ランボー伝説2

見者(ヴォワイヤン)になるんだ !
そう彼は言った。誰に?ヴェルレーヌに
そうして彼の旅が始まった。彼の故郷は北フランスのシャルルヴィルである。
少年時代・・・・、少年時代、彼は母親は嫌いだった。なぜか?彼は彼女、ランボーの母親は嫌いだった。彼女は厳しく、アルチュールをしつけた。
七歳の詩人。かれのこんな詩がある。
さるほどに母親は
宿題帖を点検し、
大満足、自慢げに立ち去られたが、見抜かなかった、
愛児の碧い眼の中と利口げな額の奥に宿っている
課業嫌いな根性は

無理ないさ、少年は、日がな1日、従順を汗にかくほどに
お利口さんにしていたで
とは言うものの、よく、見れば、
何となく気になる顔のひきつりと表情のどこやらに、
心の奥に隠された激しい偽善に現れるようだった
かび臭いカーテンの廊下の薄暗がりなぞで
ゆきずりに両のこぶしを腰に当て舌まで出した
閉じた眼幻のてんを数えて
暮れがたの光の前に一つのドアが空いていた、ランプの明かりで
彼はと見れば、屋根から垂れた後光の中で
高いところの欄干の上、息を切らせていたとやら
夏は特別、ぐんなりと気抜けのていで、しかもなお
強情に、涼しい便所に立て籠り
鼻息荒く、心静かに、瞑想に耽ったとやら。

冬の暮れ方、裏庭に太陽の匂いが消えて
月のかげ冴え染める頃
壁ぎわにうずくまり、泥灰に埋まれて
幻見たさの一念に一眼ぎゅっと圧しつぶし
少年は耳傾けた、はげちょろの垣根が立てるざわめきに
困ったは!彼と親しく交わるが、どの子もみんな、
栄養不良、冴えない目つき、帽子なし
泥まみれ、黒や黄いろに、よごれくさった痩せ指を
人混みの匂いの沁みた古ぼけた着物の下に忍ばせて
阿呆みたいにおとなしく口きく手合い
時として、このような下卑た慈善を実践中の彼を見つけて
よし母があわてだす事があっても
少年の見せかけの優しさが勝を制した、
何しろの見せかけの優しさが勝を制した、
何しろこれは一応はよい事に相違なかった、
母親は子の清らかな碧い眼だけは得たのだから、嘘つきの!

七歳で、彼は砂漠の生活を小説に作ったりした。
素晴らしい自由の天地、
大森林や太陽や、大河の岸や、草原や❗️
絵入新聞を参考にしたが、ついでにそこに
スペイン人が笑うのやイタリア女を眺めては顔赤らめた。
隣り家に住む職工の気まぐれ娘、今年八歳、褐いろ眼、
アメリカ土人に仮装して、おさげの髪を振りながら部屋の片隅、彼の背中に飛びついて組伏せた時、
彼は下からお尻を咬んだ
(ついその娘、ズロースなんぞははかない娘)
こちらとて彼女のために拳と踵はやられはしたが
どうやらそれでも寝部屋まで彼女の肌の味わいは持って戻った。

彼は怖れた、退屈な師走の月の日曜を
頭にはポマードを塗りたくられて、行儀よくサロンの卓を前にして
青菜いろした切り口の聖書を読まされたので。
寝室の夜毎の夢はしきりに彼を悩ました
彼、神は好きではなかった、さりながら、褐いろ濃き夕まぐれ
菜っ葉服、手足よごして働くものが場末のねぐらへ帰る頃
三拍子、太鼓鳴らして布告の周囲に人を寄せ集め
触出し奴が笑わせり、怒鳴らせたりするのは大そう好きだった。
彼は夢見た、輝くうねり、すこやかな香り、金色のにこ毛、
静かに身じろぎ舞い立ち上がる多淫な牧原


また彼は、わけても特に陰鬱を愛したので
鎧戸下ろした真裸の、天井の高い青い自室の
ひどい湿気の中にいて、
重苦しい黄ばんだ空や、水びたしの大森林や、
天上界の森に咲く肉の花や充ち充ちた
(くるめきと、崩壊と、敗北と慈愛のそれは連続だ!)
常に念頭を去らぬ自作のあの小説を読み返す時なんか、
階下にざわめく巷のもの音は聞き流し
たたひとり、あらぬののシーツの上に横たわり
はげしくも帆布を予感したとやら!・・・・・・

ランボー伝説2

ランボー伝説2

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-06-25

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