あとがき(嘘の町)

彼は夢の中で何度かはかいしゃに会ったような気がした。なぜか嘘の町に着くまでの間は鮮やかな夢が多かった。

嘘の町は古く、穏やかな町だった。沢山の自分のための荷物をガラガラと引くのはもう疲れた、と思った。

彼は絨毯屋さんに着いた。
店の前に荷物を置いた時、ひとりでに左の犬歯が割れた。痛くは無かったが彼は少し驚いた。割れた欠片をつまみだし、手に取って見た。小さな小さな白い欠片が掌に転がっている。
その店の中に入った。そこに例の彼女はいなかった。店員もいなかった。店の奥から、偉大な老いた、鳥の人が歩いて来た。彼は非常に驚いた。
「久しぶり。お疲れさん。」にこやかに鳥の人は言った。
「どうしてここにいるのですか」彼は聞いた。
「君の旅に一区切りついたからね」
「もう、僕の旅は終わりですか?」
「旅、どうだった?」
「他人に会うことのできた旅でした。」
「それは中々楽しそうな旅だね。」変わらずにこやかな表情のまま鳥の人は言った。
「たくさんの人に関わりながら生きることはいいことだ。豊かになる」「これからもっとたくさんの人と会えばいい」

「ここである女性と会う約束をしています。」
「ああ、彼女はここにいない。ちょっとした事情でね」
「はあ。」
「君に彼女の事を教えよう。そして今後君がどうしてゆくべきか、も」鳥の人は続けて言った。
「君は彼女に恋をした。これからもっと深い関係になりたいと願っている」
「僕は青春は過ちでもよいから、青春を止めるな、殺すな、と言った。そのメソッドに従うのなら、彼女とさらに深い関係になるのは正しいことだろう。」
「青春と言う必然は大きな力だ。理性は何より本能を立たせるのに長けている。色々な言い訳を使いながら、彼女と深い関係になることは、君の努力次第で可能なことだろう。」「しかし彼女はもう、他の人間とむすばれた関係にある」
「ガーン、聞いてないです、そんなこと」彼は言った。
「だからこうしてしゃべっている。はっきり言って君は彼女の心に近づきすぎない方がいい。君が彼女に本気で恋をしても、先がない」
「その通りだと思いました。そうします。」彼は言った。
「君は今後どうすればいいと思う?」
「旅を終えるべきだと思います。僕、今、ふとある目標が出来たんです。今はただの夢物語ですが。若さをどうにか使って頑張ってみたいです。」
「ふふ。それは良い。すばらしいことだ。君は何だかんだで生きている。君はもう、二度と君を一番近くで見ることができない。めんどくさがらず頑張ってみたらどうかね」鳥の人は表面的に楽しそうに言った。
「いやでも、やっぱり必然性に欠けます。すぐにしぼんでしまうであろう目標です。」嘘がばれた時の様に恥ずかしそうに彼は言った。

「ゆくゆくはきっと君は君自身の核を力をもって隠さなければならなくなるだろうし、いくばくかの汚さも持つようにならなければならない。それはとても君に負担だろう。しかし君が励めば、きっと誰かは見てくれる。人間関係は煩わしいことも多いが、楽しいよ。頑張ってみたらどうかね。」鳥の人は言った。
「それまでは適当に二番のまま楽しんでみてもいいのかもしれないよ」「二番じゃ、中々楽しめないかい?」鳥の人はからかうように痛烈な皮肉を含み笑った。

ふと、笑うのをやめ、「ああ、つくづく君は中途半端な人間だ。そして意味のないところで怖がりで真面目に考えすぎる。世間的に正しいこと、しかできない君は、少しおかしいかもね。もっと適当でいい。」
「適当になったら僕死んじゃうかもしれないです。」
くっくっくと、鳥の人は笑った。

「君はずっと、本能が勝てなくて、理性で理性を押しとどめようとしている感じだね。まったくもって面白い。」
「そういえば彼女。君に会うタイミングが悪かった。彼女は理性が勝てなくて本能で本能を押しとどめた。」
「どういうことですか」
「正直に言って、半分君のせいだ。そう思っといた方が今後もっと頑張れるようになる」

「前向きに元気に生きれよ青年。人と沢山関わることは大事だ。」鳥の人は言った。

あとがき(嘘の町)

あとがき(嘘の町)

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 冒険
  • 青年向け
更新日
登録日
2017-07-06

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