机に描いた落書きのほうが上手く描けてしまう現象ってなんだろうね。

紙とペンを用意した。
このすっきりしない心の中をどうにかしたくて、
形を与えればはっきりするのでは、と思った。

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特にこれから生きていく理由がありませんでした。

将来の夢とか、やりたい事とか、僕は何も持っていませんでした。
社会的に有利になる資格なんてものも、何一つ持ち合わせていませんでした。

そんな僕が、
今後どうやって生きていきたいという具体的な理由がないまま、
なんとなくで生きていくにはお金がかかりすぎるし、とてももったいないと思いました。

なので、僕は死ぬことにしました。

家族には失望されると思うので上手い具合に誤魔化しつつ、どこかで独り、死ねたらと思います。
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書いてはみたものの、なんだか一番大事な部分が無いような、
ただ枠組みを作っただけにすぎない気がした。

続きを書いたけど、違う気がして消した。
書き直してみたけれど、最初の内容から話がずれた気がして消した。

書けば書くほど、心の中の形になりたい’’何か’’が溢れ出して止まらなくなった。
綺麗に書いていた文字も、次第に荒々しくなっていた。
シワ1つ無いまっさらな紙が、いつの間にか真っ黒に埋め尽くされていた。

僕の心の中に終わりが無いように思った。
どれだけ書き続けても、終わりが見えない。終わることが出来ない。

僕は何も考えが無いと思っていた。
自分の考えを誰かに伝えるのが苦手で、だから誰かの意見に同調する人間だった。
だけど、本当は、こんなにも言葉を、心の中に溜め込んでいたのだと初めて知った。


それでも、僕はこれからも変わらない。
きっと、紙上の饒舌な僕を見ることができるのは、
僕が明日を迎える日が来ない日だろう。


では、また。

机に描いた落書きのほうが上手く描けてしまう現象ってなんだろうね。

実際のところ、口下手な僕だから、紙の上ですら饒舌になれないのだけれど。

机に描いた落書きのほうが上手く描けてしまう現象ってなんだろうね。

何となく描いただけなのに上手く描けちゃうんだよね、そういうときに限って。誰かに見つかって消されちゃう運命なんだけどさ。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-06-25

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