*星空文庫

夕日、浜辺、第二ボタン

ドライアドの本棚 作

私は昨日、久しぶりの同窓会で
立ち寄った地元の浜に、夕日が沈むのを見に、
再び、今度は一人缶ジュースを片手に、シャツを腰にまいて一人あるいていた。
懐中電灯は、細心の注意を払う。
波は、昨日と違って静かに、ささやかにゆれて
砂と海をかきみだした。

私には、異常なほど尊敬していた
同性の先輩がいた。
同じ演劇部で、異常なほど息がぴったりだった。

学生時代の二人は、
女同士で何をしていたのだろう、
必用以上に、近かった。
それは罪だろうか
それとも、わずかな、
日々の暮らしの中で、忘れ去られていくような
囁かな歪み?。

昼は雨がふって、少し湿った砂浜、ドラマチックさはかけらも感じない。
私は、昨日、先輩と二人で抜け出して、この浜にたちよった。
そして、はしゃぎおわったあと、真剣な質問をした。

色あせた写真のように、カラフルで、ところどころ色のぬけた記憶。
卒業式の日、二人だけの浜辺で、
先輩に投げ捨てられた第二ボタン、
『私を忘れなさい。』
女子高特有の歪な関係、あの時少女だった私は、先輩に恋をした。

『なぜ私だったのですか?』

(私は、あの時の仕返しに、たしかな質問をして、先輩に迫った。
先輩に騙されただなんて思わない。
合意の上だ。
私はまだ、幼稚で、歪な自分自身を悩んでいただけ。

卒業式、セーラー服で二人の砂浜。
あのとき、私は先輩に第二ボタンを求めた、
その心情は、そんな無意味な行為が一般に広まった理由とほとんど同じ。
卒業すれば、あえなくなる、たった一年、それとももっと長いあいだ。

 あのとき先輩は、卒業式の日、私がもとめた第二ボタンをいきおいよく海になげすてた。
それは放物線を描いて、海の中におちた、
波間に消えたボタンを、私は、探して、見守っていた、
先輩は、泣きながら笑っていた。
そのしぐさを、ただ黙ってみているだけだった私。
そのとき、
わたしは、わたしたちの関係はは、歪だっただろうか。)

先輩は、何もまよわず、しかし、瞳を下にむけて、瞼しかみえない形で返事をよこした。
『私は、あの時そばにいてくれるのが、あなたのような人でなくてはいけなかったわ、私は、後悔していない。』

(私のような?
質問者の私の態度のほうはどうだろう。
あれから、私とは何かと考え続けていた。
あれから一年後、私も社会に出て、その荒波の中で、私はよりつよく、自分の存在を確かめようとした。
そんな無駄な力を入れる事で、がんじがらめになって
日々、余計に心を深くとざしてきた。
私はあのときのようにふるまえなくなった、先輩の姿を追えなくなった。
学生時代のように、気楽に、だなんて、無理で
私の目標は、より高く、自分の中の異常なほどの高い理想を目指した。

でも、私のような?この社会に、私のような人がほかにいても、それよりはるかに?私のような私が重要だった。)

先輩はそのとき、確かにそういった。
波の音がうるさく、必死でかき消そうとしていた。

それはただの偶然なのか、
運命なのか、

私は、
昨日の事を思いだしながら。
隠し持った先輩の、結婚の報告のしらせる手紙を
そっと海に流した。

しかえしか、それとも他の感情か、
いまの自分を受け入れるために。

『夕日、浜辺、第二ボタン』

『夕日、浜辺、第二ボタン』 ドライアドの本棚 作

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-09-11
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