G(ゴールデン)knightとG(グリーン)knight 2話B

(ピンスフェルト村)

「手掛かり無し、ですね……」
 シナリーが立っているのは、村の横に位置する畑。
彼女から左を見れば、ピンスフェルト村の家々が。右には畑が続き、広い草原をへて、遠くに木々が立ち並ぶ森が有る。
「ち、ここでオヤジが見つかったってのによ……」
 そしてエンディックの眼前が、ライデッカー神父が倒れていた場所だという。村人が発見したときには、既に体の一部が金属化していたそうだ。
 エンディックとシナリーは村に着いてから、事件や魔物に関する聞き込みを行っていた。
 ライデッカーは以前から仕事で村に来ていたらしく、村人は彼の名前を聞くと、快く教えてくれた。
 用心棒に付いて来たはずのニアダは、サーシャの為にと土産物を買いに行ってしまっていた。
「他に怪しいのは……あの森か」
 エンディックは思考する。
養父の死に故郷の黄金騎士が関係しているという、確定情報はないのだ。
もしかしたら、あの森の魔物も、人間を金属に変える力を持っていたのでは?
(故郷の手掛かりが無くなるが、そうなりゃ俺が奴らを、鉄屑に変えてやるだけだ)
「どーおーシナリー? そっちは何かあったー?」
 村の方から歩いてくる人間が一人。
白く長い髪を後ろに束ねた、エンディック達と同年代くらいの少女だ。
 彼女はリモネ=ブレイブン。エンディック一行が泊まる宿屋で働いていて、エンディックは宿で初見(しょけん)だが、シナリーとは旧知の間柄らしい。
 昔、ライデッカーが村を訪れる際、子供達も連れてきてくれる場合があった。幼いシナリーは、そのときリモネと知り合ったそうだ。
「ライデッカー神父のお子さん達を案内して上げなさいって、オヤッサンに言われてねー。ほらシナリーのお父さんってここでも有名だから」
「リモネー! ここは前に調べたんです。今日はエンディックんに見せようと思って」
 シナリーは友人を見るや駆け寄り、抱きついた。顔を近づけて喋る二人は、仲睦まじい姉妹のようだ。
 確かに案内役が居た方が、村も見て回りやすいかもしれない。それに幼馴染が女友達とどんな会話をするのか、エンディック個人としても気になった。
「良い印象かは知らねぇが、あのハゲの人気に感謝だな。俺はエンディック、よろしくな」
 彼が挨拶すると、リモネはじっと品定めするように見て、こう言った。
「えぇー? もしかしてこの人が、シナリーのしょっちゅう言ってた『将来を約束した』人―? あんまり格好よくないね」
「おいシナリーこのアマ何言ってやがるんだ、あぁん?」
「事実です。あんまり格好よくありませんが彼が幼い頃、私の体をどうこう出来る(殺す)権利を約束した男性です!」
 エンディックがいくら真実を述べようと、リモネは友の発言を信じ、彼の印象を傾けていく。
 ついにはエンディックを無視して、彼女らは会話をしながら、村へと歩み始めてしまった。
「はは……こりゃ外で何喋ってるか、聞かなくちゃいけねぇなー。……待てコラァァッ!」
 エンディックはうんざりしながら、二人を追いかけるのであった。

 エンディックらは朝食後にアリギエを出発。馬車は使わず徒歩で、夕方前にはピンスフェルト村に到着した。
 三人とも戦いの心得があり、一度は運悪く野獣に出くわすも、これを難なく退けた。
 エンディックは騎士とは思えない軽装。鎧は荷に入れてるらしく、金属板を簡単な胸当てにしてるだけの、ほぼ私服である。
 武器は金属棒(メタルロッド)。師匠のライデッカーが得意としていたのが棒術だったため、幼い頃から教えられたエンディックとシナリーもそれに準ずる。
 シナリーは修道女らしく見え、かつ動きやすいとして、肩が膨らんだ黒いブラウスと短いスカートの服装。
 得物は養父の形見であるファイスライアという魔言杖(スペルロッド)。金属製で黄色のロッドの先は、斜めになった十字架の形の板が付いていた。Xに見える十字の四つの先端には、魔力を増幅する水色の魔玉が備わる。
 ニアダは騎士としての正装。胸鎧と肩当、小手と脚甲を装備していた。重いはずだが鍛えているようで、道中で全く疲れた様子を見せない。
 優男風な見た目に似合わず、持ってきたのは大きな剣。成人男性の身長より、少し小さい程度の長物。刀身も幅広く、切れ味より剣の重量と腕力で、斬り潰す部類の剣だ。
 村には明日まで滞在する予定で、ニアダが快く宿代を払ってくれて、今に至る。

(森の中)

