夜道のキラリ

駅からだいぶ歩いた
住宅街の外れ道
暗い夜道を独りで歩く

後にも先にも誰もいない
色褪せた黒いアスファルトの
硬い道をトボトボ歩く

今日一日を振り返りながら
街灯がポツリポツリと灯った
細い道をぼんやり歩く


と、その瞬間
少し先の暗い路面で
何かがキラリと光る
ハッとして足を止めたときには、
光は消えている

ゆっくり一歩下がってみると
そこでは光っているのが見える
ガラスの破片なのか
その向こうの街灯の光を反射して
はっきり輝いているのが見える
まるで星が見えない薄くけぶった空に
独り輝く金星のよう

これまで何度も通ってきたけど
こんなにきれいなものに
今まで気づかなかった

反射面が広かったり、球面だったら
広い範囲で反射光を見ることができるけど
小さな破片ではそうはいかない
それは小さな破片と街灯と見る人の位置関係で
たまたま起きた出来事

一体何なのだろうと、近づいてみるけど
ただ近づくだけでは、一歩進んだだけで消えてしまう
反射角に合わせて、近づくにつれて顔を下げていかなければならない
それも近づけば近づくほど、ちょっとのずれで消えてしまう
慎重に近づいてみたけど、もうすぐ手の届きそうなところで
とうとう見えなくなってしまった

結局、正体わからずじまい
だけど、いいものを見かけて
なんだか満たされた気分
少し軽い足取りで家に帰る


こういう人、ときどき見かけるよね
あ、僕のことじゃなくて
キラリと光る破片みたいな人


2017/07/24 てつろう(初稿)

夜道のキラリ

夜道のキラリ

暗い夜道を独り歩いているときに見かけたこと

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-07-24

CC BY-NC-ND
原著作者の表示・非営利・改変禁止の条件で、作品の利用を許可します。

CC BY-NC-ND