野良猫ドムの冒険(劇場編)

登場人物
郊外のとあるマンションの一角にある駐車場の捨て置きされたワゴン車を棲みかにする野良猫仲間。
ドム
人間ならば、中学一年生ぐらい。
黒毛で短足。足だけ靴下をはいたように白色。
正義感と、気配りにたけて、若いけど猫徳も備わってきた。

ナナ
ドムの妹で白色。鼻はピンクで、花がだいすき。
ボーッとして、世間知らず。純な猫。好奇心旺盛、周りがひやひや。

チャチャ
武闘派、色は茶色で白の縞模様、太目。涙もろく情深い、普段は静にしているが、感極まると非凡のパワーを発揮する

ヨサ
青年猫。
イケメン猫。アロハシャツに、サングラスをポケットに、入れた遊び人風。調子のいい猫。

リリー
隣の高級住宅にすむ血統書つきペルシア猫。
ドムと、淡い恋かも。束縛解放が夢のまた夢


ポー爺さん
山高帽子が気に入る老猫。古新聞を読むのが趣味。野良猫仲間の長老的存在。皆も一目する、知恵袋猫。おしっこが近いのが難点。

ナレーション
ここは東京の外れ町田のある古いマンションの一角にある、小さな駐車場です。
この駐車場に、古ボケて、錆び付いたワゴン車が、捨て置きされたように隅にあります。ドアも、閉まらないのでドムたち、野良猫の格好の棲みかになって平和にのんびりと暮らしていました。
食べ物はこの駐車場に隣接するマンションの小さな庭付きの一階に住む、四人家族の奥様。和子おぱさんが、大の猫好きで、お陰で量は少ないけれど庭の物干し台の側に一日1食だけど運んで着てくれます。時にはマグロのぶつ切りもでます。それも低温で新鮮なマグロのぶつ切りです。
僕たち野良猫は、こんなとき生き低て、よかったなぁと、感じるのです。幸せだなーとね。
和子おばさんも、決して裕福ではありません。毎月家賃も払うし、ご主人は、定職のないその日暮らしの毎日で、小学生二人を育てていますから、
火の車です。
だから、僕たちは、いつも心のなかでは、和おばさんに感謝、感謝です。
時には管理人から、野良猫に餌をあげないでください、赤ちゃんのいる、家族もこのマンションに住んでいるのでね。苦情もあるのです。臭いし、汚れるしとかね。
僕たちこの小さな駐車場に住んでいる仲間はそれなりの縁があって自然と仲間になっています。平和で、楽しい暮らしです。こんな幸せな時の流れのなかに一年ほど過ぎたある、夏の夜のことです。
アロハシャツの、ヨサが、ワゴン車で休んでいる仲間に慌てて駆け込んできて、おお声をあげて言うのです。
さてはてとうしたのでしょう。


舞台
第1場
錆び付いたワゴン車の、そばで遊んでいる野良猫たち。
ポー爺さんは、柿の木のしたで、新聞を読んでいる。そこに
袖からヨサが駆け込んでくる。


ヨサ(オーイ、みんな大変だ、大変だ)
チャチャ(どうした、ヨサ、色めきだって)
ヨサ(みんな聞いてくれ。あのな、和おばさん達、横須賀に、引っ越すらしい。今な、引越のサカイの営業マンが、来ていて、和おばさん話していた、県営住宅に当たって引越するから、見積もりお願いしたいと)

野良猫達、一瞬ビックリして声をあげる。

チャチャ(参ったなぁ、餌がもらえなくなれば、生きてはいけない。弱ったな、でもお前の話はいつもオーバーだからいまいち信用できない。)
ヨサ(俺はこんな大事なこと嘘つくわけないだろう。)
チャチャ(いつ頃なのだ。まさかすぐではないだろう)
ナナ(もう、カリカリも、缶詰も、マグロのぶつ切りも食べられなくなるのね)
ドム(ナナお前は相変わらずのんきなことを言っている。引っ越すとならば、ここにすめなくなるのさ、食べ物がないのだから、)

ヨサ(ここで解散だな。哀しいけどしかたない。俺は競馬場にうまく潜り込んで、観客のそばで泣き落とし、餌でも確保するか。)

チャチャ(お前はすばしっこいから、うまくやれるかもだが。ポー爺や、ナナには無理だ、競馬場のなかには入れない。警備が厳しいし。競馬は土日だけだしな。)

チャチャ(俺一匹だったら、なんとかなる。生ゴミを、漁ったり、他の野良猫のところに出掛け目はなつくまで世話になる方法もある。問題は、家族のようになったこの、仲間達だ。ポー爺は、歳だし、どこにも行けねえ。ここから出れば一週間もたない。ナナも、まだ、子供だ。
ドムは、なんとか一匹でも、暮らしていけるかもだ。)

ヨサ(ポー爺はここいいてもらうしかないだろう。歳だしな。チャチャのあとを着けていっても足が弱っているから、面倒になるの見え見えだ。兄貴が大変だよ)

チャチャ(お前、余計なこと言うな。ポー爺は、そんな柔な猫ではないぞ、散々世話になりながら、そんな冷たい考えしか浮かばないとは、なんと、情け知らずのねこだ。もういい、お前だけ勝手に行け)

ポー爺(なんだ、ここを出ていくことになったのか、そんなこともあろうよ。今までが、良すぎたのさ。猫に毎日餌をくれる人間なんて、滅多にいない。世間の批判を覚悟して餌を猫にあげるのだからな。変わり者と言えば変わり者よ。
で、なんだって、ワシが、あしでまといになるって?ばかこけ。お前のような柔な猫ではないぞ、
心配するな、昔の馴染みのババア猫でも探しに旅するさ。ふん。お前達と別れることができてこれ、幸いだ)

立ち上がろうとするけど腰ごいたむ。
ポー爺(あいててて・)

チャチャ(ポー爺さん、また、そんな強気なこと言っている。ほら、腰痛めてさ、大丈夫だよ、俺一匹でも、側にいるからさ。

野良猫ドムの冒険(劇場編)

野良猫ドムの冒険(劇場編)

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-07-07

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