*星空文庫

青空草

星空トクマ 作

 青空草は、考える草だそうだ。
時に喋る事もあるが、聴く事や話す事が出来るのは一部の人間に限られていいる。
少女は今でも思い出す。ゾンビ映画が好きだった兄は、一度青空草をみたといっていた、
それが、ある人との出会いのきっかけになったという。

こんなことを聞いたのは兄の友人からだった
兄は一昨年事故でしんだ恋人のあとを追ってなくなった。
私はハンコ、14歳になる。
三つ編み眼鏡でなるべく目立たない生活をしている
綺麗好きだが、家の中のある個所だけでは汚い。
そこはいつも兄が居座っていた場所だ。
兄は近寄りがたいがさつな側面をもっていた。

もう夏がきているから、自販機でペットボトルの飲み物を1つ買った。
お茶を買ったのは、兄がよく飲んでいたからだ。
この装置はとても怠惰だ、いや、ありとあらゆる人々は、便利な出来事に許されて
人に無関心な怠惰の中で生きているのだ。
お釣りを探ると10円が余計にはいっていた、これもきっと怠惰の結果。

こんにちは、
ここだよここ
何か声が気がしたが、
この怠惰な自販機の目の前で見せつける格好でお茶を飲み干すわけにもいかないので
ハンコは、駆けだして家へと急ぐ。
もう5時を過ぎているだろうか、夕焼けも暮れかけていた。

次の日は青空だった、
学校の通学路はいつも同じだから
余程の事がなければがんこなハンコは道をかえない
ただ、その日はよほどの事があった日だったのだ。

「なあお嬢ちゃん、願い事はないかい、オイラがかなえてやるよ」
自販機の下を探ろうとしたが、
さすがにそれは勘違いをされそうなのであたりをきょろきょろ見回すと
ニンジンのような形をした青色の草が人の顔のような形状を地面からななめにつきだしてこちらをみていた
ニンジンのてっぺんの丸い部分が、目と鼻と口がぽっかりあいて浮いて見える。

「青空草」
ハンコははっとした
兄が死ぬまえ、それよりも前に恋人が私に教えてくれた
願いをかなえてくれる草だわ。

「お兄ちゃんを!!……」
「待ってくれ、願いを二つ聞き入れよう。」
青空草は何もひるまず、自分の説明をした
人生に一度だけしか会う事が出来ない事
願い事はあと一週間の内なら聞き入れる事

ハンコは
家に帰って考えると告げて、帰りの道は別の帰り方をした。
部活が遅くなったので月がでていた。

次の日、ハンコの家はピクニックにでかけた
母が棒のようになった足をとめたとき
ハンコはまだ少しも疲れていなかった
今日は鳥の声もしないのはおかしいと父はいっていた。

父も疲れていたのでハンコが雲を指さして目で追っていると
どこかからまた声がきこえてきた
「やまびこだー」
やまびこなんかではない、
昨日一度きいただけだがとても印象に残ったしゃがれ声だ
小柄な老人のようなハスキーボイスだった。

「青空草」
とてもいい天気の日、願い事をかなえるために
その人の人生に一度は現れるという妖怪なのだ。

昨日一日考えて、ハンコはお願いをした
「お兄ちゃんを蘇らせ……!!」
「サンドイッチこぼさないで!!」
その瞬間ハンコは背筋が寒くなる思いだった
「願いを承った」
青空草は消えてしまった。
あとでわかった事だが、青空草は人の願いがあまりにおおきいとき他の人の願いを吸収して
元の願いとはまったく違う無理のない願いに勝手に置き換えて解釈してしまうそうだ。

小さな山のてっぺんで、家族三人は兄の話をしていた。
おっちょこちょいな兄の事、家ではいばりちらした、
今日ここにいたのなら、山彦に大きな声で話しかけただろうこと。

最後の言葉が、«新しい出会いを大切に»だったことを
ハンコは自分の口から初めて家族に告げた。

『青空草』

『青空草』 星空トクマ 作

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-06-09
Copyrighted

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