 男の子が走っている。葉や伸びた枝を振り払いながら、走り続けている。
 彼の服には血が。
すり切った傷から出た物だけではなく、友達が死んだ際に撒き散らした体液も付着していた。
 彼と友人達は親から警告を受けていたが、普段から言うこと聞かない子供だった。
 だから冒険と称し、森近くまで草原を走り回り、かくれんぼをしてしまった。さらに悪いことにこの男の子は、好奇心からか森の中へ進んでしまったのである。
 そして『ソレ』に遭遇した。
 子供が走っていった後を、追いかける『物』が居る。
 成人男性の腰くらいの高さの四角い箱。短い手足が付いていて、二本足で立っている。軽快に森の中を進む姿は、童話の小人のよう。
胴体に斜めに開けられた穴の中で、青い光が人間を索敵。頭?にあたる上の面の出っ張りには、散弾を撃ち出す銃口があった。
 鋼鉄の全身を複雑な植物の模様、迷彩色で塗られた物は、人々から『魔物』と呼ばれていた。

(ピンスフェルト村・勇者の家の前)

 リモネがエンディックに教えた、魔物の目撃情報は二種類だ。
 一つはこの国全体でも目撃例が多い『ゴブリン』と呼称される種類。
体は大きくなく、群れで行動する。ピンスフェルトでは最近森から出てくる個体も居て、村人は畑から先へは行かないようにしていた。
 もう一つは『トロール』と呼ばれている大型の魔物。
騎士団が一度森の中を調査したときに、遭遇したという。さらにそれは魔物と戦う際、情報を持ち帰るよう後方に配置され、逃げてきた記録兵からの伝えである。
 そしてリモネは驚くべきことを知らせる。
 なんとこの村に勇者を名乗る者が居て、魔物と闘い、それを倒しているというのだ。
 リモネの案内でその男の家に向かいながら、エンディックの中で殺気が高まっていく。
(もしもだ。その勇者が本物で、『俺の探している黄金騎士』だとする。戦うとして、俺の格好が見られちまうが……)
「ここが勇者様のお家だよー。でもちょっと変わった人だから気をつけてね?」
 エンディックとシナリーは、リモネが示していた家にたどり着いた。
リモネは戸を叩きながら、住人を呼ぼうとして……鐘が鳴った。
三人は驚きつつ、村の中心から森側に立てられた見張り台を見る。そこから激しい鐘の音が鳴り響き、村中に警告と危険を知らせていた。
「あれは……魔物が出る地域に建てるようにしてる、見張り台ですよね?」
「この鳴り方はまだ警告ってところか。本当に魔物が出たのかよ?」
「昔は使ってもなかったんだけどね。この村は噂通りで……あ」
 家の扉が開き、尋ね人が現れた。
 肩幅の広い中年の男。下は着ているが、上はまばらな装甲版を付けただけの裸で、手には大きな斧と盾。勇者というより、荒くれ者の戦士に見える。
 肉食獣を思わせる獰猛な顔つきのその男は、村に響き渡る不安な音を嬉しそうに聞いていた。
「クフフフ、魔物だ。勇者を……我を呼ぶ声が……聞こえる。今……行くぅ!」
 男は露出した筋肉をいからせながら、エンディック達を押しのけて走っていった。行く先は恐らく……魔物の出る森だ。
「おい、あのオッサン大丈夫かよ! あんな装備で勝てるわけねぇって!」
「信じられないかもしれないけど、あの人がさっき言ってた勇者様。ジャスティン様だよ」
 エンディックらもジャスティンの後を追うのだった。

(森と畑の間の草原)

 ついに森を抜けた男の子の目に、草色の景色が広がる。彼の胸に希望が湧いた。
この草原を進めば、お父さんやお母さんの所に帰れる。叱られるかもしれないけど、無事を喜んでくれるに違いない。
 それを今まで『ゆっくり』追いかけてきた魔物、ゴブリンは認識する。
 標的が一定の地点を通過したこと。草原を走る己を発見した、鐘の音が響いていること。
『指示(コマンド)』通り、ゴブリンは速度を上げて子供に追いつき、至近距離から頭部散弾砲を使用。
 そして後方から仲間が『二機』合流し、彼らは遠くで集まりつつある標的達の方へ向かった。
 草地を染める液体を流す、未発達な肉体を残して。

