ネクター

ふと、喉が渇いたって時に、お茶とか水じゃなくてネクター買われたらやられるね。
一人じゃ絶対のみきれないね。コーラのそれとは違う意味でね。

ネクター

 いよいよ以て、一日の時間の流れを感じなくなってきた。長針まだしも、短い針の世界に住み着いてしまった。無限で動かない・・・。亀虫の背中に人相を見る。
 この部屋は元々暗かった。年中窓は閉めきりで、カーテンが開かれることはない。靡くことも、またない。それでも僅かながらの光はこぼれていた。その陽から或程度の推測はなされた。生きている上での当たり前の行為だった。それは2歳児ですら感じられること。
 けれどももうそちらを気にかけることはない。動く気力はない。天気も気にならない。外に出ることがなくなれば、カロリーは消費されない。消費されなければ摂取もしなくなる。・・・元気はない。泥人形のようにぼてっとそこに横たわっている。目は幾らかは開いている。
 部屋ではその分想像が増える。一向に進まない無限の世界で、僅かながらの視界から様々を見つめる。集中するためにはじっとする必要がある。余計な事を気にせぬ状況を創り出さなくては・・・。そこで生きているのだから。

   ―――――――変わらずに光はこぼれているだろう。ただ、ここまでは届かない。一日のほとんどを布団にくるまり過ごした。

 何にでも慣れはある。その先の欲求も覚える。

 外出。・・・久々の買い物。久々の運動。大きな荷物だった。大きな運動だった。負担は目に見えて、ヘロヘロになった。一人でカブを引っこ抜いたよう。ぎっくり腰に気をつけろ。

 その日は久方ぶりに一日を感じた。やり遂げたとでもいうべきであろう。それも、もうしばらくはないであろう。螺旋状に赤血球と白血球がハグをした。
 太陽は痛かった。嫌嫌なタトゥー。
荷物を広げる。小さな庭にて、スコップで土を掘る。景色はなるべく見ないように、何かを考え自動で体を動かす。光の変化には決して気がついてはいけない。思い出してはいけない。ここは違うどこかなんだから・・・・。
 盛り上がっていく土を見てしまえば、水分をとることもなく掘り続けた。流れ落ちる汗だけで十分じゃないか・・・。
幅2m満たず、深さ1m程。影よりも大きな穴。

形が出来ると、円形にこしらえたプラスチックのボードを穴にあてがう。隙間が出来ぬよう形に合わせ固定していく。柄の長いドライバー。握力がなくなるほどいい。半分をピタリと穴へはめ、つがいを付けて、もう半分を同じ大きさで形作る。土に沈んだカプセルボックス。中の土をきれいに払い、新築同然に研磨した。
 底には保温性の高い何だかよく分からぬ生地を敷いた。真っ暗な遮光カーテンを穴の上からかぶせた。中に入るときにその先をカプセルの内部に挟み込んだ。
外はどのくらいの明るさであっただろうか・・・?少しは覚えておけば良かった。何せここは真っ暗で、そして何の音も聞こえない。感覚を失えば推測は出来ない。この世の概念は頭の中だけであった。

暮らしは始まる。用を足すことすらでもなるだけ出たくない。僅かな水分と食料を足下のどこかに置いた。
真っ直ぐに足は伸ばせるけれども、膝を抱え、時折親指をくわえた。必要な物があると残りの感覚を意識強め、夜と感じた時にだけ出るようにした。はじめは大概その通りとなったが、やがてそれもメチャクチャになっていた。出る感覚も段々と長くなっていった。

この暮らしにも慣れると頭の回転も増える。これだけではカロリーが足りない!!世界が色あせてしまう!!その思いが生まれるたびに、そう感じてしまう無駄な時間の歪みに自分が壊れていくのではないかと感ずる。
昼間、太陽・・・・。
真っ先に思い出すのはネクターだった。甘くて、優しくて、懐かしくて・・・・それを選べる人を欲した。・・・・想いは募り、殻を破る欲求。

久方ぶりの買い物だった。食べ物はいらない。水も・・・。
大量のネクター・・・。こんなに力がないのに、こんなに元の自分の姿はそこにはないのに、両脇に山ほど抱えられるネクター。
保温はいらない。一定の基準は自分で見定める。マットをはいだ。ドボドボと一本ずつ入れる。ピンクの嵩はみるみる増してく。その香りに魅せられてきっと笑っていよう・・。
全てを入れると4分の1ほどを液体はうめた。裸になり、そこにつかる。真っ暗になる。無限の空間。鼻は朽ち落ちた。時折、啜っては唇が爛れた。体はベタベタでドロドロに溶けていった。
甘い・・・ベタベタ。甘い・・・ベタベタ。それだけの繰り返し・・・・。

違う世界が生まれたときに外はどう映ろうか・・?この感覚で2週間ほどはいられるであろうかな・・?

ネクター

のどがかわくなぁ。

ネクター

人生に疲れたら人は何をするか分からない。その瞬間のエネルギーを資源に出来たらなぁ・・・。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-02-08

CC BY-NC
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