*星空文庫

不眠症

nanamame 作

不眠症

Super Junior、イトゥクとヒチョルのお話。
随分と若い時の写真ですが…。好きなんですよ、この2人。

今日もまた眠れない。
いくら仕事で疲れていようと、いくら酒を飲んで酔っていても。

頭も重く、身体もだるい。

暗い部屋で、さらに酒を注ごうと瓶を持ち上げると、ずいぶんと軽かった。目の前に近付けて確認すると、中身は数ミリほどしかなかった。

「ちっ」

その数ミリを注いで、グラスを煽る。

ベッドから動くのも億劫だ。理性で飲みすぎだと分かっているので、飲み足りない分は我慢する。

大きなため息と共にベッドに寝転がると、途端に全身の疲れを自覚する。

寝転んでベッドが軋んだからか、丸くなって寝ていたヒボムが、ベッドから飛び降りた。

何だよ、とヒチョルは思った。

おとなしい飼い猫は、文句も何も言わないが、気に入らないことははっきりと主張する。きっと眠りを妨げられて、機嫌が悪くなったに違いない。
クッションの上に乗り、また丸くなって眠りに就いた。

あんな風にすぐ眠れたら、どんなに楽だろう。

またため息をついて、スマホ画面を見る。
着信も、メールも、何もない。それはそうだ。もう、3時だ。眠れる時間は、あと4時間ほどしかない。

その事実に、またため息が溢れる。

玄関が開く音が聞こえた。

ロックが外れる、微かな音に、少し警戒する。
足音が近づいてくる。まっすぐに、この部屋に向かっている。

ヒチョルは警戒を解いて、ホッとした。その足音が誰のものか、分かったからだ。それに、ドアロックを解除できる人間は限られている。

心の中でおかえり、と思うが、ノブがカチャリと音を立てたと同時に、ドアに背を向けた。
寝ている振りをする。

彼はいつも、ヒチョルが眠れているかどうかを確認する。今日のように、仕事で帰りが深夜になる時、帰ってきてまっさきに、ヒチョルの部屋に来る。
寝つきが悪いことを知っていて、いつも心配している。

静かにドアが閉まって、ベッド脇に人の気配を感じる。

その人柄と同じ、柔らかい気配。

彼のため息が聞こえる。サイドテーブルの空の酒瓶とグラスを見つけたのだろう。

正面に彼が来る。

気配が近くなり、熱と微かな息遣いを感じる。

ドキドキする。

寝てるんだから、早く自分の部屋に帰れ。お前も早く寝ろ。
同時に、今日1日見ることがなかった、彼の顔を見たい、とも思う。

フッと彼が笑った。

「駄目だよ。寝たふりなんて、分かってるんだから」

目元にかかった前髪が掻き上げられる。
目を開けると、目の前に待ち望んでいた男の姿があった。暗闇に目が慣れず、表情が見えない。

それでも構わずに、手を伸ばす。首元に手をかけて、引き寄せた。
唇を合わせる。舌を絡めて、丸1日振りの彼の唇の感触を味わう。

「んっ…、あぁ」

何も変わらない感触に安堵する。

「また、お酒飲んだでしょ。寝る前に深酒はいけないって、いつも言ってるでしょ?」

「うるさい。仕方ないだろ、何もないと、もっと眠れない…。ジョンスもいないし…」

仕方ないな、と呆れたように笑う彼の表情が、ようやく見えてくる。
彼がベッドに腰掛け、覆い被さってくる。さらにキスが深くなる。

「いつも、かわいいこと言ってくれるね」

「あぁ? うるさいな…」

照れ隠しで、悪態をつく。気にした様子もなく、ジョンスはにこにこしている。

「こんなとこいないで、早く帰れよ。なんで来るんだよ。疲れてるだろ? 早く寝ろ!」

「俺、今日、ここで寝ようかなぁ? 明日はヒチョルの方が帰り遅いでしょ?」

彼はメンバーのスケジュールを逐一把握している。
一緒に暮らしていた時から、別々に暮らすようになっても、リーダーの責務だと思っているらしい。ヒチョルは今1人暮らしではあるが、メンバーの誰が来てもいいように、客間がある。だけどそれは使われることがほとんどない。誰かが来ても、すぐに帰るか、飲みすぎた末にリビングで雑魚寝か。

ジョンスは、いつもヒチョルと同じベッドで寝る。それが、ここに来る理由だから。

「ねぇ、いい?」

何が、とは聞かない。分かりきっているから。自分も、それを望んでいるから。

「聞くな」

疲れているのは同じ。眠れないのも、同じ。求めるものも、同じだ。

眠れない夜の、特効薬。



End.

『不眠症』

『不眠症』 nanamame 作

Super Junior、イトゥクとヒチョルのお話。K-Pop、BL、FF。

  • 小説
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  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-07-03
Copyrighted

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