「勇者様ぁ! オラの子が帰ってこねだ! もしや森に行っだんかもー!」
「うむぅ……任せろぉ」
「勇者様、自警団の男供が集まっととよー!」
「うぬぅ……共に戦わしむぅ」
 エンディック達が追った先には、ジャスティンの周りに人だかりが出来ていた。
 恐れを口にする女性。戦うつもりなのか、粗雑に作られた槍や斧を持った数人の男性。畑に集まった人々は皆、勇者の言葉に耳を傾けている。
「おめらー女子供は隠れてろー! オラ達は勇者様と一緒に魔物退治さ行くだーから」
「オラ達は足手まといかもしでけどー、勇者様の助けになれりゃ本望だー!」
エンディックの『経験』から見て、彼らの武器が通用するわけがない。
例え効くとしてもだ。刃の届く間合いまで『近づく』ことすら、魔物には無理だ。
「エンディック君! これは一体何だ?」
 後ろから慌てて走ってきたのは、ニアダだ。彼の騎士としての装備でも、人間相手なら充分だろうが、自信があっても魔物に勝てるかどうか。
「ニアダさん、村の奴らを止めてくれねーか! 今は非番でも騎士だって言えば……」
「あぁ! そのつもりだ。このまま行かせたら自殺行為だ」
 エンディックに会釈したニアダは、今にも暴走しそうな人々の集まりに入っていく。
 焦るエンディックの隣では、不安そうなリモネが、シナリーにあやされていた。
「ね、ねぇシナリー、また大丈夫だよね? 魔物なんか勇者様が倒してくれるよね!」
「はいはい心配ないですよ。根拠はないですけど。エンディックん、これ……どう思います?」
「魔物は基本、住処(すみか)から離れたりしねぇ。人間が入り込んで、それを追って出ることはあっても、侵入者を殺せば戻るって聞くぜ。奴らに見つけられて、そう長く逃げれるわけねーしな」
 見張り台が有る方から伝達役が走ってきた。彼が村人に何かを伝えると同時に、悲鳴。
 森から出てきたのはゴブリンが三匹。こちらに向かう道中、子供を殺しているらしい。
「うぞだぁああああっ! オラの子がぁぁああ!」
「許せぬぅ……皆の者! ゆくぞぉ!」
 勇者が斧を掲げて吼えると、呼応するように村人達も戦意を高めた。そして無謀にもジャスティンと自警団の男達は走り出すのだった。
ニアダは彼らを止めようと呼びかけるも、残った人々に押し出された。
「こ、こら、止めないか君達! 犠牲者が増えるだけだぞ!」
「オンめー余所者ぉ! 勇者とオラ達の戦いさ邪魔するべかぁ!」
「く……僕のネゴシエイション・オブ・説得が通用しないなんて……」
 それを見ていたシナリーの思考は、もう次の展開に備えていた。
 もし魔物がジャスティン達を『銃殺』した後、まだ得物を求めて村に向かってきたら?
 ニアダが戦ってくれるにしても、魔物の『機能』を停止させるには、攻撃用(アタックスペル)魔言が必要だ。
それも人一人を死に至らしめるよりも、もっと強い魔力を注いだ一撃必殺の、だ。
 ちょうど良くこの場には、使える可能性の有る魔言使い(スペラー)が居る。幼いころから『調整』を受けて強力な魔力(マナ)量を持ち、何人もの人間を殺し、武器として扱われてきた人でなしが。
 自分だ。シナリーは過去を思い出しつつ、不安に駆られていた。
 攻撃魔言のコントロールに自信がない。
己がそれを用いたのは何年も前になる。修道女の仕事として魔言は使ってきたが、戦いの為ではなかった。それに昔の話といっても、ただ一方的に逃げる弱者を殺しただけだ。
渾身の力を溜めた魔言が避けられでもしたら、元も子もない。
「エンディック……私は……」
 頼りたいと思い、シナリーが目を向けた先に、彼は居なかった。
 いや、彼女の周りにも、勇者を見守る村人達の中にも、見渡す視界内から彼は消え去っていたのだった。

 エンディックは村に戻っていた。ざわつく村人の視線を避けて進み、魔物の森とは反対側の草原をへの出口を目指す。
 ちょうど良くこの村には、人々を救える英雄(ヒーロー)が来ている。
 自分だ。エンディックはジャスティン達を助ける『タイミング』を模索していた。
 黄金騎士(ゴールデンナイト)が現れるにしても、村から出てきたように思われてはならない。誰にも見つからない、気付かれないように草原を進み、そこで『作って』行けばいい。
 彼の目指す見つからないぐらいの距離は、事件の場所と村を挟んでいるほど離れているが問題ない。
 エンディック自慢の『乗り物』なら、まだ近いぐらいなのだから。

 ジャスティン達が草原を突き進んでいくと、やがて遠くに異形の姿を見つけた。
 迷彩色に塗られた三匹のゴブリンが、スキップでもするように楽しげに向かってくる。
青い一つ目で人を認識するや、速度を速めて散開。村人達も各個に撃破すべく、別れて走る。
 そして彼我の距離が近づき、戦いが始まった。
 まず村人が弓で牽制する。弓矢の先には獣の動きを麻痺させる毒が塗られていた。
 無論、効かない。
鋼鉄の体に刺さるはずがなく、生物ではないので毒の付着にも気にも留めず、魔物は近くに居た敵に走り、武器の射程に入れる。
 斧を持った村人は接近してきた鉄の箱に、叫びながら得物を振り下ろした。
 勿論、遅い。
轟いた銃声と放たれた鉛(なまり)が、村人の気合を悲鳴に変えた。村人達が持っている武器が当たるよりも、魔物の頭部散弾砲の発射が早いのだ。
 その繰り返しが自警団の人数を次々と減らし、勇む戦士達の勢いを消していく……が。
「今だぁ……!」
 弓を持つ者達と同じ後方で、劣勢を傍観していた勇者が動き始めた。
ジャスティンの目に、若者が魔物に殺される姿が映った。彼は突進し、撃ったばかりのゴブリンの左肩に大きな斧を振り下ろす。
 筋肉を引き締めた斬撃は関節の溝にはまり、駆動を壊し、外した。
ジャスティンは鉄の箱を横から蹴りつけ、倒れた魔物に渾身の一撃を加える。肩のパーツが外れ、駆動系と接合部を露出した場所へ何度も斧が降ろされ、内部が軋んでゆく。
 斧の破壊侵入が限界域を超え、その魔物は機能を停止した。

