠い国から、わざわざ城をたずねてきて、
眠りを覚ますには“笑い”しかないのだと、
王様に伝えるようにいいました。

その魔術に詳しい二人だそうで、その国が隣国と戦っているときも
戦争を終えるための運動をしていたそうです。

しかし、
王様はまだましで、
あれからというもの、王女は、来る日も来る日も、
まるで死んだような目をして、
城の中をそわそわと歩き回ったり、
自室の窓から、
一日中城下の街を見回しています。

そんな様子を毎日、おつきのものたちとみていると
王様はきがめいって、しまいには自分まで同じ用な気持ちになって
(こんな自分には、とても彼女を笑わせる事などできないだろう)
と、常日ごろ頭の中に、負の感情を抱えて、その思いは大きくなる一方でした。

その頃、生贄と奴隷は、
二人が入れ替わる手段を探し続けていました。
生贄は、奴隷と身分を交代する事を願い出たのです。
といっても、いれかわり、ただ単に、生贄を逃がすつもりでしたが。
奴隷には、手段がありました、
彼はナイフ使いの達人で、
二人だけの話の中で、
実はいつでも逃げ出す事はできるといっていました。
それと同時に、自分はこんな世界に絶望したのだといっていました。

奴隷は、祭が始まるまでの間中
その作戦への合意をもとめていました。
だが2、3日たっても
生贄は、何もかわらず
それどころか
いつもよりも激しく踊るばかり。

『生贄さん、演じるのはやめてくれ、
あの眠り姫のためのダンスのステージで
自分を恥ずかしく思う事をやめてくれ。

今ここで手に入らないものを見つけるには
協力するしかないんだ。
諦めないでくれ。』

奴隷は、状況が好転しない事を恐れました

だから毎日、ひとつずつ花をおくります、
生贄は、初めて優しい言葉をかけられ、楽観的になっていたのです。
祭の前日になって、やっと生贄は悟りました。

(このやり方では、誰も満足しないのだ)

そして二人は
新しい
突拍子のない奇抜な方策を見つけました。

祭の当日に、2日目に。
仮面踊りの日に仮面を盗み、
他の人間になりきってしまおうと思ったのです。
仮面には番号が振られていますが、
その番号が狂うと、一瞬だけ監視の体制が狂うと思ったのです。

祭はバカ騒ぎです、城の中に集められた貧しい人々は、
眠り姫の為に踊ります、
何人かの家来や召使は、その様子を厳しく観察しています。
姫やその召使だけが、おくの壇上にいて、こちらを見下ろしているようです。

祭は、その下の広間で行われました、

音がうるさくなり、ほこりや、ごみが室内を多い、
客たちも酒が回り始めた頃
二人は作戦を実行する決意を、目で合図しました。

祭が最高潮に達する頃、
花火があがりました、
驚嘆の声にかきけされ、
二人のたくらみも目立ちません。

奇策は大成功です、
行動に起こして、生贄は初めて自分が自由を求めていた事を知りました。
奴隷のほうも
すでにこの場所から逃げ出す意志を持っていた事を理解していませんでした。
祭の最中になってやっと
二人は初めて気が付いたのです

そして、仮面を手に入れ、祭の騒ぎの中を駆けまわると、
召使たち何人かに追われましたが、バカ騒ぎなので、すぐに隠れる事もできました、
おまけに、霧がでていたので、二人は天に感謝しました。
そして、その祭の中をあちこち駆けまわる事と、ある事に気が付きました。
城のひとたちも、同じ仮面を着けていた事に。

全く笑わない、全く表情を変えない、だけど、にっこりとした仮面をつけている。
やっているのか、やらされているのか。

二人は、心から、自由になれると思って笑いました、
あと少しで、出口です

二人が出口をみつけ、こっそりと走り去って
城の中から逃げ出し、
笑い合うころ、背後で大きな笑い声が聞こえました。
女性の声、
二人にははっきりわかりました。
けれど振り返りませんでした。
後から知りました。
笑っていたのは、眠り姫だったのです。

数日後には、城には国のあちらこちらから集められてきた
花びらがまったようでした。

『生贄と奴隷のダンス』

『生贄と奴隷のダンス』 星空トクマ 作

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-09-12
Copyrighted

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