勉強

 ここはとうに滅びてしまっている。ここでいう滅ぶというのは、文明が絶え、この地を踏んで生きるものがない、という意味である。
 そんな中に一つの透明なカプセルが宙から舞い降りた。落ちてきたのではなく、本当にそこがステージかのように思えるほど、ゆっくり、ゆっくりとだった。卵のようなカプセルの中には色の白い少女が眠っていた。肌が白いばかりでなく、髪も、服もサラのキャンバスのように真っ白である。
 カプセルが地上に降り、一面の瓦礫たちと擦れ、キシキシと不快な音をたてた。その音と揺れで少女は戸惑うように、躊躇するように目を開けた。
 少女の蒼い目に映るのは、流木や先の尖った石が突き刺さる大地、赤黒く染まっている土、ひしゃげた土器の破片が飛び散った地上。そして、それらにも負けず散らかっている人らしき形をしたものたち。それだけである。
 少女は蒼い目を両の手でしまい込むように覆った。泣いていたかもしれなかった。体液だらけの死んでいる人たちは、無念のようなものを感じる表情だったかもしれなかった。
 自分の惑星に帰った少女は、いつもの教室で、続々と帰ってくる他の生徒たちを待っていた。生徒がほとんど戻ってきて、席に着いた頃、先生が入ってきた。たまらず、少女は駆け寄って先生に声をかける。その目は綺麗に濡れていた。
 「先生、私、すごく怖いものを見てしまったの。あの風景が本当に……」
 先生は少し切なそうに笑い、言った。
 「大昔の歴史を勉強するには、こうやって実際に目で覚えることが大切なんだよ。何しろ、何億年も前のことはイメージもわきにくいからね。」

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ある惑星の日常の話。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-07-11

CC BY-NC-ND
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