 遠くから戦闘を見ている者が居る。
黄金の武具を身に纏い、鋼の金鹿に跨った黄金騎士(ゴールデンナイト)と呼ばれる少年である。
 彼の右手は目の前に掲げられ、伸ばした親指と人差し指の間に、淡い光を放つ水晶体(レンズ)?を挟んでいた。そのレンズを通して見ると、遥か遠くの先まで視認することが可能となる。
魔言『SCOPE』。視覚拡張の技術。1の階級。
魔力で水晶体を創り、それを通して外界を見た者の、視力強化や暗視の効果。熟練者が用いれば、生物の体温や発揮された瞬間の魔力を視認することが可能となる。
「ち……そういうことかよ」
 エンディックが駆けつけようとしたところで、異常は起きた。
 レンズ越しに見える世界で、勇者を名乗る男が最後のゴブリンを倒していた。ジャスティンは勝利の雄叫びをあげ、生き残った村人達が喜び駆け寄っていく。
 彼らには見えていない。無謀にも魔物に挑まされ、死体となった仲間のことなど。
犠牲者達は魔物に、いやあの勇者に『殺された』ようなものだ。
「あの野郎……攻撃を『自警団の連中で』受けさせてから、隙を突いてやがる。魔物の構造や攻撃習性を知ってなけりゃ、あんなインチキ出来ねぇだろが」
 ジャスティンの軽装も頷ける。身軽さもあるだろうが、彼の鎧は周りの村人達なのだ。
 そして疑問。あのたった三匹の魔物の目的は何だったのか?
「まるであのオッサンのやられ役で出てきたみたいだぜ……」
 エンディックはまた村の反対側で『戻す』べく、金鹿を走らせた。
この穏やかな田舎に立ち込める、怪しい空気を感じ取りながら。
 先の戦いは勇者が悪い魔物をやっつけた。そこだけを切り取った劇(ショー)のようだと。

(ピンスフェルト村・入り口付近)

 太陽が山間に隠れかけたころ、村に新たな来訪者の姿が有った。
 緑昇とモレクである。
二人は村に行く前にアリギエの教会に寄っていた。デニクの言っていた修道女に会っておこうと思ったのだ。
 だが、そのシナリーという人間は朝方、ピンスフェルトに出掛けたと言うのだ。
 自分達が会いに行ったその日にちょうど良く消え、怪しいと睨んでいた村に向かった、と。
緑昇達はシナリーに疑念を抱き、これを追った。
 そして、『敵』に遭遇したのだ。
「……『奴』が飛んで行った先に…この村か」
「手掛かりになるかと追ってみれば、道中あんな本命に出くわすなんて……これはラッキーですの緑昇?」
「解らん。だがあの黄金の勇者は、俺達のことを知っていて、その上で敵意を持っているのは確実だ。銀獣の会に魔物の出る村、これらと関り合いを持つシナリーという女は、『当たり』である可能性は高い」
 二人は村の中を進んでいくが、どの家も閉め切っており、村人の姿が見えない。どこかに集まっているのだろうか?
「止まりになって。この村、機力探知が出来ませんわ」
 急に警戒を声に乗せながら、モレクが動かしていた足を止める。
「……何? モレク、『お前達』には魔力や機力の使用された場所を察知する機能が、センサーがあったのではないか?」
「その中でも索敵や特定に秀でたワタクシを封じるなんて……緑昇、この村には強力なジャミング装置が設置されてますわよ?」

 穏やかな村に仕掛けられた悪意の罠が、勇者を待つ。


■■■



(ピンスフェルト村・集会場)

