*星空文庫

妖精と老婆。

ドライアドの本棚 作

老婆は記憶を伝える事ができただろうか?

妖精の扉が西洋の国で流行ったのはもう40年も前の事になる

公園やもりのあちこちに、扉をもした飾りや、絵などがほどこされ
大変な事態となった。

幸福のおまじないとは、いったん流行すると人の迷惑を考えるような度胸は無くしてしまうのか
その老婆もその輪にくわわった一人だった。

30代の頃、彼女は必至にはたらくキャリアウーマンだったが
ある童話作家に恋をしてしまう。

それが元で、もともとお付き合いをしていた男性と別れてしまう、

二人が付き合い始めたときも
その男はしつこく追ってきた
だが童話作家は邪見にしなかった、

しかし、ある日のこと、童話作家があまりに有名になりすぎた頃
彼女の心は童話作家から離れ始めていた、

そして、二人がであった大通りの公園、よみきかせのボランティアをしていた童話作家はひとことつぶやく
『あのころにもどれたら』
彼女もつぶやく
『そうね……』
その一言を、彼女はいまでも後悔しているという
マスクをつけた暴漢に、彼は刺されてしまった
そして彼女は、一瞬で皮肉な因果を理解した
刺したのは、童話作家の前に付き合っていた彼の弟さんで、
それは彼の兄の依頼だったのだ。

だから、そのとき、病院に運ばれて彼が一命をとりとめるときも
彼女は謝り続けた
彼だけではなく、二人に謝り続けたのだ、
それから彼女は、名前を変えて、この街に移り住んだ
童話作家が死んだと知った時
初めて娘にその話を聞かせようと思った
なぜなら、どうしても堪える事のできない悲しいラブレターを
彼がつねに右のポケットに握りしめていた事をしったからだ。

『僕は君の過去を責めたりはしない』

彼女は、元彼との別れ方を後悔していた
『ごめんなさい、飽きたのよ』
実際に飽きたわけではなく、もっと深い愛情について知ってしまって
彼にもうしわけなくなって、本当はもっと長い文章を用意したのだ
だけど、それをよむのが悲しくて悲しくて燃やしてしまった、
だから、童話作家の彼が刺されたとき、それは自分の招いた因果なのだと思った。

それは彼と始めたあったアーキ街の公園、彼が読み聞かせのボランティアをしていた場所で
最後に彼のポケットにひっそりと手紙を忍ばせたとき
その手紙の内容も、しのびこませた事も知らない彼に最後にいった。
『またね』
の言葉と一緒に
彼は、退院後も彼女を許し続けたが
彼女は自分が許せなかった。
彼女の心の奥底にひとつの傷跡となって、二人の男性の記憶と因果を結びつけていた。

二人に申し訳ないと思った、
だからこの土地に移り住み、何もしらない純朴な男性と結婚した、
彼は、実際、その事をしっても何の文句もいわないほど
立派な機械職人だった。

『またね』か、
彼女は、その因果のためか、
妖精のドアを、娘がせがんでいたそのドアを、彼女のために部屋をリフォームする際に取りつける変わりに、
老いた彼女がなくなるときに、耳元でささやいてほしいといった。

『またね』
と。

『妖精と老婆。』

『妖精と老婆。』 ドライアドの本棚 作

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-08-13
Copyrighted

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