ヒラギノ

ここ柊野の冬景色に粉雪が舞う頃
街に子供たちの聖─(キャロル)が響く
夜を走るヘッドランプが街の装飾を照らす
美しい灯りの裏で、暗闇が息を潜めている
窓の外に凍え─たように光る月が見える
冬のりんごを囓ると甘酸っぱさが口の中に広がる

シズルフルな画面を気にかけながら
ヒラギノの涼しく透き通った文字が
蛍光灯の反射光に白く染め抜かれた紙─に現れる
あの頃はこのソリッドなラインに強く惹かれたものだ

大人になる事で失うものと、得るもの
そんな話題がこの季節になると思い浮かぶ
不確かなつながりに涙流したことも
子供の頃は色々なことで頭を悩ませ、苦しんだ……
きっと良い育ちではなかっただろうけど
でも、自分が何を欲しているかわかった者に
まやかしを気にかける必要など無いのだろう

この街で生きていかなければならない
それがわかっていても足元がすくむ思いばかりだ
子供の頃に見ていた夢はもう捨ててしまった──

数─年前の聖─夜のあの日─、あのカフェで
周りの人と話している君を初めて─見たときに、
ハッとした感覚があったのを覚えている
臆病な─君の、あの無邪気な微笑(えみ)
何か大事なもの、失ってはならないものに
気づかされたような、そんなインスピレーション……
きっと─人─はそれを運命と呼ぶのだろう
窓の外は黒い冷たい空気でいっぱいだった

この世界に美しい言葉があることを僕は信じている
言霊は強く受け止めれば─それだけ傷つく─もの
暗闇の中で白色光の照らすこの明るい部屋に、
あの日からいくぶんか─大人びた君の微笑みがある
ここにひとつ─の言葉を君に捧げよう

いつもそばに居てくれて、ありがとう

ヒラギノ

ヒラギノ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-07-04

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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