「自警団の連中も場数さ踏んで強くなっただ! 森の魔物をとっちめるべきだ!」
「オラ達だけでどうするべか? 攻めるんなら都会の騎士様達も呼んだ方が…」
「そんなもん当てにならねぇべー!」
「魔物にちょっかい掛けてはいかん。誰も森に近づかなければ、いいだけだべ」
 飛び交う怒りと恐れの声。今この場には村人のほとんど集まって、魔物の対処について話し合っている。月が輝く夜空の下、村人達は焚き木で燃える炎を挟んで、二つの集まりに分かれて座っていた。
森を攻めようとするジャスティンと自警団の男達と、魔物に手出しするべきではないとする村長や村の相談役を筆頭とする者達である。
だが人数は、ジャスティン派の方が、明らかに多かったのだが。
「いずれ……魔物はこの村を攻めるように…なるぅ。その前に我らで……魔物を討つのだぁ」
 ジャスティンの言葉に人々の意識が、戦いへと向いていく。まるで自分達が勝って当たり前のように、どれほどの犠牲が出るのか考えないように。
 そんな異様な熱気の中に水をさす、三人の余所者が居た。
「はいはーい、ちょっと聞きたいんだけどよー」
 手を上げたのは金髪の少年。彼は金の瞳で勇者を見ながら、問いを投げる。
「ジャスティンだっけ? アンタ随分あの化物に詳しいんだなー。まるで元は研究でもしてたみたいによー。魔物が来るって言っていたが……何でそんなこと解る?」
「……勘……だぁ」
「――おい、そんな言い訳が」
「勇者としてのぉ…長年の…歴戦の経験に基づいた……勇者としての勘が我には有るのだぁ」
 ジャスティンの堂々とした物言いに少年は呆れてしまった。そこからさらに追求しようとすると、自警団の村人達がいきり立つ。
「小っゾォ! 勇者様の力さ疑うべか? 勇者様が言うなら、そうなるっぺ!」
「きっと勇者様は今まで何兆匹も化物さやっつけて来たんだ。オラ達より物知りなんだぁ」
「あの~、私もいいですか~?」
 ピリピリとしたこの場の状況も気にしない少女の声。肩の膨らんだ黒いブラウスにスカートをはいた彼女は、一見修道女に見える。
「ジャスティンさん、村の人達は貴方を勇者だって言ってますけど~、本当なんですか~?」
「うむぅ。我は……このピンスフェルト村を守るぅ、勇者なりぃ……」
 少女はその言葉にクスリと笑いながら、村人の怒りにさらに火を付ける質問をした。
「な~ら~、ジャスティンさんの『悪魔』は、『電子生命体』はどこに居るんですか~?」
「……む……?」
「先の戦いで、貴方は勇者召喚を行わなかった…変ですよね~? 私は証拠が見たいなーって。それとも、あえて隠しているんですか?」
今交わされた会話で少女は確信し、ジャスティンは言葉に詰まった。
 勇者を支持する男達は、自分達解る範囲の言葉に怒りを口にする。
「この娘っこぉ! 勇者様を悪魔付き呼ばわりかぁ? 出て行けぇ!」
 村人達はついに立ち上がり、青筋を額に浮かべながら少年と少女に掴みかかろうとする。
 そこに立ちはだかったのは三人目の異見者。男でありながら長髪で、騎士団の鎧を着た彼は両手を突き出して、村人達をなだめようとする。
「待つのだ君達! 争いは何も解決しない。ここはファイナリティデストロイ話し合いで」
 追い出された。

 エンディック、シナリー、ニアダは結局村人達を止められず、宿へ戻ろうと歩いていた。
「――彼らは本気なのか? あの怪しげな男を頼りに、魔物に勝てると思っているのか?」
「ニアダさんの言う通りだぜ。もし森の奥まで行けたとして、騎士団でも手に負えなかったデカい魔物に見つかったら、どうするつもりだよ? 間違いなく……全滅だぜ。ジャスティン達が戻ってこなかったら、敵討ちだ~とかでさらに死ぬかもな」
 少年は辟易としながら、暗い村の家々を見る。
 他所から来て、少し留まるだけの旅人なら、ピンスフェルトはのどかな田舎だろう。
 だがこの村の抱える『勇者』や『魔物』といった問題に関った途端、隠れていた嫌な面が露見する。奇怪な行動をとる魔物。それに怯えるゆえに勇者を妄信し、武器を持つ村人。
 そしてこの普通ではない村で、エンディックの家族も死んでいるのだ。
(くっそ、ハゲが死んだことを調べに来たのによ……)
 彼の横では、ニアダが先程の会話のことを幼馴染に問うていた。
「気になっていたんだが……シナリー君、君はどうして彼のことを悪魔付きのように言ったのかな? やはり……聖職者特有の、何かが有るのかい?」
「あ~、あれは適当な思い付きなんですよー」
 笑顔で答えるシナリーに長髪の男は面食らった様子で、冷や汗をかきながら聞いてもいないのに喋りだす。
「いや、なに、本当に本に出てくるような悪魔とか化物の力持っていたら、さしもの僕のミラクルセレブラリンソードも効かないかな~なんて……思っていない!」
 エンディックはニアダを半目で見ながら、シナリーに近寄り耳打ちした。
「――おい、あんなブッ込んだこと言うなよ! ジャスティンが本物だったらどーすんだ?」
「あ~、大丈夫ですよ? 初めて会ったときから、あの人には何も感じませんから」
「感じる……? まあ戦ってる最中、妙な真似はしてなかったっぽいが」
「魔言とは違うんですよ。『私達』はお互いが近くに居ると解るんです。漠然とした何かが。『勇者としての勘』みたいな物が……」
 宿の方向から誰かが歩いて来て、シナリー達とすれ違った。変わった服装の男女で、この二人は集会場の方へと進んで行った。
 エンディックは幼馴染の異変に気付く。彼女の表情を覗くと、笑っていた顔が次第に汗を噴き出し、緊迫した色へと変わっていく。
「な、何でもないですよ。……行きましょ」
 少女は持てる力の全てを持って、動揺を隠した。絶対に悟られてはならない。『相手のことに気付いた』と、あの二人に思われては危険だ。
 可能性は少なくとも有ったではないか? 自分達の過去とは無関係な。
別の勇者に遭遇する可能性が。

