あれはたぶん、日照り雨の降った日だったかもしれない

あれはたぶん、日照り雨の降った日だったかもしれない

   



   



   



   



   



   



 


  あれはたぶん、 日照り雨の降った日だったかもしれない。



   



   



       救われるためだけに、 映画を撮っていたころ。



       石炭色をした、 長い巻き毛の黒髪の女の子。



       拾われて、 見殺しにされた、 大嘘、 8mmフィルム、 非定型オマンコ、 詩。





   



   



   



「ありえない日常」、あのころはいっぱい詩を作って、電話で誰かに読み聞かせてた、みんな、うんざりしただろうな、僕も明日を生きるのにうんざりしてたから、それからすっかりなにもかも「ありえない日常」が襲ってきて、学校行かなくなって、毎日12時間ぐらい電話して、毎日誰かと大喧嘩して、罵倒して、大泣きして、世界のこと、愛した翌日は、木偶の坊みたいな無感情ぜんぶ憎んで、殺して、八つ裂きにして、薬を飲んで、飲んだ飲んだ、もうたくさん、もうたくさん飲んだあとは、もうたくさん吐いて、傷つかなくてもいいのに傷ついて、誰か恋しくなったら、誰かを攻撃して、誰かに裏切られたと妄想して、また薬飲んで、またトイレで嘔吐して、もう消えようと思って、かかってくる電話取らなくなって、電話、冷蔵庫に入れて、なにもかも「ありえない日常」、こんなにも「ありえない日常」、アパートに帰ったら、隣の部屋のドアの前、帰ってこない男を待つ帰ろうとしない女が雪の中、ドアノブの下、座り込んで、これがまた哀れすぎて爆笑、おれの部屋は電気止められて惨め過ぎて爆笑、下宿に帰らず彷徨い歩いて、突如電車で和歌山まで意味もなく出かけて野宿して、公園のマンホールの暗がりで寝てたら子供が石投げてきた、と思ったら、幻覚だった、友達が騒ぎ始めてようやく「発見」されて、泣いて、自信なくして、死ぬつもりで溺れたくて、セックスしたけど、訳もなく親友とも寝やがった、別のブルーなブルーちゃんとクーラーも壊れた部屋で、一日中いじりあって、突いて、突いて、「いっそ包丁で突いて」、セックス、爛れたセックス、吐き棄てのセックス、二度とあの日照り雨の日に戻れない、約束をした途端に、もっと他人が怖くなって、裏切られるのが怖くなって、もうだめだった、「もうだめだ」ということに「設定」した、友達に電話して「これから死ぬわ」って言ったら友達は「いま、真央ちゃんとそうめん食べてて・・・・・・」と言われて、ああ、もう、本当に死ななきゃと思って、喘息の薬を焼酎と一緒に飲んで、最後のオナニーした、味気なかった、味がしなくなったら、猛烈に吐き気がして、吐いてるうちに、幻覚が来て、ビデオを燃えないゴミの日に捨てた新・必殺仕置人の山崎努の死に様を思い出して、ようやく死ぬのが怖くなって、唐突にオカンが訪ねてきた、アホの子みたいに膝にすがって事情を話して、「死にたいの? 生きたいの?」と訊ねられたから「生きたい」と落涙すると救急に運ばれて、胃洗浄、解毒剤、人工透析、なんとか生き延びたとき、あの優しかった看護婦さんがとても綺麗に見えて。



   



   



   




    それらが、 あの日照り雨の降った日の時代の、 全部の中の一部分に過ぎないのだったんだ、 あのころは。



   

    ぶざまな生き残りだったさ、 ファムファタル亡き後の、 アソコの二次妄想煉獄ガマン汁で、 致死量のてめえ。 



    星二郎くんが好きっていってくれた詩、 僕は、 ちっとも、 好きになれなかったけど。



   



   



   



   



   



   



 

あれはたぶん、日照り雨の降った日だったかもしれない

救われ難く生きていた頃のことを描いた。

作者ツイッター https://twitter.com/2_vich
先端KANQ38ツイッター https://twitter.com/kanq3

あれはたぶん、日照り雨の降った日だったかもしれない

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-08-10

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