「あの場所か……」
 緑昇が指し示す先には多くの村人が集まっていた。炎を中心に大勢が座っており、何事か言い争っている。恐らくあれが宿で聞いた村の集会場なのだろう。
 相方のモレクは気乗りしない様子で、こう言った。
「放っておきません? わざわざ魔物に向かっていく命知らずなんて、珍しくないでしょうに」
 ピンスフェルトを訪れた二人は、まず村の周囲をぐるりと歩き、索敵妨害の範囲を探っていた。モレクの魔力(マナ)及び機力探知(メナサーチ)が効かなくなるのは、およそ村全体。村の中心にジャミング装置が有るのだろう。
 その頃には日は落ち、宿に向かうも、そこには宿屋の息子が一人だけ。どうも村のほとんどの大人は、集会場に集まっていると彼は言う。
 そして今、村で起こっている事件の詳細を聞き、村長の下を訊ねようと二人は動いている。
「ヴィエル港の……前例がある。いつ襲ってくるか解らない……魔物の恐怖に怯え、危険な行為に走ろうとしている……村の住人には……勇者が必要だ」

 エストーセイ地方のある港街の話だ。そこの漁師達が魚ではない物を引き上げたのが、事の始まり。彼らは海に漂う水生魔物の死骸をすくい上げたのだ。
 他に部品やパーツが見つかったことから、その海域は魔物の住処に近い可能性があった。
だが魔物の体は鋼鉄で出来ているため、分解して闇に流せば金を生む。漁師組合は旨みを覚え、潜水魔言を使える非正規魔言使いを雇って、次々と回収したのだ。
本来なら騎士団に報告し、調査をして貰うのが成り行きだが、得ている利益を横取りされる可能性を恐れた組合は隠し、さらに沖の方へとサルベージを進めた。
 そして魔物の群れに補足される。水生魔物は対空対地攻撃手段を持っており、港に逃げられた船を追って港を攻撃したのだ。
 『クラーケン』と呼称される超大型魔物の攻撃である、『推進誘導弾(ミサイル)』の雨を受け、港は壊滅。緑昇はこの事態に居合わせ、海の魔物を何とか撃退したのだ。

「それに……この魔物騒ぎが偶然ではない……可能性もある。俺達の探し物が飛び去った村だ。誰が魔言や機力世界の技術を使っても……察知出来ない村に、ちょうど良く勇者が旅行に来る。経験上……これは罠だ」
 緑昇達の探し物を『着た』何者かが敵意を持っており、策略を携え、誘い込んだのか? それは銀獣の会と繋がりが有るのか? その構成員が出した名前の人物はどうしてこの村に居るのか?
 全て仕組まれたか、あるいは無関係か、緑昇はまだ判断出来ない。
「あらあら、それならお逃げになります?」
「いや、人質が居る。どうやら……もう何人か殺されて始めたようだが」
 敵は恐らく自分達の情報を持っていると、勇者は予測する。
 もし罪も無い善良な、力弱い村が近くに有ったら、きっと立ち寄ると。そこに居る悪を、魔物を殺さずにいられないと。そして迎え撃てる強さだと。
そう知っているのだ。
 あの黄金の勇者は、魔物を誘導する手段を持っているに違いない。クスター地方に自分を探す者達が訪れたから、早く来いとばかりに、村人を殺し始めた。
「今回の事件……勇者の命すら脅かす……可能性がある。無関係ならば……退いている。しかし、ついに俺達は対象を目視したのだ。踏み込むべき……と判断する」
「――まあ、構いませんけど……」
 方針を話していると、集会場に着いた。
 本物の勇者である緑昇が、勇者を語り、村人を死地に先導する男をどうするかは、想像するに容易い。

(翌日。宿屋『ウエル』)

 エンディックは早起きする方だった。朝食の時間には少し早いので、朝日でも浴びることにする。
 部屋を出て、食堂も兼ねるフロントに出ると、同じく早起きした人物が居た。
「おっはよー! 何だかごめんねー。村の人が嫌な思いさせちゃったでしょ?」
 シナリーの友人のリモネだ。給仕服を着た彼女は、テーブルを整えていた。
「おはような。別に気にしてねーよ。アンタが謝ることじゃない」
「でもさー、せっかく来てくれたのに、色々悪い物見せたみたいでさー。一住人として申し訳ないよー」
 力なく語るリモネに、エンディックは気になった点を聞く。
「なあ、この村っていつから『こんな』なんだ? 三年前に来たこと有るけど、魔物があんな近くまで来たなんて話は聞かなかったぜ」
 エンディックが父親探しの旅に出たときに、ピンスフェルト村にも寄っていた。そのときは魔物の住処(すみか)が近くと聞いただけで、あんな近くまで迫って来る危険など知らなかった。
「その頃から結構有ったんだよ。この村は旅行者も多いからねー。悪い評判はあまり表に出さなかっただけ。見張りから警告が出れば、畑から村に逃げればいいしね。でも……あの人が魔物を倒してしまった……」
「ジャスティンって奴か」
「うん、あの人が魔物を倒せるって所を見せてから、有るだけだった自警団の人達が、急にやる気なったの。普段は農民なのよ? 戦ったこともない人達が他所から武器を買ったり、勇者様が一番偉いみたいに担いじゃって……嫌な空気だよねー」
「多分それ、アンタだけでなく皆思っているだろうよ。そしてさらに嫌な空気が高まれば、魔物の森に特攻。それがなくてもジャスティンの信者とその他で争いになるだろうぜ」
 勇者という異物を抱えた村。このままではピンスフェルトは、故郷のようになるのではないか? あの黄金騎士に支配された村のように……。
 エンディックにはこの村の問題が、他人事のように思えない。己や周りの者の人生も『勇者』という単語に振り回されてきた。ピンスフェルトの未来に、自分の故郷のような未来が来るというのなら、可能ならば食い止めたい。
(オヤジなら……首を突っ込んでいただろうしな。それにこの問題は、どこに居るか解らない人や仇を探すより、死にたがりを助けるより、ずっと『簡単』だ)
 決意するエンディックに、リモネはもう一つ気になる事柄を伝える。
「しかも昨日……もう一人出たの。自分が勇者だって言う人が……」

(村の中心に立つ第二見張り台・その付近)

「妨害装置を壊さなくていいんですの?」
 森側に建てられた第一見張り台とは別の、内側に建てられた見張り台の下。
 その近くで話しているは緑昇とモレクだ。彼らは有事に備え、夜に出来なかった村内部の把握を朝一番で行っていた。
「あえて壊さず、こちらの罠として残して置くのも……手だ。それよりも」
「宿で襲って来ませんでしたね。拍子抜けですこと」
 二人が普通に宿に泊ったのは、敵の反応を見るためだ。挑発行為とも言える。
この怪しい村は罠が張られているであろう敵地である。緑昇らが訪れたと知れば、のんきに宿に寝泊りしているのであれば、当然夜襲が有ってしかるべきだ。
敵が何者でどこに居て、いつ襲ってくるのか解らない。
 ならば、こちらでタイミングを与えてやれば良い。
村の大体の人間が集まる集会場で、緑昇は『己が勇者である』と名乗った。そして追跡を撒く行為もせず、宿で寝た。
 だが、寝床は襲われなかった。
 無関係な他の客を巻き込みたくないのか? 村の中で騒ぎを起こしたくない事情が有るのか? 彼らのことに気付いてないのか?
「せっかく迎え撃つ気充分でしたのに……これでは何のために、あんなに堂々と名乗りあげたか解りませんわ。襲ってきたのは、この村の偽勇者くらい……貴方様、良いアイディアが有りますの! 魔言の大出力攻撃で、魔物の森を平地にして見ません? 邪魔な木が根こそぎ吹き飛んで、中にどれだけ魔物が居るか丸解りですわ!」
「俺の世界では……森林破壊が問題になっていてな。ここでも自然の暴虐など、論外だ。それに……生き残りが居たらどうなる? 勇者鎧は『龍』と戦う装備。魔物との戦いにおいて、必ずしも勝てるわけではない。それに俺達は彼らと……ただでさえ相性が悪いのだからな」
「おい、そこで何してるんだ?」
 緑昇が声の主を探すと、近くに立っている木の陰から、金髪の少年が歩いてくるのが解った。見たところ、武器は持ってないようだが、昨夜の集会場には居なかった顔だ。
「村の中を……探索していた。俺は『勇者』……なのでな」
「勇者……だと?」
 その単語を聞いて動揺し、明らかに『自分の方』を見たのを、モレクは見逃さなかった。
 モレクの口から伸びた舌が、少年に巻きつく。宙空に持ち上げられた少年は、こんな長い舌を持つ奇怪な女に遭遇しても、悲鳴を上げなかった。
「ち……間抜けだったぜ! 怪しい偽者の他に、『本物』が出てくるとはよ……」
「ふむ、撒いた餌に掛かった貴様は……何者だ? 勇者と名乗ったのは俺だ。モレクは関係ない筈だが……彼女が何者か察したか?」

 エンディックは朝食後、すぐにその怪しい二人組みを探し始めたのだ。
 その同じ宿に泊っている旅行者らが、食事に現れなかったからである。
 そして幸か不幸か、発見して接触を試みたわけだが……。
「俺はエンディック。『アンタ達』の事情を少し知ってるだけの、ただの旅行者だぜ?」
 冷や汗を浮かべながら、『勇者』と確定した男に答えるエンディック。
 その勇者は地味な黄土色のコートを着た、あまり手入れをしてなさそうな黒髪の男。長身で服の上からでも、鍛え上げられた体だと彼には解る。無表情だが、その眼(まなこ)に生気がなく、そして容易く他人の命を奪える冷たさが有った。
「うふふ、少し?『異世界(マシニクル)から勇者が来て、この世界(シュディアー)を救った』という『事実』を知っている者なんて、そうそう居ませんわ。ワタクシ達にとって充分に不審者ですわよ?」
 これにはさすがにエンディックは呻いた。
 女と彼の間で伸びている舌に、唇がいくつも生じ、一斉に発声したからだ。
 この不気味な女性。目が痛くなるような桃色のドレスを着て、髪はエメラルドグリーン。歯茎に似た青い髪飾りを付け、口から粘液まみれの舌でエンディックを捕らえている。
 どう見ても普通でない女を、エンディックは直感的に推測する。
 コイツは以前シナリーの近くに居た『化物』に類する存在なのではないかと。
 エンディックの名乗りに応じて、勇者の男も自己と目的を紹介した。
「俺は……緑昇、そう呼んでくれ。七つの勇者鎧の一つ『大食』の鎧を管理する者だ。この村への道中……俺達は謎の敵に襲われている。そして勇者に憑く悪魔のことを、知っている人物が現れれば……尋問せざる負えない。貴様があの黄金の勇者なのか?」
「……黄金だって……?」
 彼の中で何かが切れた。怒りと喜びで、理性が切れたのだ。
「その勇者ってのは『アイツ』か! あの空を飛び回る奴か! 金属毒(アイアンヴェノム)を使う野郎のことか! アイツの居場所を教えろぉ……。あの糞野郎はぁ! 俺の獲物だぁ! 今すぐあの黄金騎士を……殺させろぉぉぉぉぉおっ!」
「……」
 目を剥き、歯を剥き出すように必死の形相で訴えるエンディック。
 緑昇はそれを見て、片手を上げ、また下げる動きをした。するとエンディックを締め上げている舌が解かれ、地を蛇のように這い回り、モレクの口内に勢い良く収納された。
「……おい?」
「俺達の敵が……『君』の敵でもあると認識した。よって君は早急に始末せねば……ならない脅威ではないわけだ。悪人でもない人間を殺す道理もない。だから解放した」
 地に落ちる形となったエンディックに、緑昇は近寄り、手を差し伸べた。
「察するところ君は……黄金の勇者に何らかの被害を受け、敵を調べる流れで勇者の知識を得た復讐者……そんなところだな? 申し訳ないが、俺も奴の……居場所が解らないのだ」
 立ち上がったエンディックは、緑昇という男の推測に驚いた。自分は親を二人も勇者に殺された、復讐者だったからだ。
 モレクと呼ばれていた女性が、相方の言葉を補足した。
「貴方様のような勇者に恨みの有る方は、初めてではありませんの。ワタクシ達も昨日勇者と名乗ったら、妙な男に襲われましたし」
「恐らく勇者の名を語って、小さな野心を満たしていた……というところか。崇拝者の目の前で投げ飛ばしたからな。奴の信用は……もう有るまい」
 勇者と偽る男。エンディックがその可能性を思いつくのに、時間はかからなかった。
「もしかして、それはジャスティンっていうオッサンか?」
「む……確か村人はそんな名前を呼んでいたな」
 リモネから聞いてなかったが、どうやら問題が一つ解決されたらしい。村人の前で醜態を曝したジャスティンに、もう今までのような発言力ないだろう。皆を先導し、魔物の森に攻め込むこともないだろう。
(何だか不気味なオッサンだったが、拍子抜けする終わり方だな)
 エンディックがひとまず安堵した、次の瞬間である。
「な……!」
 聴覚に激しい鐘の音が届く。警告ではない。はっきりとした大きな危険を発見したのだろう。
 『魔』力か何かで動き、人を殺す『物』が、来る。

G(ゴールデン)knightとG(グリーン)knight 2話B

G(ゴールデン)knightとG(グリーン)knight 2話B

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  • 短編
  • ファンタジー
  • ホラー
  • SF
  • 青年向け
更新日
登録日
2017-07-28

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